未来面「世界一、□□□国、日本へ。」経営者編第9回(2011年5月30日)

提言

再起へ、日本を世界一、環境に優しいモノをつくる国にする

パナソニック・大坪文雄社長

※肩書き等は掲載当時のものです。原稿のため、掲載時とは差異があります

危機を新しい出発点に。

グローバル展開の速度を上げ

自信回復につなげよう。

「省エネ製品を世界へ」

 東日本大震災で被災された方々、ご家族、関係者の皆様に、心よりお見舞い申し上げます。

 未曽有の大災害から2カ月以上がたちました。被災地では多くの方々がいまだに避難所での暮らしを余儀なくされています。復興を本格的に考える段階になるには、まだ時間がかかるのかもしれません。重要なのは、この危機を新しい日本をつくっていく出発点にしなければならないということです。

 今回の震災を受けて、今までにない「災害に強い社会」の実現が求められています。また被災地を含む、東日本地域を中心に電力不足や停電の対策が切迫したニーズとなっており、省エネ機器の普及、創エネ、蓄エネ、エネルギーマネジメントの新提案も不可欠です。当社としても「エネルギー」に「安心・安全」を加えたパナソニックならではのソリューションで復興に向けたリーダーシップを発揮したいと考えています。

 エネルギーの使用量を減らし、二酸化炭素(CO2)の排出量を抑制する。これは世界中の国々が取り組まなければならない課題です。国際エネルギー機関(IEA)は2010年に280億トン余りだった世界のCO2排出量が、今後何も対策を打たなければ30年には約400億トンになると試算しています。温暖化の影響を回避するには、30年の排出量を10年のレベルに抑えなくてはいけません。太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギーの利用を促進し、発電の効率を高めていくのも、CO2の排出抑制には不可欠です。しかし、最も効果があるのはエネルギーの使用効率の改善です。

 電力の使用効率を高めて家庭での電力消費を抑えるには、人々がエネルギーを節約しようと意識しなくても、快適で環境に優しい生活を送れるようにしなければなりません。日本市場ではオイルショック以来、省エネ技術が重要視されてきました。消費者の目も肥えており、省エネに対応した製品の完成度は世界一です。ただ、忘れてはならないのは、それがそのまま世界で通用しないという点です。

 先進国の市場では消費者に環境に優しいライフスタイルを提案する「ライフスタイル共創型」のマーケティングをすれば受け入れられるでしょう。新興国では人口増加の受け皿となる都市の集合住宅など、比較的大きな単位で消費電力を抑える「エコバランス成長型」の提案が必要になります。また電化されていない地域の途上国の場合、生活インフラの構築時点から省エネ技術を盛り込み、インフラ投資を効率化するのも大事です。

 このように国や地域によって省エネ技術のニーズは様々です。そのため、メーカーは製品を単品で販売するビジネスから、ソリューションの提供へと事業構造を変えなくてはいけません。提案力がものを言うのです。スマートグリッド(次世代送電網)やスマートコミュニティーなど新しい言葉が出てきた背景もここにあります。

 パナソニックは家電や太陽光発電システム、環境対応車、住宅用蓄電装置に使うリチウムイオン電池などを「まるごと」ソリューションとして展開する戦略を掲げています。それぞれの製品の電力消費や創エネの状況を把握し、無線通信でつないで一体制御する。概念としては簡単ですが、個々の製品の電力消費を把握することが実は技術的に難しい。こうしたアドバンテージを生かし、各国の消費者にわかりやすく伝えられれば、必ず新しい市場を開拓できます。

 日本のエレクトロニクス産業はバブル経済の崩壊で海外事業を縮小せざるを得なかった経緯があり、その間に台頭した韓国メーカーとの差が開いてしまいました。しかし、知的財産や技術開発力など事業の根幹で負けたわけではありません。攻めるべき分野に経営資源を集中し、事業のグローバル展開のスピードを上げていけば自信を取り戻せるはずです。

 基幹技術の開発を日本で続ける一方で、商品化などの技術開発は海外拠点の現地の技術者に任せるといったことも必要になるでしょう。日本のメーカーはプラザ合意後の円高で20年前にも海外生産を進めましたが、当時の海外市場開拓の担い手は日本人が中心でした。震災復興を図りながら、世界中を省エネにする環境にやさしいモノづくりを推進し、グローバル展開の質とスピードを時代に合わせて変えていく。

 これができれば韓国や中国のメーカーに再び追いつき、追い抜くのは難しいことではありません。

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