未来面「世界一、□□□国、日本へ。」経営者編第7回(2011年6月6日)

提言

再起へ、日本を世界一、人が、社会がつながる国にする

NTT・三浦惺社長

※肩書き等は掲載当時のものです。原稿のため、掲載時とは差異があります

強いネットワークが必要

SNSやボランティアで

有機的なコミュニティーを

「ICTの利活用で新しい国づくりへ」

 あの日のことはずっと記憶に残るでしょう。3月11日午後2時46分。私は東京・大手町の本社ビルでお客様と話をしていましたが、大きな揺れとミシミシと建物のきしむ音は今でも鮮明に覚えています。あの日以降、いろいろな出来事が複層的に起き、日本という国が大きく変わりました。そうした中で我々ができることが何かを考えていかなくてはなりません。

 NTT東日本やNTTドコモの社長は、震災直後から被災地に入り、復旧活動の陣頭指揮をとりましたが、持ち株会社の私はあえて4月に入ってから現地入りしました。大規模災害時の対応においては、指揮命令系統の一元化が重要であることを過去の経験から学んでいたからです。

 被災地の悲惨さはメディアやグループ企業からの情報を通して知ってはいたものの、この目で見るとやはり想像を絶するものでした。被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。現地で実感したのはそれぞれの場所で被害の状況も異なれば、被災者のニーズも異なっていたことです。会社勤めの方々、農業や漁業で生計を立てている人たち。多くの高齢者の皆さんも働いています。自治体や住民の皆さんから話を聞いて新しい発想で街づくりの絵を描く必要があるでしょう。

 NTTグループも最大限、早期復旧に努め、4月中にほぼ完了することができました。しかし、反省すべき点もあります。それは通信インフラを担いながらも震災直後に「つながらない」という事態が起きてしまったことです。地震や津波によって基地局や通信ビルが損傷、流失。広域停電が復旧を妨げました。これまでも大きな災害のたびに見直しをしてきましたが、サービス提供の面で大変、ご迷惑をおかけしました。

 痛感したのは強いネットワーク作りの必要性です。長時間利用できるバッテリーの導入や、1つの基地局で広域にカバーする大ゾーン方式などが挙げられます。大ゾーン方式では山頂などにある基地局を活用して、他の基地局が使えなくなった場合でもサービスが利用できるようにします。

 災害時に多くの音声発信がネットワークに集中して、つながりにくくなりました。一方、メールやツイッターなどネットではそうではありませんでした。メール等はパケット通信という仕組みにより、従来の音声通話と異なり回線を占有しないからです。この反省から音声メッセージをファイルにしてパケット通信で相手に届ける仕組みの構築に着手しました。NTTドコモのスマートフォン(高機能携帯端末)相互の通話を対象に今年度内のサービス開始を予定し、順次サービスの対象を広げていきます。

 避難所にお邪魔して気づいたことがあります。避難所の出入り口など壁に手書きで何百枚もの安否情報や必要な支援物資のリストなどが貼ってありました。様々な情報が電子化され、連携していれば、どれだけ円滑な支援が可能になったことかと。もっと早く電子化の仕組みを作っておくべきだと思いました。同様に、電子カルテがクラウド上に整備されていれば、患者さんについて最低限の情報が把握でき、災害時の医療サービスにも貢献できたことでしょう。遠隔地医療の現場では被災地におけるメンタルケアの重要性を再認識しましたし、これからはネット経由での遠隔健康診断などでカバーできることがわかりました。

 避難先の移動を何度も余儀なくされ、これまで一緒の集落で暮らしていた人たちが別々の場所で暮らしているケースでは、従来の行政サービスの提供が困難になります。バーチャル(仮想)な自治体をつくり、情報を一元化する必要があります。ネットを通していろいろな場所にいる被災者に必要な情報を伝えるような取り組みも検討課題です。自治体とも相談しながら、ICT(情報通信技術)をどう利活用し、新しい日本を作るお手伝いができるかを考えたいと思います。

 震災は新しい芽生えも見せてくれました。ソーシャルメディアとボランティアという大きな力です。ツイッター、フェイスブックなどが次々と新しいコミュニティーを作り、支援の輪が急速に広がっていきました。多くのアイデアが持ち上がり、そのアイデアを有機的に結びつけることで支援の実効性が高まっていきます。これが新しいイノベーションなのだと思いました。

 震災に直面して、企業として何が求められるのだろうか、考えてみました。企業のことを法人と言いますが、なぜ「人」という文字が使われているのでしょうか。法人格のように人格すら与えられています。市民の延長線上に企業が存在しているのです。企業は良質な商品やサービスを提供することで市民社会への役割を果たします。

 被災地では特区などを活用して新しい街づくりが始まることでしょう。被災地はもちろんのこと、日本全体で新しい国づくりを加速していく必要があります。その1つの手段としてICTの利活用を積極的に進め、便利で住みやすいコミュニティーをつくっていく必要があるでしょう。

 コミュニティーは地域事情を考慮することが欠かせませんし、同時に持続可能でなければなりません。市民や自治体などをはじめ、つながりを共有している方々と相談し、ICTをどう利活用すれば新しい日本をつくるお手伝いができるか知恵を絞り、未来に向けた新しい社会の実現に貢献していきたいと思います。

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