未来面「日本を始めよう」経営者編第6回(2012年2月20日)

提言

地域から元気になる日本を始めよう

ヤマトHD・木川真社長

※肩書き等は掲載当時のものです。原稿のため、掲載時とは差異があります

 東日本大震災は、政府、自治体の財政悪化、少子高齢化、地方の過疎化といった社会構造の変化を浮き彫りにしました。この大きな流れに対し、行政や企業の在り方も必然的に変わっていくべきですが、実態としてはそうなっていません。公共サービスのニーズが飛躍的に高まっているのに対応が間に合っていないのです。地方自治体の財政状況がそれを許さないという事情もあります。

 今こそ、民間企業が協力して、公共サービスを推進すべき時期に来ていると考えます。民間企業の保有するインフラが行政の一部を担えば、住民へのサービスの質も向上できると思います。行政としては、なかなか簡単にアウトソーシングには踏み出せないのが現状ですが、公共サービスの向上については、官だけでなく我々民間企業も、そして国民一人ひとりも真剣に考えなくてはいけない問題といえるでしょう。

 地域活性化を目指すうえでは、衰退する商店街をいかに再び活気づかせるかが重要なテーマといえます。衰退の要因には、一極集中型で効率的な大型店舗の台頭が挙げられますが、今回の震災ではその弱さも露見しました。つまり、地産地消でないがゆえに、どこかで道路や橋などの交通網が遮断された瞬間にモノが流通しなくなってしまうわけです。

 そこでたとえばこれまでバラバラに競争していた民間企業の力を結集し、商店街を作り直してはどうでしょうか。こうしたプラットフォームづくりを官の目線ではなく住民の目線で行いながら、商店街を再生して地域の活性化につなげる。地域の活性化を進めていけば、日本全体の活性化にもつながるはずです。

 もちろん、実現には自治体のサポートも欠かせません。自治体のトップのなかには、官と民による地域の活性化に高い意識を持っている方も多くいらっしゃいます。一人暮らしの高齢者の存在はどの地域にも共通の問題で、その安否確認を行うため、自治体からの要望としては家庭用のコミュニケーション端末の配備が挙がっています。この場合、通信会社を交えたプラットフォームづくりが必要で、自治体はもちろん、医療機関などとのコミュニケーションも欠かせません。たとえばヤマトグループも宅急便ネットワークというインフラをうまく活用すれば、低コストで高品質のサービスを生み出すお手伝いができます。ただ到底、一企業の力だけではなし得ず、やはり民間企業同士の協力が不可欠といえます。

 今回の震災で、あらためて日本人の底力はすごいと感じました。復興への意欲はもちろん、あれだけの大災害でも秩序が乱れない点は、日本国民の我慢強さであるとか、冷静さであるとか、一言では言い表せない高い志は、国民一人ひとりが持っているものだと実感しました。たくさんの寄付やボランティアが日本全国から集まる日本は、まだまだ強く、一体感もあります。それが今回、目覚めたのではないのでしょうか。しかも、若い方たちにそういった風潮が見られたのは喜ばしいことだと思います。

 震災後、当社も社内で議論をし、宅急便1個につき利用料金の中から10円を1年間寄付することにしました。総額約140億円を被災地の生活基盤である農・水産業など即効性のある事業に助成しています。本来、寄付の原則としては公平でなくてはいけないのですが、行政がなかなか手を付けられないところ、雇用が生まれるところ、というように、効果が早く表れるところに寄付することで素早い再出発の支援ができると考えたのです。

 当初は税務当局から全額有税と言われましたが、結局は志を理解していただき、全額無税にしていただきました。株主の皆さんにも当社の決定を受け入れていただきました。この寄付活動が日本に民間企業の力を活用した新しい寄付文化が根付く「きっかけ」「呼び水」になればと考えています。「税金を集めて、あまねく配分する」という従来の方法では、かなりの時間を要します。生活基盤を根こそぎ奪われた被災地の皆さんにとっては時間との戦いであり、地域経済が一刻も早く立ち直ることが重要なのです。

 日本は国民一人ひとりと同様、民間企業も、まだまだ底力を秘めていると思います。これを結集して被災地の復興・再生を通じた新しい街づくりに取り組むことが全国の地域活性化のモデルとなり、ひいては日本の活性化につなげるチャンスが見えてくるのではないでしょうか。

コメント

筑波山さん

ヤマトホールディングスの木川真社長の考えに賛同します。会社は、渋沢栄一翁が「論語とそろばん」で説かれているとおり、社会が本当に必要とするモノ・サービスの提供という義と、継続的に運営・成長していくために必須の利の両者を目的に経営すべきものです(道徳経済合一)。義と利の両立が難しい時、どちらを優先すべきかといえば、義が先であり、利は後です。なぜならば利の源である通貨(カネ)は、物々交換では不便なため、我々の祖先が衆知を集めて創造したもの(道具)であり、義が主であり利は従だからです。各々の持ち場に立ち、一致協力して東北復旧・復興、日本再生(ルネッサンス)を目指しましょう。

そばめしさん

昨年紀伊半島を襲った台風12号で幹線道路が水没し、生活基盤を失った親戚を心配し連絡を取ったところ、「食べ物は畑のものを食べたり何とかなるが、飲み水がない。ペットボトルを送ってほしい。」とのオーダー。早速10本調達し発送手配をしようとしました。ところが、どの宅配会社も配達ルートが寸断され届けることができないと、取り合ってくれず。しかし、最後に唯一クロネコヤマトが引き受けてくれ、迂回道路を利用して届けてくれました。私は感謝すると同時に、民間企業の顧客サービスに対する情熱を感じました。官と民では発想力・実行力が違います。官と民の力を集結して震災復興に当たるべきと考えます。

I.M.Iさん

ヤマトHDの頑張りに大いに期待します。付け加えるならば、今や実行と行動が第一です。民間の企業が必要と思われる事については行政機関を気にせず協力して出来る事を為すべきかと思います。その場合は必ず各自治体の意向を考慮して一緒に協力して行くことが肝要と思います。物流が元気になれば自治体や国も元気になると思うし、人間の血流のようなモノかと存じます。

さとうやんさん

ヤマトホールディングスでは宅急便1個につき10円を寄付することにしたとのことですが、そのことにより実は宅急便の取扱も増えているのではないでしょうか。社会に貢献しながら堅実に利益をあげていく、それが「民」の知恵なのだと思います。木川さんのお話は、そういった「民」が結集し「官」と力を合わせていけば地域・日本が元気になる、ということだと思います。「民」に身を置く自分としても頑張らなければと思います。

グロンサンさん

 日本は幾多の災害復興から、「単にもとに戻す」だけでなく、改善・成長してきました。

 ヤマトHDは、宅急便の強みを活かして様々なソリューションを産み・提供し、今回の復興支援では、最後までその使途に責任を持つような金銭的な支援も行うなど、企業としてのお金の使い方に健全であることが伝わってきます。

 是非、そのソリューション力を活かして、復興後の物流を変革する気概でサービスを提供して下さい。社員の皆様もモチベーションも高いと思います。

 その勢いで、更に「一歩前へ」

同企業からの課題

同テーマの提言