未来面「日本の国際交流を活性化するためには」経営者編第11回(2013年9月2日)

課題

日本の国際交流を活性化するためには

大塚陸毅・JR東日本相談役

※肩書き等は掲載当時のものです。原稿のため、掲載時とは差異があります

〈大塚陸毅さんの主張〉

● 外へ出るだけでなく、訪日外国人を増やそう

● 海外から留学しやすい環境をつくり、日本を知ってもらおう

● どのような国際交流のアイデアがあるか考えてほしい

 「グローバル化」という言葉を聞かない日はありません。しかし、日本は十分にグローバル化している、といえるのでしょうか。海外市場での競争、グローバルスタンダードの導入などが盛んですが、これだけでは不十分だと私は考えます。人の交流をもっと深め、新しい価値を生み出すにまで至らなければ、真のグローバル化ではない、というのが私の持論です。

■「ほどほど」で満足せず

 日本は人口減少時代を迎えた成熟社会の中、ほどほどにやっていけばよいとの意見もありますが、私はそうは思いません。「坂の上の雲」がなくなったといって現状に満足し、経済の収縮を許すことは日本の国際的な地位を低め、ひいては国民が望むような生活レベルを維持することも困難にします。今後の日本が、若い日本人が国際社会の中で生き残っていくためには、雲を突き抜けてさらに先をめざし、成長を求めて経済のパイを大きくする志が必要です。

 戦後の荒廃した姿から日本がここまで繁栄してきた大きな理由の一つは貿易立国であることでした。これからの日本は、ビジネスにせよ、観光にせよ、さらに開国をしていかなければなりません。環太平洋経済連携協定(TPP)等の経済連携は、国を開く覚悟があるのかを問われているといえます。

 鉄道は典型的にドメスティックな業界です。しかし、世界に目を向けると多くのプロジェクトが動き出しており、鉄道市場規模は、2007年時点の16兆円から20年には22兆円になるという試算もあります。鉄道に限らず、日本の高度な技術や洗練されたサービスを世界が必要としています。これに日本はどう動くべきか。激しい国際競争の中、今の日本は消極的でこぢんまりとしすぎているのではと思えてなりません。

 皆さんは自らグローバル化をしていますか。「かわいい子には旅をさせよ」といいますよね。インターネットで全てを知ったような気になるのではなく、違う文化を直接経験し、違うメシを食う。苦労もあるでしょうが未知との出合いが人間を成長させます。世界で活躍する野球やサッカーの選手のように、ビジネスの世界でも若い皆さんが立てる世界の舞台は必ずあります。将来を担う皆さんにはぜひ、外に自らを開く、前向きな姿勢をもってほしいと思います。

 また、国内からのグローバル化を実現するためにはどのようなことが考えられるでしょうか。1つ目は「留学に来やすい環境をつくること」。いかにして外国の方に日本に留学に来てもらうか。欧米の著名な大学院では留学生比率が50%を超えるところもありますが、日本は東京大学の大学院生で約19%、学部生になるとわずか2%(東京大学調べ)。留学生の多くが将来祖国に戻り、リーダーになっていく人たちであるということも重要な視点です。世界中で日本を理解してくれる人を増やすことが日本のプレゼンスに影響を与え、国益にもかなうはずです。

 2つ目は「ビジネスの面で魅力を向上させること」。近年、外国企業が日本に地域拠点や工場を設けたいといった話はあまり聞こえてきません。ビジネスコストや規制など、色々な阻害要因を取り除き、日本を魅力的な進出先とすることも重要です。また、国籍を超え、優秀な人材を積極的に登用していくことも、多くの日本企業がより進めていくべきことです。

 3つ目は「観光振興に取り組むこと」。訪日外国人旅行者数は、12年は836万人であり、世界ランキングは第33位。国内総生産(GDP)世界第3位の経済規模からすると決して褒められる数字ではありません。かつて日本より旅行者数が少なかった韓国ではこの数年で急増して1100万人を突破、いまや大きく水をあけられています。

■訪日客が風景を変える

 12年の全世界の海外旅行者数は10億人を突破し、30年には18億人、しかもこのうち3割をアジアが占めると試算されています。成長著しいアジアから日本へ観光客を呼び込むことは、国際交流を深めるだけでなく、消費の刺激にもなります。現在、国を挙げて観光振興に取り組んでおり、訪日旅行者数3000万人を目指しています。3000万人になれば、日本の風景も変わり、日本人がグローバルの意味を肌で感じることでしょう。以前はアジアで開かれる国際会議のうち半分が日本で行われていましたが、11年には21%まで落ち込んでいます。国際会議の招致はもっと積極化すべきです。昨今、残念ながら近隣の国とは政治的に難しいこともありますが、こういう時こそ民間の交流を活発にしなくてはいけません。

 最近の若い人たちが内向き志向であったり、海外旅行を好まないといった話も聞いたりしますが、これは本当なのでしょうか。真のグローバル化を実現するためには、交流を活性化することが不可欠です。留学、ビジネス、観光といった視点を取り上げてきましたが、これにとらわれることはありません。なぜ日本のグローバル化が進まないのか。日本は、日本人はどうすればよいのか。若い皆さんの自由な発想で、国際交流の活性化プランをお聞かせください。

アイデア

世界から同好の士が集う「村」

小泉 和輝(東京外国語大学外国語学部4年、21歳)

 海外には関心がない内向きの人でも、必ず何かに興味を持っているはずだ。興味の対象は間違いなく多種多様だろう。この点に着目し、様々な分野で同じ趣味や関心を持つ人が集まる「村」を学生が休みの時期に日本各地につくれないだろうか。例えば、シュノーケリングをしたい世界中の学生が沖縄の島に集まるなど、その地域のよさや特色を生かした「村」だ。

 普段は外国人に接する機会がない学生も、そこで同じ分野に興味を持つ世界の人々に出会えば活発に交流でき、異文化に触れる機会を得られる。同時に、「村」を擁する地元住民も世界への理解が増し、「村」が地域活性化策のひとつにもなるだろう。

 こうしたプロジェクトには内向きの学生は集まりにくいはずだ。そこで、「村」に参加した学生には所属する大学から単位を、高校生には将来進学した大学で単位として認められる権利を与える。興味を持つことが単位になることで、多くの若者が内に向いている視線を外に向けるきっかけになるのではないだろうか。

商品表記や案内 わかりやすく

黒田 正文(関西外国語大学英語キャリア学部3年、20歳)

 日本に住んでいると自分で求めていかない限り、英語に触れ合う機会はほとんどない。さらに、日本ではスーパーで売られている商品や、観光地以外の地域では日本語表記のみが多いのが実情だ。これでは、せっかく海外から人々がやってきても、旅行する地域が限られてしまい、国際交流は進まないだろう。

 そこで、生活に関わる基本的なことから海外の人々にやさしい対応をしていくことが国際交流の第一歩と考える。言葉がわからなくても商品のラベルや案内板に理解のできる絵や図柄を採用するだけでも、海外の人々の印象は変わるはずだ。私自身も、留学中に現地の言葉が分からず、スーパーに並ぶ商品のラベルを見て、購入していた。

土地の魅力 投稿マップで共有

堀江 紗耶香(東京理科大学経営学部3年、21歳)

 若い人たちが内向き志向で日本国内にとどまろうとしがちなのは、海外の魅力を十分に発見できていないからだと思う。世界から見る日本も同じ。日本の魅力をもっと世界に発信すべきだ。そこで、各地の魅力を世界で共有する仕組みを提案したい。

 それぞれの土地の魅力はその土地に住む人が一番わかっている。魅力的な場所や食事の写真、コメントを投稿し、世界の人たちと共有するのだ。情報を地図の形にしてまとめれば、ひと目で日本の魅力を見つけられるようになり、日本を訪れたい人が増えるだろう。SNS感覚で気軽に投稿できる環境をつくり、多様な角度から日本の魅力を発信できるようにする。

 日本が本当のグローバル化を実現するため、国内から海外への情報発信を積極的に行うべきだ。日本の魅力を世界で共有できれば、観光ビジネスの拡大にもつながる。また日本に興味を持ってもらうのと同時に、日本人ももっと海外に興味を持つよう心掛けるべきだろう。

海の上の国際交流

加藤 宏樹(愛知学院大学経営学部4年、21歳)

 船を使った国際交流はどうだろうか。まず、外国について学びたい日本人と、日本を学びたい外国人を募集する。日本人は学びたい国へ船で移動し、その間、その国のことを勉強し、情報交換などをする。到着したら、日本のことを学びたい外国人に現地を案内してもらい、その国について様々な経験を通して学んでもらう。

 次に日本を学びたい外国人と日本人の両グループが一緒に船で日本へ向かう。その間、外国人は日本人に日本のことを教わる。また、グループディスカッションなどを通してお互いの意見や情報を交換し合う。日本に着いたら、外国人が希望する場所を日本人が案内し、実地体験をしてもらい、日本について学んでもらう。その後、帰りの船では外国人に日本について改めて勉強してもらう。

心のこもった学生ガイド

阿部 友厚(東京大学教養学部2年、20歳)

 学生同士の国際交流の手段として、日本の観光案内を提案したい。まず日本の学生は案内する場所を詳しくリサーチし、実際に自分が観光してみて感動するポイントをまとめる。そのうえで案内する相手の出身国についても調べ、本当に喜んでもらえるガイドプランを作り上げる。

 観光はコンペとは異なり、日本の良いところをおしつけるものではない。相手のことをよく知ったうえで、気持ちよく日本の良さを理解してもらおうと努力する、おもてなしの心が必要だ。これはまさに国際交流の本質と言えるのではないか。

 「若いころに訪れた日本のあの場所にもう一度行きたい」と思ってくれる外国人が増えてくれば、お互いの国同士でも精神的な連帯感が強まることになるだろう。同世代の若者が心をこめてガイドすることこそ、「真の国際交流」という難しい課題を最も楽しく手軽に実現できる数少ない手法の一つだと思う。

外国人向け交通費割引制度

高林 宏樹(東京工科大学応用生物学部3年、20歳)

 外国人の友人に日本で行きたい場所を尋ねたら、「雪の降る中の露天風呂」「歴史にゆかりのある城巡り」といった予想外の答えがかえってきた。ただ、そうした場所は国際線の発着する空港や都心から離れている場合が多い。交通費もかかり、行きたくても断念してしまう人が多いのではないか。

 そこで外国人観光客を対象にした交通費の割引制度を提案したい。日本ならではの文化や生活を知りたい外国人がどんどん地方に赴き、その場所で私たち日本人も気付かない「日本らしさ」を体感する。国際交流はもちろん、地域の活性化にもつながるだろう。また多くの外国人が東日本大震災で実際に何があったのかを自分の目で確かめたいと思っている。割引制度を利用して、外国人がたくさん被災地を訪れるようになれば、被災地の復興にも役立つはずだ。

誇るべき自然の中での感動交流

田中 理貴(慶應義塾大学大学院経営管理研究科1年、29歳)

 日本の国際交流を活性化するためには、地方での農業体験などを通じた交流が重要である。近年、海外ではグリーンツーリズムが盛んであり、多くの人々が地方や地域での自然体験に興味を示している。我が国には世界に誇れる自然、気候、風土があるが、国際交流イベントは都市部で開かれることが多い。屋内の一室ではなく、自然が多い地方での農業体験、自然体験で海外の人々と一緒に体を動かし、汗を流して同じ感動を共有することで、より親密な交流が生まれるのではないだろうか。

 グリーンツーリズムという新しい形の交流に興味を持ち、都市部からも多くの参加者が期待できる。海外の人々に対して日本の都市部には無い自然の魅力をアピールする大きなチャンスになるだろう。さらに、地方を訪れる外国人旅行客の増加や、日本の若者が地方地域に興味をもつ良いきっかけともなり、地方活性化にも貢献できるだろう。

日本人に必要な力を

丹羽 勇斗(海陽中等教育学校5年(高校2年)、17歳)

 日本人の国際交流をするための能力を醸成するため、中学、高校の授業にEnglish Discussion(ED) を導入するべきだと考える。海外のプログラムに参加して自分の英語力はもちろん、議論する力が足りていないと感じた。一方、海外の学生は自分の意見をしっかりと持っており、相手の意見を瞬時に理解して意見を述べていた。今の日本人に欠けているこのような能力を国際的な水準に近づけるためにEDを導入すべきだ。

 EDは普段の講義型授業とは別に全て英語で行う。中学校の授業は扱いやすい課題について教師が司会・進行する。そこで基礎的な議論の力を身に付け、高校においてはレベルの高い留学生たちを招いて生徒自身が司会進行して彼らと議論を進める。ここで得た議論する力を武器にビジネスや政治など幅広い分野において日本の国際交流を活性化できると考える。

海外の子供たちとサマースクール

秋元 栞(成蹊小学校3年、9歳)

 国際交流とは、世界の人たちとお友達になることだと思います。学校では、自分を大切にしていると、道ができてお友達が集まると教わりました。私は、もっと日本のすてきなところを探して、日本を大切にしたいと思います。四季があり、自然が豊かで、お寺やお城、山や湖、茶道やお花、おいしいごはんなど、外国の人にしょうかいできるようになりたいです。みんなが、自信を持って「日本」について話せたら、外国の人はもっと日本にきょうみを持って訪れるのではないでしょうか。

 また、国際交流を活発にするためには、小さいころから外国の子供たちと一緒に学んだり、遊んだりすることができると良いと思います。日本に来てもらって、それぞれの国のすてきなところをしょうかいしあったり、遊んだりするサマースクールがあったら行きたいです。そうすれば、大人になって外国へ行くことがもっと身近に感じるのではないかと思います。

Japan Wedding

盛 雅功(立教大学経済学部3年、20歳)

 私は「Japan Wedding」を提案する。日本人がハワイで挙式するのを夢見るように、世界の人々が日本での挙式を夢見てもらえるよう日本の魅力をアピールしたい。日本には優れた食文化やおもてなしの心に加え、四季がある。北海道から沖縄まで、春の桜、夏の海や花火、秋の紅葉と味覚、冬の雪景色など、好みの場所と季節で結婚式を挙げることができるのは日本だけの強みだと思う。

 挙式は一生ものであり、人生において特別な思い出となる。その思い出は招待された人にも広がる。さらに交流サイト(SNS)などの友達メディアを通じて感動が共有され、幸せの連鎖が生まれる。日本が思い出の場所となることで、結婚式を挙げた人の日本への愛着が高まり、友達メディアにより新たな顧客の発掘も可能になるだろう。そして何より、日本のイメージアップにつながると私は考える。

講  評

交流の「質」を高める時

 国際交流の在り方について多くの学生の皆さんから寄せられたアイデアを読んでいて、気が付いたことがあります。机上の空論ではなく未知の世界に飛び込んだ実体験に基づいたアイデアや意見は、やはり説得力があります。当社を含め、様々な形で国際交流に関わる人たちの参考になる意見を寄せていただきました。本当にありがとうございました。

 「商品・案内」の英語表記の意見はその通りですね。英語だけでなく、世界のどんな人が見ても直感的に理解できるデザインを多用した表示があれば訪日外国人だけでなく日本に住む私たちもさらに生活しやすくなるでしょう。道路案内標識の表記も日本語のローマ字つづりから英語表記への改善が始まったばかりでもあり、だれにでもわかりやすい表記が増えることを期待したいです。

 次に「日本の魅力マップ」は元来、情報発信が苦手といわれる日本人にとって本質を突いた意見です。今年、訪日外国人旅行者の数が初めて1000万人を突破しそうな状況ですが、それでも世界一の観光大国フランスの8分の1です。情報発信不足も大きな要因のひとつです。そもそも魅力を知るにはその地域の歴史や文化を知る必要があります。まずは私たちが日本をもっと知ることから始まります。小学生の時代に自らの育つ地域の良さや歴史を学ぶ時間があればいいですね。また、情報発信をインターネットに任せきってしまうのではなく、在外公館や企業などによる直接的な関わりや日本における国際会議の開催なども大きな発信源となります。

 「世界から同好の士が集う『村』をつくる」は、単純な集客アイデアでなく、国際交流を活性化させる取り組みに、単位認定という形で学校を巻き込もうという実効性まで踏み込んだアイデアであり、評価したいです。私自身、学生時代に学校の枠を越えた合宿勉強会に参加し、交流を深めた記憶がこのアイデアを読んでよみがえってきました。世界から若者が集まるとなれば、将来の親日派、知日派の誕生にも役立つでしょう。

 2020年の東京五輪・パラリンピック開催も決まり、誰もが7年後の日本の姿を思い描けるようになりました。都市インフラなど外国の方を多く迎えるにふさわしい「ハード」の質を高めることはもとより、交流という「ソフト」の質も問われることになります。1964年の東京五輪を機に日本社会は大きく変貌を遂げました。今回の開催も、大きな転換点とするチャンスです。新しい日本の主役は、若い皆さんです。皆さん自身が、7年後そしてその先の日本を自ら考え自ら創ることを期待しています。

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