未来面「新しい日本人をつくる。」経営者編第3回(2013年1月7日)

課題

民間の力を生かした地域活性化の具体策は

木川真・ヤマトホールディングス社長

※肩書き等は掲載当時のものです。原稿のため、掲載時とは差異があります

 日本は今、構造変化に直面し、課題が山積しています。その中でも地方の衰退は大きな課題です。国や企業がそれぞれの施策を打ち出していますが、その方向性は必ずしも一致しておらず、明るい見通しは立っていません。地方財政が厳しさを増す中で、地元の産業が元気を失い、高齢化・過疎化も止まらない。このまま手をこまぬいていては、やがて地方の切り捨てにつながりかねません。新しい年の始まりに、この問題について若い読者の皆さんにぜひとも真剣に考えていただきたいと思います。

□国だけでは限界

 地方活性化の担い手を、国や地方自治体だけに任せておく時代ではありません。確かにこれまでは行政が主体となって、地域の生活環境の整備に取り組んできました。しかし、それも限界にあります。サービスレベルの向上や大がかりな施策は多大な支出を伴うため、期待しにくくなりました。一方で、高齢化や過疎化により住民のお困り事(ニーズ)は多様化し、「一律のサービス」が原則の行政だけでは対応できなくなったのが現実です。このままでは地方に暮らす人々の元気がなくなり、農林業や漁業といった1次産業の衰退が加速するなど、地域経済のひずみは一層大きくなるでしょう。

 私は、日本の活性化のためには、今こそ官民が一体となって地域活性化を本気で進めていくことが必要だと考えています。例えば、宅配事業を中核とする私たちヤマトホールディングスは、日本中に毛細血管のように張り巡らされた宅急便のネットワークを、地域のお役に立つ機能の一つとして提供することができます。これを活用して行政や地元企業、あるいは地域住民が協調すれば、買い物支援や高齢者の見守り、防災といった、民間の力を活用した公共サービスの効率化や高度化が実現できるのです。その実験は既に始まっています。

 具体的な一例をご紹介しましょう。岩手県の山間部、西和賀町で実施している「まごころ宅急便」です。一人暮らしの高齢者が対象の、買い物支援と見守りを組み合わせたサービスです。社会福祉協議会や地元スーパーと組み、食料品を高齢者のお宅に届け、その際に健康面などで気付いたことを協議会に伝えます。従来、こうした見回りは民生委員に委ねていましたが、やはり限界があります。しかし、宅急便はお届けするモノがあればどこにでも伺い、玄関口でお客様と対話するのも通常業務の延長上で行えます。ここで大事な点は、地元の協議会やスーパーと、ヤマトグループが連携していることです。当社だけではとてもできません。地元の方々がヤマトグループの機能をプラットフォームとして利用することで、問題解決が図れるのです。

□被災地支援に奮闘

 経営戦略論で有名な米ハーバード大学経営大学院のマイケル・ポーター教授は、CSV(クリエーティング・シェアード・バリュー=共通価値創造)という概念を提唱しています。企業は社会と共有できる価値の創造を通じて、事業戦略と社会活動の一体化を実現すべきという考え方です。東日本大震災に際しては、多くの企業が本業を通して被災地の支援に奮闘しました。従来型のCSR(企業の社会的責任)を進化させたCSVは日本にも自然と根付くでしょう。ただ、そのスピードをさらに加速させなければいけません。そこでは企業同士の連携・協調が重要なポイントになります。

 連携は企業と行政の間にも必要です。地方の問題解決には、企業だけでは乗り越えにくい壁があるからです。規制もその一つです。例えば薬が宅配できれば、在宅の患者さんは大いに助かるでしょう。しかし、今は規制により認められていません。地方の活性化・問題解決につながる面でも、こうした事例がいくつもあります。行政と企業が手を携えて、真剣に考えねばならないことです。

 地域社会が活力を取り戻し、誰でも住みやすくなるにはどうすればいいのか。将来を担う若い読者の皆さんにもぜひ考えていただきたい。あなたは地域活性化のためにどのような会社(事業)を興せばいいと思いますか。それを支えるにはどんな制度、パートナー、経営資源が必要だと思いますか。民間の力をどう活用すれば行政の機能を補完できるでしょうか。民間の主導による地域活性化プランのアイデアを考えてください。

 寄せられた意見の中に、ヤマトホールディングスがお手伝いできるものがあれば、行政や地域の皆さんにお願いして社会実験を行うことも考えます。既成概念にとらわれない、新しい発想のアイデアをお待ちしています。

アイデア

「お父さんバンク」をつくろう

佐々木 珠美(中央大学商学部3年、21歳)

 毎日汗水流して、家庭を、そして日本の経済を支えている「お父さん」がたくさんいる。しかしながら、多くのお父さんが休日や退職後、スーツや作業着を脱ぐのと同時に、知恵や経験、ノウハウをひっそりと家の中に閉じ込めてしまっているのではないだろうか。「お父さんバンク」とは、一人ひとりのお父さんができることを、地域で共有し合う仕組みである。仕事を探すのが「ハローワーク」なら、お父さんバンクは、能力を探す「ハローアビリティー」とも言えるだろう。

 今までどんな仕事をしてきたのか、趣味、そして得意なことをデータベースに登録し、知恵や経験、ノウハウを求める地域の住民とお父さんとをマッチングさせる。例えば子供会の行事で夏祭りを催す時、会場を作るために「日曜大工が得意なお父さん」を、円滑な運営やより多くの集客のために「企画調整や広報活動に携わったことのあるお父さん」を探し、一緒に取り組む。こうした積み重ねが、やがて新たなコミュニティー形成や地域活性化につながるのではないか。「お父さん」ができることを、地域の財産にしよう。

木質バイオマスで雇用創出

松浦 裕介(東京大学大学院新領域創成科学研究科2年、24歳)

 現在、地方で若年人口が減少し、高齢化が進む原因の一つとして、若者の働く場が少ないことが挙げられる。一方、地方の山間部では間伐などの手入れが施されず、多くの山林が荒廃しつつある。この二つの問題に対するアプローチとして、ストーブ用木質バイオマスを生産し、ガソリンスタンドで販売する取り組みを提案したい。

 地方の林業者が生産した木質チップを、地元のガソリンスタンド等で冬季の暖房用燃料として販売する。従来から灯油を販売していた給油所がバイオマスを扱うので、消費者も木質燃料を手に入れやすく、エネルギーの地産地消につながるはずだ。木質チップの生産に若者の労働力を利用すれば、雇用の受け皿となり、若者の定住を促すことができる。公的な支援としては、自治体の施設が化石燃料や電力の代替として木質燃料を率先利用し、利用拡大の端緒をつくればいい。バイオマスを使うストーブの普及を促す施策も必要だろう。

地域限定タクシー乗り放題

山田 佳祐(大阪大学大学院工学研究科2年、24歳)

 タクシー会社の協力のもと、地域の限定区域内で乗り放題のタクシー定期券を発行し、マイカーを持たないお年寄りや学生にお出かけの機会を提供する。定期券は月単位の定額制で、一定の区域内であればどこでも乗り放題にする。コストに難がある場合は、2人以上で相乗りするなど、更に条件をきめ細かく設定すればいい。

 私は4月から鉄道会社で働く予定だ。交通に関する勉強をしてゆく中で、交通弱者の問題や交通と地域活性化の関係を知った。地域に活気をもたらすには人々が積極的に家の外へ出ていける状況をつくるべきであり、マイカーが必須の地方においては、高齢者や学生など交通弱者がスムーズに移動できるシステムが必要であろう。既にグループタクシーのような制度は一部地域でスタートしているが、仕組みとしてまだ不十分だ。タクシーの「定額制+区域内乗り放題」が実現すれば、住民の活動範囲は大きく広がるはずだ。

新技術で仕事を届ける

宮崎 邦洋(東京大学工学部4年、22歳)

 過疎化の大きな原因は地域に仕事がないことだ。そこでヤマト運輸のネットワークを活用し、各地の人たちに、場所に縛られずに好きな仕事をする「ノマド」的な働き方を広げられないだろうか。

 具体的には、インターネットを使って都市から地方へ仕事を発注するプラットフォームをつくる。ネットを使えない人もいるので、各地域の行政に仲介役を担当してもらう。地方の人たちにはまず裁縫のような小さな仕事からお願いし、完成したものをヤマト運輸が都市の発注者に届ける。その際、ヤマト運輸は手数料を受け取る。これなら高齢者も自宅で仕事ができる。

 また、これからは立体の構造物を容易に製作できる3D(3次元)プリンターを使って自宅でもものづくりができるようになり、今は都市でしかできないような仕事もさまざまな地域で可能になるはずだ。自宅での仕事の成果を都市に届ける物流インフラさえあれば、仕事を求めて都市に来た若者が地域に戻ることも期待できる。新しい社会問題の解決には、新しい科学技術で挑戦したい。

配達先は商店街

棚瀬 玲那(早稲田大学政治経済学部2年、21歳)

 宅配便の仕組みを活用して、コミュニティーの崩壊、高齢者らの孤立、シャッター商店街の発生を防ぐ新しいサービスを提案したい。

 例えばヤマト運輸の「宅急便」は、荷物を受取人の自宅まで届けるのが従来の姿だが、新サービスではヤマトはあえて自宅に配達しない。その土地の商店街のような場所に、周辺地域の荷物を指定時間に届け、受取人がその商店街に荷物を受け取りにくるようにする。ヤマトが「ハブ」として人を集め、つなげる役割を担うのだ。もちろん、すべてそうすれば不便でもあるので、例えば週末の1日だけ、「地方マルシェ」といった形で、若者と高齢者が出会える場、地元商店街の商品が集まり、にぎわう場にすればいい。

 商店街へと人やお金を誘導することで、地方にありがちな大型店進出による零細な店舗や企業の淘汰に歯止めをかけられる。地方経済を刺激し、市場の活性化につながるだけでなく、普段は家にいることの多い人々に外出の機会や外の人々との交わりの場を提供することにもなる。経済面だけでなく、コミュニティー対策としても有効ではないか。

CMで伝統工芸を発信

室 寛和(立命館大学大学院理工学研究科博士前期課程2年、24歳)

 焼き物や塗り物に代表される伝統技能、工芸品が日本各所に存在する。しかし、なり手、作り手の不足が問題である。原因は伝統技能、工芸品の存在をその地域以外の人が知らないからだと考える。そこで、テレビCMによる伝統技能、工芸品の紹介サービスを提案したい。

 ただ単に伝統技能、工芸品の紹介CMを放映すると、企業のメリットがない。そのためCMの背景として、伝統技能に取り組む様子や伝統工芸品を作製する様子を映してはどうか。例えば、自動車メーカーのCMで、自動車が走る背景を伝統工芸品の工房が連なる場所にするといったイメージである。

 この取り組みにより、日本各所の伝統技能、工芸品の存在を世界中に知らせることができる。多くの人が伝統技能、工芸品の存在を知ることで、その技能や工芸品に興味を持つ人も現れる。この興味を持った人々が実際に地域に出向き、なり手、作り手となることで地域活性化につながる。

人の配達

三和 秀平(横浜市立大学国際総合科学部4年、22歳)

 地域活性化のためには地域住民同士のつながりを強め、問題を地域住民で解決する必要がある。企業はその住民のつながりを強めるための機会を提供する。その具体的な方法として私は、宅配会社が行う人の配達という策を考える。

 人の配達といっても人を直接届けるのではなく、個人のニーズに沿った地域住民を紹介する。企業は地域住民のニーズや、そのニーズに応えることのできる人材を把握する。そして、宅配業務を行いつつ住民が何を必要としているのかを確認し、必要であればそれに応えることのできる人材を紹介する。

 話し相手が欲しいという人がいれば、同じく話し相手が欲しい人を配達する。専門的な知識が必要ならば、その知識を持った人を配達する。ニーズに応えられる人材がいなければ、そのような人材を育成する。このような活動が、地域のつながりを強め、同時に地域の問題解決へとつながるだろう。

子供が買い物代行

鈴木 志穂(中京大学総合政策学部2年、19歳)

 地域交流の機会は減ってきている。2012年3月時点では1時間に3人の高齢者が孤独死で亡くなっているという数字もあるそうだ。地域と個人をつなぐものを強化していかないと、ますます地域と個人は離れていくことになるだろう。特に高齢者と子供の交流が少ないと感じており、子供が高齢者の代わりに買い物をする制度を提案したい。

 子供とは小学生、中学生だ。高齢者から買い物リストを受け取り、商店街で買い物をして高齢者に届けると報酬として商店街で使えるお菓子券が渡される。メリットは高齢者が子供と交流できる点で、子供にとっても高齢者との交流によってお菓子券という報酬がもらえる。そして商店街にとっては、買い物をしてもらえることや、普段商店街に出向かなかった子供たちを商店街に呼ぶことができる。地域の人々と子供の交流の場が生まれ、商店街の活性化にもつながるだろう。

日本にバカンスを

渡辺 将吾(慶応義塾大学大学院経営管理研究科修士課程1年、29歳)

 地域活性化のために長期休暇専門の旅行会社を興したい。私自身が伊豆半島のひなびた漁村で生まれ育ったこともあり、地域社会の衰退に危機意識を持っている。長期滞在によって地域社会の魅力を知ってもらえれば、必ず移住したいという人々で地域が活性化すると信じている。

 フランスでは連続5週間のバカンスが法律で認められているが、日本でも国内に限り連続2週間の長期休暇を認める。長期休暇制度が導入されれば、地域社会での体験型旅行に注目が集まるだろう。例えば漁師さんに教わりながら、海産物を漁獲する感動を知る。なかには、その地域や職業に魅力を感じて移住を希望する人が出てくるに違いない。地域社会には排他的な印象もある。そこで現地の居住者をパートナーとして地域社会全体で移住を後押しする仕組みづくりも不可欠だ。

 宿泊施設には空き家を利用し、移住希望者には物件を紹介することになるだろう。そのため旅行会社には、不動産管理のノウハウも求められる。

学校給食を地元の人に

田中 真穂(明治学院大学国際学部2年、20歳)

 地元のお母さんが作る学校給食を、地元に住んでいるあらゆる人々が利用できるような仕組みを取り入れたい。一般の飲食店にとどまらず学校給食でも、民間委託の導入などに伴い、コストダウンの要請から輸入食材の利用が進んでいる。結果、今日の日本では、「どの」食材が「どこで」生産されているかをまったく把握していない暮らしが一般的になってしまった。そんな時代だからこそ、社会人や一人暮らしのお年寄りらが、地産地消の給食を食べることを通じて地元食材に誇りや愛着を持ってほしいと考える。

 具体的には、各地に独自の給食センターを置き、そこで地元農家や漁業者らが卸す食材を地元の人々が調理するという制度を整える。「本日の献立」紹介には必ず、作り手や食材の生産者の情報も取り入れ、生産者と消費者の心のつながりも忘れないことも大切だ。この学校給食制度を通じて人々が地元食材に誇りを持てば、地元の第1次産業活性化につながるような社会が必ず再来すると信じる。

ソーシャル・ビジネスで地域活性化

鈴木 美里(明星大学経済学部3年、21歳)

 地域を活性化するために一番有力なのは、ソーシャル・ビジネスだと考える。今日の日本で携帯電話やスマートフォンを持っていない人は少なく、ネット人口は増加する一方だ。そこで、身近なSNS(交流サイト)を利用したソーシャル・ビジネスを使い、各地域へ興味・関心のある人々を増やしていけばどうだろうか。

 例えば、観光地の駅や名所にQRコードを設置し、それをバーコードリーダーで読み取り、フェイスブックやツイッターなどのSNSに「○○(場所)を訪れた」という情報をアップロードすることでポイントが加算される仕組みを作る。ポイントはウェブマネーとして利用できるようにすれば、旅行もできてポイントも手に入り一石二鳥ではないだろうか。SNSのつながりから、アップロードされた情報を見て興味を持つ人もいるだろう。このように単に旅行だけでなく、それ以外のメリットをソーシャル・ビジネスによって付加すると、地域に足を運ぶ人々が増加するのではないか。

本を介して交流の輪

一玖 遥(近畿大学文芸学部3年、21歳)

 地域を活性化するには、外から人を呼び込むことも重要だ。その土地の魅力を伝えれば「訪れたい」と思う人も現れる。本はこうした情報の伝達に大きな役割を担う。各地の人々がお互いに、本を介して地域を紹介しあえば、全国で人の交流が活発になるのではないか。

 そこで考えられるのが、高齢者の買い物支援と見守りを組み合わせた「まごころ宅急便」の活用だ。まず配達する人が高齢者から、孫が住んでいる地域や自分が旅行したことのある都道府県について聞き取りする。ここで聞き取った様々な地域に関連する本と、その高齢者が住んでいる地元に関する本を選び、お薦め書籍リストを作る。この一覧表を買い物支援の際に配り、お客が興味を持った本をレンタルしたり販売したりする。そうすれば住んでいる地域の魅力を再発見し、誰かの身内が住む地域への興味もわく。全国でこうした取り組みを行えば、その地域に住む人同士のつながりや、各地域間の人の行き来が生まれるのではないか。

 すでに京阪奈情報教育出版が奈良をテーマにした文庫シリーズを販売するなど、本を通じて地域の魅力を伝える試みは始まっている。本をツールに人のリレーがつながれば、交流の輪は着実に広がるだろう。

老人ホームへの入り口戦略

小林 尚登(立教大学経営学部経営学科2年、21歳)

 私が考えたのは、地元老人ホームとヤマトホールディングスの提携です。コラムで木川社長が述べていた、「日本中に毛細血管のように張り巡らされた宅急便のネットワーク」というヤマト独自の情報網を生かした戦略です。現在地方の過疎化は進行しています。同時に住民の高齢化も進んでいます。そういう地域では老人ホームの需要も増加しています。そこで地元老人ホームと協力、老人ホームへの勧誘を行います。お年寄りのなかには老人ホームの情報が聞きたくても聞けない人が多数います。情報の電子化により情報がウェブ媒体を経由しなくては自分の知りたい情報が手に入らない現代のシステムの問題点でしょう。そこでヤマト運輸職員が実際にお年寄りと会い、1対1、つまり人と人が直に触れ合うことにより、お年寄りに正確に情報がいきわたることができると思います。

消費者が投資する「ふるさと宅配便」

国府田 樹(大阪大学大学院経済学研究科1年、23歳)

 私は地域活性化の具体策として、「Fund*Findふるさと便」を提案する。これは地方の独自色を売りにした「ふるさと宅配便」を企画し、消費者からの投資で商品化し宅配する、という事業である。従来のふるさと宅配便は、パッケージ化された商品を定価で売り出す形式をとっていたが、これに消費者からの投資という観点を取り入れたい。

 まず、都道府県や市町村単位で地場産業が一体となり、宅配便の内容を企画する。次に、それを消費者に向けて発表し、1口いくらとして投資を募る。目標金額を決めて達成できれば、商品化したものを消費者に宅配する、という流れを考えている。宅配便の中身は、よくある生鮮食品や加工品だけでなく、温泉の割引券やバスの1日乗り放題券、体験ツアーへの参加権など、地域それぞれが特色を出せるように幅を持たせる。また、工夫次第で地域のブランド力強化や、直接の観光客の増加につなげることができる。

講  評

「既成概念を取り払い、何が必要か見つけよう」

 地域活性化の実現には、民間の力をいかしながら、地域行政とも連携することが重要な鍵となります。今回、学生の皆さんから寄せられたアイデアは、民と官との連携意識が薄いために少し「小粒だったかな」という印象をもちました。でも、地域活性化に求められる切り口、着眼点などは参考になる点もあり、もうひとひねりすれば広がりと深みのあるアイデアとして磨かれ、事業化の可能性は高まるはずです。

 例えば「お父さんバンク」。当社の役員にもこのアイデアを諮ったところ得票数は一番でした。定年という一律の基準だけで、社会を支えてきたせっかくの知識、技術、経験まで定年を迎えさせてしまうのは極めてもったいない話です。お父さんたちは地域社会にお役に立ちたい気持ちを強く持っていても、会社人間だったために地域デビューが苦手なはずです。そこで行政の出番となります。行政が主体となり同じ分野の知識や技術を持つお父さんに呼びかけて組織化します。住民の不便さを吸い上げ、お父さんの知識や技術をマッチングする機能を持たせます。地域ごとにバンクを作り、情報交換することで地域社会にある共通の課題も見えてくるでしょう。お父さんたちが「地域コンシェルジュ」として活躍できる舞台が整うと面白いですね。

 「木質バイオマス」は林業国であるはずの日本の産業復活と雇用創出の観点から1つの解決策を示しています。林業が朽ちていく中で自然環境の保全にもつながるほか、新技術の活用、地場産業の振興も期待でき、国策にかなう優れたアイデアです。

 「地域限定タクシー」は的を射たアイデアですが、残念ながらタクシー会社が採算のとれる事業として取り組むのは困難でしょう。でも視点を変え、コミュニティーバスやデイケアサービスで運行している車両の活用や、車両に荷物も載せたり、宅急便の業務を重ねたりすることで事業化の道が開けるかもしれません。ただ、鉄道や飛行機は人と荷物を同時に運べますが、車は法律で認められていません。そこで、規制緩和もしくは撤廃が必要になります。

 地域活性化は1つの企業だけで解を見付けるのが難しく、多くの関係者を巻き込むことが大切です。そして、既成概念を取り払い、机上論ではなく本当に世の中に必要とされているものを見つける洞察力が求められます。これから社会に出て未来を担う皆さんには、社会の枠組みにとらわれない思考を持ち続けてほしいと思います。

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