未来面「世界一、□□□国、日本へ。」経営者編第2回(2010年8月2日)

提言

世界一、頭脳が集まる国、日本へ

ナガセ・永瀬昭幸社長

※肩書き等は掲載当時のものです。原稿のため、掲載時とは差異があります

東大合格者よりも、

ノーベル賞受賞者。

理系離れを食い止めよう。

科学者のイチローを作れ。

「教育の乗数効果」

 世の中で最も「乗数効果」の高い投資は何か。私は頭脳への投資と教育への投資だと思う。米国のマイクロソフトやグーグルは設立からわずかな期間で巨万の富と大規模な雇用を創出した。しかし彼らに巨額の資金や他社がマネできない設備があったわけではない。資産といえるのはただ一つ、創業メンバーの頭脳だけだった。そして、その資産によって画期的なソフトウエアや検索アルゴリズムを開発し急成長を遂げた。

 国家も同じことだと思う。今の日本は財政難や少子高齢化など解決困難な問題が山積してあい路にはまり込んでいるように見える。こうした閉塞感を打破して成長を実現する最短で最も確率の高い道が頭脳への投資だ。考えてみてほしい。仮に鉄より安い炭素繊維を日本人が発明したとする。それだけで資源メジャーに値上げを迫られ辛酸をなめ続けてきた日本の立場は一変するだろう。

 すでにシンガポールでは政府が資金を拠出して世界中からバイオ分野の優れた研究者を集め始めている。日本政府も自然科学のトップ級の頭脳を1万人くらい呼び集めて、彼らに潤沢な研究資金と生活環境を与えてはどうか。日本は治安が良く、国民全体の教育水準も高い。四季も美しい。他国に負けない制度上の魅力さえ打ち出せば、世界の頭脳が集まらないはずがない。

 多少の予算は必要としても、高名な研究者が集まり、各地の研究コミュニティーが沸き立てば、そこにいる日本人が鍛えられる。何より期待したいのは若い世代への刺激だ。子どもたちの「理系離れ」が指摘されて久しい。それを食い止める施策は、理系のイチローや松井をたくさん生み出すことだ。自然科学の分野で成功すると、「尊敬され、経済的にも大きなリターンがある」と分かれば、優秀な子どもたちの間で理系志向が高まるだろう。

 もう一つ、内なる改革も大切だ。日本の公教育は全体のレベルを底上げするという点で、大きな成果をあげてきた。アルファベットよりはるかに画数・文字数の多い複雑な言語を使いながら、識字率が限りなく100%に近いという事実は世界に誇れる。しかしその一方で、横並び主義が強く、トップレベルを育成し、伸びる層をさらに伸ばすという姿勢が弱かった。

 予備校を経営する中で、日々痛感するのは、学習する内容の上限を学年で制限するのはある種の拷問に等しいということだ。例えば、数学が大好きで才能のある子どもは、環境さえ整えれば、大学のカリキュラムを高校生のうちに学びたいと思っている。野球やサッカーを目指す子なら当たり前に受けられるエリート教育が、学問の世界になるとなぜか不平等だといわれてタブー視されてしまう。

 教育は間違いなく10年で成果が出る。今、小学6年生の子どもは10年たてば社会人。自然科学の分野ではすでに中心選手になっている。予備校の経営者として毎年の進学実績が気にならないといえばウソになる。東大合格者の人数がモノをいうのがこの業界だ。だが、それだけでは終わらせたくない。10年後の2020年には「東進の卒業生がノーベル賞を受賞」といった、社会に出た後の実績をアピールできるようにしたい。

 そのために様々な取り組みを始めている。たとえば四谷大塚が主催する「全国統一小学生テスト」の成績優秀者を招待し、ハーバードやコロンビアといった名門大学(アイビーリーグ)などを視察した。グローバルな視点を養い、世界で活躍するリーダーに求められる資質や倫理観に触れてもらった。毎年、高校生や中学生が日本を代表する教授陣の講義を受講できる「大学学部研究会」も主催している。選抜した約30人の高校生を夏休みの間、中国の名門・清華大学に短期留学させるプログラムも作った。

 こうした様々なチャンスを子どもたちに提供し、教育環境を創出し、制度を改革することこそ私たち大人の責任だと思っている。幼・小・中・高・大・社会人一貫の新しい教育体系を構築し、社会に貢献する“人財”を大量に輩出していく。それが私が提案する日本を元気にする処方せんだ。

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