未来面「日本発のイノベーションを実現するためには」経営者編第7回(2013年5月8日)

課題

ものづくりで再びNo.1になるには何をすべきか

斎藤保・IHI社長

※肩書き等は掲載当時のものです。原稿のため、掲載時とは差異があります

〈斎藤保さんの主張〉

●日本という現場を離れて製造業の復活はない

●安心・安全な社会もインフラ技術の集積があってこそ

●顧客の声を聞き、それを実現するのが「ものづくり」の醍醐味

 グローバルな経済社会が進行する中で「もの」を作る場所が大きく変わろうとしています。製造コストの安い場所を求めて日本から製造拠点を海外に移す動きです。もはや日本へのこだわりや、日本という国の概念すら希薄になっています。でも、この流れは本当に正しいのでしょうか。私はそうは思いません。「ものづくり」の現場として日本にこだわるべきであり、日本には「ものづくり」が必要だと考えます。

 「もはやそんな時代ではない」と思われる読者の皆さんは多いでしょう。反論を覚悟でお話ししたいと思います。

■風土が生んだ和と忍耐

 日本を知れば知るほど「ものづくり」に適した風土、社会的背景があることに気付かされます。

 農耕民族である日本人は、四季のあるこの地で自然を受け入れる忍耐強さが養われました。また気候の変化に耐える品種改良への取り組みや、自然災害から農作物や自分の身を守るため灌漑(かんがい)整備などをずっと行ってきました。太古の昔から日本にはこうした日々の改善、工夫の姿勢が染みついているのです。「ものづくり」は一人ではできませんが、島国で閉鎖的な社会ではそこに住む人たちとの共生が求められ、おのずとみんなで考える力がついていったのです。「和」の力です。こうして見ると「ものづくり」の環境が生活の中に組み入れられたことがお分かりいだだけるかもしれません。

 日本の近代化の歴史からも見ていきましょう。今から160年前の1853年。IHIが創業したその年にアメリカの使節ペリーが江戸湾の入り口浦賀沖に現れました。欧米による日本の植民地化を避けるために日本の近代化が始まった年です。欧米の良い点を取り込み、「欧米に追いつく」ことが強く求められました。第2次世界大戦後の急速な近代化の動きは「欧米に追いつき、追い越せ」という合言葉があったからでしょう。ある種の劣等意識が「ものづくり」への原動力になったと考えます。日本社会の「恥の文化」には、人に負けないこと、人に恥じない「良い物」を作る美意識が通底にあります。言い換えるなら「ナンバーワン」の製品を作る覚悟です。

 IHIは民間で初めての蒸気船の建造(1877年)や日本初の国産ジェットエンジンの開発・製造(1945年)、日本初の石油掘削洋上施設の建造(1958年)、日本初の機械式立体駐車装置の製造(1962年)などで欧米に追いつき、追い越すことにお役に立ってきたと思います。最近では宇宙航空研究開発機構(JAXA)の「はやぶさ」に搭載した回収カプセルがIHIグループ製で、その任務を果たしました。

 「ものづくり」の素地が備わっている日本は自動車、航空・宇宙などをはじめ世界で通用する強い産業が集積しています。関連する産業及び事業がお互いに結びつき、新たな相乗効果を生み出す産業クラスターを守っていかなくてはなりません。これが分散したら「ものづくり」の基盤を失うことになるのです。だから日本に踏みとどまらなくていけないのです。最近の風潮として「ものづくり」を目指す国は二流国で、ビジネスモデルを創造して「儲(もう)ける」のが一流国という考え方があります。しかし、人類がよりよい生活を維持していくにはイノベーションが必要で、その核となる技術や価値観が薄れ、「ものづくり」の優位性を低下させているのは残念でなりません。現場視点、すなわち現場、現実、現物の「三現主義」が日本にあってこそ、社会的なニーズを解決できるのです。

■新しい国造りの基盤

 IHIのように社会インフラを担う企業にとって国力の源泉となる社会インフラに関する技術・製造基盤を海外企業に譲ることは広義の安全保障を他国に委ねることであり、看過できるものではありません。東日本大震災の教訓からも新しい国造りには社会インフラを含めて信頼のできる「ものづくり」の土壌があってこそ、安心で安全な生活が築けると確信しています。

 世界を取り巻くメガトレンドは人口増、都市化、産業化を支えるスマートな社会インフラ、ビッグデータを解析する新たな高度情報化社会、そしてヒト、モノ、カネが国境を越えて結びつく複雑化する経済社会です。この3つをつなげる役割がこれからの「ものづくり」には必要になってくるはずです。お客様の声を聞き、それを実現するのが「ものづくり」の醍醐味であり、夢でもあります。

 若い学生の皆さんにも「ものづくり」の世界に飛び込んでもらいたいと思います。

アイデア

ワイガヤを取り戻せ

武居 倫太郎(慶応大学大学院経営管理研究科2年、33歳)

 その昔、日本の製造現場では、経営者と現場がお互いに夢を語り合い、皆がわくわくドキドキするようなものづくりが行われていた。現場は、自分の作りたいものを強引に形にすることができ、経営者は彼らのガッツに賭け、熱く語り合っていた。だが、今の会社は規模も大きくなり、様々な経営手法が取り入れられた結果、経営は経営、現場は現場に分離されてしまった。経営者が現場に行くのは単なる視察になってしまい、コミュニケーションは表面的だ。上意下達で異端なものが排除される会社になってしまっている。

 日本が新しいものを創出できなくなったのではなく、そういうものに光をあてられなくなっているだけだ。この流れを変えるには、経営と現場の距離が近くワイガヤできる環境づくりが必要だ。そのためには、リーダーが先頭に立って現場にわくわくドキドキを取り戻すよう行動しなければならない。個人にスポットがあたることで、ものづくりは若者に魅力ある存在となる。

製品を結ぶ「生態系」創出

片芝 亮友(関西学院大学総合政策学部3年、20歳)

 日本のものづくりの品質と技術力は誰もが認める。ただ、今の日本のものづくりは、一つひとつの製品が孤立している気がする。同じメーカーの製品でも、一つひとつが圧倒的な技術力や品質に支えられながらも、製品同士のつながりや相乗効果はあまりなく、顧客を取り込めていない。

 このつながりの重要性にいち早く気が付いたのは、アップルやグーグルなどの米IT(情報技術)業界の巨人たちである。彼らは自社のサービス・製品を結びつけることで相乗効果を生み、顧客の様々なニーズを満たしている。また、その相乗効果によって生み出された「生態系」は、人々の生活に深く溶け込んでいる。

 今後の日本のものづくりを再興するには、この製品同士の相乗効果を発揮し、「生態系」を創り上げることが重要だ。製品ごとをどのように結び付けていくか。ここに焦点を当てていけば、おのずと「生態系」は創り出され、顧客を取り込んでいける。これこそ、日本のものづくりがナンバーワンに返り咲くヒントだろう。

若者が挑戦できる環境を

藤森 幹(東京大学教育学部3年、20歳)

 ものづくりには柔軟でクリエーティブな発想が必須だ。優秀な日本の技術者は、努力に努力を重ねて意義のあるものづくりをしている。これをさらに促進するには、できる限り若いうちからのトレーニングが必要であると考える。

 普遍的なトレーニングの習慣を身に付けるには、若者がものづくりに対する興味を持つ環境をつくる工夫が必要だ。学校教育ではワークショップや課外活動でものづくりを体験してみる「チャレンジの場」を提供したり、世界中の優秀な技術者と日本の若者の「交流の場」を創出したりすることが望ましい。そして、若者に早い段階から「ものづくりには夢がある」という発想を定着させるべきだ。

 最近流行のIT(情報技術)起業とは逆に、ものづくりが本来的にハイリスク・ハイコストである点が、学生が取り組むにあたっての大きな障壁となっていることを認識し、行政がそうしたデメリットをどれだけ払拭するサポートをできるかに、将来的な日本のものづくりの命運がかかっていると思う。

「ものづくり」は笑顔づくり

寺岡 明紘(慶応大学大学院経営管理研究科2年、29歳)

 ものづくりには人に「喜怒哀楽」を与えるという魅力がある。作ったものに対して感謝されたときの喜び、うまく作れなかったときの自身への怒り、失敗してしまったときの悲しみ、作れなかったものができたときの楽しみ。ものづくりによって自身の成長と共に笑顔がうまれるのだ。

 現在の日本では、ものがあることが前提と考えられ、ものづくりは敬遠されるようになってしまった。ものづくりの海外移転が、人の成長、そして国の活気を失わせたのではないだろうか。

 ものづくりで再びNo.1になるために、ものづくりを多くの人に気軽に体験してもらい、魅力を知ってもらうことが大切なのではないか。企業が無料体験コーナーを設置することで生活者との交流という副次的効果もうまれる。すべての土台となるものづくりであるからこそ、地道な普及活動が似合う。

 ものをつくることが人の笑顔をつくり、国の活気につながるのではないか。

健康分野で新たな価値創出

中村 文亮(大阪大学法学部3年、20歳)

 近年、日本の製造業はその支配的地位を奪われ始めた。なぜなら、中国の低コストを武器とした大量生産、米国の先進的なIT(情報技術)によるイノベーションに日本が間違った対応をしたからだ。中国とコスト面、米国とIT面で直接戦おうとしたのがそれだ。相手が優位な土俵の上で勝利を収めるのは至難の業だ。大切なのは相手の土俵に立つのではなく、相手の長所や技術を学び、日本の土俵で戦うことだ。したがって、日本の製造業は新たな価値次元を生み出す必要がある。

 私は日本の強みである健康分野と製造業を組み合わせることを提案したい。例えば、シャープの「さくら色LED」がそれだ。蛍光灯業界が今まで競ってきたエネルギー消費量という次元で戦うのではなく、「目の疲れをいやす」という新たな価値次元を生み出し戦っている。これから健康市場は世界中で伸びる。日本の製造業は新たな土俵で戦う決意をしなくてはいけない。

工場で働く経験

鴛海 翼(大阪大学大学院工学研究科2年、24歳)

 高学歴な技術者ほど、実際の製品から遠く、チームではなく個人で仕事することが多いように感じる。そのため自分の仕事が、会社の利益に結びついているのか、誰の役に立っているのか意識する機会が希薄になりがちだと思う。製造業は、開発部と工場で線引きされているので、開発部の技術者は工場から遠くなりがちだ。

 そこで、開発部の技術者にも短くて数カ月、長くて数年、工場の現場で働く機会を与えてほしい。現場を知った経験は、新しい製品開発に必ずいきるはずだ。安全面を考えると、難しい所もあると思うが、作業自体は行わなくても、実際の作業工程をじっくり見るだけでも大きな違いが生まれると思う。

 その意味でも、身近な日本に工場があることは重要だ。工場での経験があれば、新製品を開発して、工場に製作を依頼するときも、チームで仕事がしやすくなると思う。

歴史と伝統を武器に

新井 宏典(中京大学総合政策学部2年、19歳)

 日本がものづくりNo.1になるためには、売り上げや利益でNo.1になろうという意識は捨てた方がよい。その思いがあるとコストを意識するあまり人件費などの安いアジアなどでものづくりが行われるからだ。

 日本製品の最大の魅力は「安全」と「品質の高さ」の2つではないだろうか。日本人は恵まれた状況にいるあまり、その良さに気づかなくなっている。海外では日本の安全で品質の高い製品のニーズは高い。安全で品質の高い製品というのは、日本が昔からものづくりをしてきた長い歴史と伝統の中ではぐくんできた高い技術があってこそのものだと考える。

 日本が再びものづくりでNo.1になるためには、ほかの国が追いつくことのできないような領域にまで安全と品質の高さを極めていくことが必要だ。

挑戦しやすい環境作り

木下 英拓(中央大学商学部3年、21歳)

 ものづくりで再びNo.1になるためには、イノベーションを担う優秀な人材が存在しなければならない。イノベーションを担う人は周りからの批判に動じず、物事を遂行し、自分の社会に対するビジョンを持ち、健全な野心を持ってものづくりをしていく必要があると思う。自分がものづくりで社会を変えていくんだというハングリー精神が必要だ。

 米国にはシリコンバレーのようなハングリー精神が育つ環境も整っている上に、挑戦する人を評価する文化があるが、日本にはそのような文化がなく失敗が許されないという空気がある。まずは日本でも挑戦しやすい環境作りが必要だろう。

隣国と協力する

松下 隼也(明治学院大学法学部1年、18歳)

 日本が再びものづくりで世界No.1になるには、国内の力だけでは困難であり、外国、特に隣国との協力が必要不可欠だと考える。

 例えば、多くの日系企業が工場を置いている中国、サムスン電子やLG電子、現代自動車など世界的な企業があり、韓流ブームなどで交流がある韓国と共同事業を始めるなど協力を深め、外国の技術や土地などを大いに活用すべきだ。もし国内だけで、ものづくりにおいてNo.1を目指すのであれば、海外にある高度な技術や広大な土地などの有効な経営資源をみすみす活用しないことになり、すでに協力関係にある欧州などの国々に対抗することは難しくなるからだ。また他国と協力することにより、自国の技術や知識だけではできないような、新たな発見をしたり、新技術を開発したりできるかもしれない。

 国内だけにこだわらず、広く外国との協力関係を築く取り組みが、ものづくりNo.1への第一歩と考える。

研究開発と顧客視点を両輪に

柴田 梨沙(早稲田大学文化構想学部4年、21歳)

 なぜ日本の「ものづくり」が海外に流出しているかを考えると、日本と海外の技術力の差がなくなり、コストだけの競争になった結果、コストの低い海外に生産拠点が移転してしまっているからではないだろうか。

 この課題に対する解決策を2点考えた。1点目は企業が研究開発にさらにお金をかけ、自社製品以外の研究もできるチームを結成することだ。かつて、日本の技術力はライバルの一歩先をいっていたが、現在は新興国の技術力が向上し、競争優位性を失っている。そこで、自らの判断で幅広い分野の研究ができる独立機関を社内につくる。一見、自社の製品開発と関係性がなさそうだが将来有望な研究に挑戦すれば、新しいイノベーションを起こすきっかけを見いだせるかもしれない。リスクをとってでも新技術を生み出そうというチャレンジ精神が今の製造業には必要だと思う。

 2点目は、顧客視点にたったものづくりだ。日本は昔から世界トップクラスの品質を誇ってきただけに、外国には「日本製品の安全性は高い」との共通認識がある。この高い評価を生かし、大量生産のものづくりから1人ひとりの顧客の要望に応えるものづくりへ転換していくべきだ。大量生産の安い製品は外国企業の方が有利かもしれないが、高い品質と安全性に加え、高い技術力で柔軟に顧客の要望に応える製品では日本はNo.1になれるのではないだろうか。

「ガラパゴス」で世界に勝つ

川添 瞭(明治学院大学社会学部1年、19歳)

 グローバル化に取り残された日本の携帯電話を揶揄(やゆ)した「ガラパゴスケータイ」、略して「ガラケー」という造語がある。私は「ガラパゴス」であるところに日本のものづくりを再びNo.1に返り咲かせる魅力があると感じる。

 「ガラパゴス」であることは、即ち国内の需要だけを注視し、それに特化したものを作ることができるということだ。そしてそれが迅速にできるのは当然、市場や顧客のニーズを知り抜いている国内企業だけである。昨今は国際化が叫ばれ、国内企業が焦りだし、必死に海外仕様を売り出そうとしているが、国内だけの需要をもっと重要視すれば、まだまだ煮詰めていけるはずである。

 もしそれでも海外への進出をめざしたいときは、逆に「ガラパゴス」だった文化を海外へ大きく訴え、その技術を国際化してしまえばいいと思う。日本発のアイデアには、スマートフォンのカメラのように欠かせない機能となるものが少なくないはずだ。そのカメラのような新しい機能を日本人向けにさらにアレンジしていけば、再び「ガラパゴスな分野」として国内企業が伸びていく新しい循環が生まれるのではないだろうか。

経験を力に

大良 学(中央大学理工学部4年、21歳)

 日本のモノづくりをNo.1にする呼び水となるのは災害用ロボットだ。主な理由は2つある。

 1つ目は、世界的に見ても日本は地震の多い国であることだ。安全が確保できない状況で、ロボットが被災者を助けることができればその技術力を世界に向けてアピールする機会となる。

 2つ目は災害用ロボットがまだまだ発展途上にあるからだ。例えば、災害時に変形して開かなくなったドアを人間の代わりに破ったり、危険を察知してそばにいる人間を保護してくれたりする機能を備えたロボットを開発できればインパクトは強いだろう。

国語で変える日本の技術力

太田 哲平(室蘭工業大学工学部2年、19歳)

 近年、国際力向上のために英語の授業を増やしたり、科学力向上のために算数や理科の授業を増やしたりしている。しかし、そのかわりにすべての学問の基礎となる国語の授業を減らしてはどんな力も身につかない。実際、算数の文章題や人文系科目の論述で手も足も出ない生徒が最近増えているそうだ。

 文章から意思をくみ取り問題を抽出する読解力。自分の意思を体現する言葉を探し、文章にして相手に伝える表現力。これらはすべての学問で必要とされる力であり、国語以外の科目ではなかなか身につかない。もちろん、ものづくりにも必要な力である。

「異年齢教育」を実施せよ

藤井 大地(同志社香里高校3年、18歳)

 私はこの課題に最も必要なものは「異年齢教育」だと思う。将来は幼児から大学の学生を対象とし、必修単位とする。大学受験を終えた、また社会人を目前とした大学生なら実現可能であると思う。具体的には、大学で、言語で意志を十分に伝えられない乳幼児と定期的に触れ合う授業を取り入れるのだ。自分たちの常識が通用しない世代と関わる事で、相手のニーズを察する力を養い、人間の原始的な本能を受け取る事ができる。これがものづくりに必要だと考える。

 さらにものづくりにはお金が要る。よって経済観念を育てる必要がある。バイト感覚ではなく、プログラムに沿った実社会の労働経験からお金のありがた味を知る事ができる。生きるための本能や心、社会の規則やシステムを机上ではなく現場で理解を深める経験が、のちに世界に勝てるものづくりになるのだ。決して独りよがりの職人になってはいけないと思う。

中小企業に投資を

佐藤 有紗(明治学院大学法学部3年、20歳)

 日本のものづくりを再びNo.1にするためには、中小企業に対する投資が必要であると思う。大企業であれば、ものをつくることに多くの資金を投資することができるが、中小企業はそうはいかない。日本のものづくりにおける強みは、昔から代々続く中小企業の技術力にあると思う。しかし、その技術力を資金不足のために最大限に活かすことができないとなれば、それほどもったいないことはない。

 日本のものづくり業界を活性化するためには企業の枠に捉われずに、技術力の向上を求め企業と国とが技術の評価をし、優れた技術には投資をするというスタイルにすべきである。大企業と中小企業が連携を図ることで新たな視点から様々なアイデアを生み、それを高水準の技術力で実現することが可能になると思う。また、営利目的のみでものづくりをするのではなく、いかに社会に貢献できるかを基準に技術を評価することが必要であると考える。

女性の社会進出を支援する

平野 佑佳(青山学院大学社会情報学部4年、21歳)

 ものづくりで再びNo.1になるためには、女性の活躍が欠かせない。日本では、社会で活躍したい、もしくはする能力がある女性に対し、その意欲と才能を発揮する機会を現在以上に提供する必要があるのではないか。女性の活躍がものづくりに貢献した例を目にしたことがある。女性社員で編成された商品開発チームが、ある美容家電商品をヒットさせたというニュース記事である。

 美容家電の利用者である女性の視点を盛り込み、顧客のニーズに対して的確に応えたことが商品の支持につながったという。女性ならではの見解はものづくりに好影響を与え得ると考える。だからこそ、意欲と能力がある女性が社会で活躍できる環境を企業側が提供する必要がある。今後、ものづくりをする際に、女性社員にも意見や提案を求めてみるところから女性を起用してみてはどうだろうか。

中学生の創造性を自由に

平岩 莉央(中京大学総合政策学部3年、20歳)

 小学生のころ、図工の授業で先生は「自分の好きなものを、好きなように創ること」を求め、評価してくれた。しかし中学生になると、技術の授業で先生は「(学校側が)選んだものを、決められた通りに作ること」を求め、評価するようになった。

 中学校教育における“ものづくりに関する授業”は、一つの答えをクリアすることでこそ認めるという方針で行われているのである。今あるマニュアルに則った技術を向上させるという意味では、かなり有効な方法なのかもしれない。しかし見方を変えると、思春期の子どもたちの独創性を殺してしまう、ともとれるのではないか。決められた枠組みの中でしか考えを深められない、そんな子どもたちの増加に拍車をかけているように思う。

 今の日本がものづくりで再びNo.1の座に返り咲くためには、中学校教育方針の見直しが必要だと考える。15歳になった時、彼らはものづくりという選択肢を、進路の一つに加えるだろう。

講  評

人間にしかできない技術を追求

 学生の皆さんで、実際にものづくりの現場に出た経験がある人は少ないと思います。そういう意味で、今回の課題は少々とっつきにくいだろうと心配していましたが、非常にたくさんの提案を頂き、ものづくりに対する関心の高さに驚きました。若い人たちも日本のものづくりを再興しなくてはならないとの思いは変わらないのだと率直に喜んでいます。

 私が一番に期待していたのは「自分の手で、ものをつくっていきたい」という情熱や思い入れが感じられるアイデアでした。そういう意味で「ワイガヤを取り戻せ」という提案に強い共感を覚えました。ナンバーワンのものづくりを目指すには、まさにこうした上下の分け隔てなく率直に物を言い合える昔ながらの製造現場の再生が不可欠になると思います。

 製品同士を結びつけて「生態系」を生み出すというアイデアにも同感です。これからの国際競争は持てる様々な力を組み合わせて相乗効果を発揮しない限り、勝ち抜けません。当社が策定した「経営方針2013」でも「つなぐ」を重要なキーワードに据えました。成長に向け、既存事業と周辺事業、製品・サービスとICT(情報通信技術)、グローバル市場とIHIグループをつなぎ、新たな価値の創造や事業の高度化・総合化、取引先との関係構築・強化を加速する計画です。

 若者が挑戦できる環境づくりもますます重要になるでしょう。当社も子ども向けの理科実験教室や理科系の大学生向けのインターンシップを実施していますが、さらに幅広いニーズにどう応えていくかが今後の課題だと考えます。私が子どもの頃は、身の回りのいろいろな機械をいじくり回して過ごしたものです。それが今は、時計にしろ、オーディオにしろ、どれも電子制御されるようになり、生活の中で、ものづくりの楽しさを味わうのが難しくなりました。

 「IHIの製品は溶接の処理がきれいだから一目でわかるよ」。取引先からそんな声を頂く時、私はものづくりの最大の喜びや誇りを感じます。完璧を求める職人技術に裏打ちされた日本人の美意識。国際的にも評価が高い日本のお寺の美しさなどにも通じると思いますが、こうしたコンピューターにもできない、人間にしかわからない領域を突き詰めるところに、日本がものづくりでナンバーワンの座を取り戻すための突破口があるような気がしています。

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