未来面「経営者と話そう。」経営者編第1回(2014年8月4日)

課題

社会が期待するコンビニの役割は

鈴木敏文セブン&アイ・ホールディングス会長

※肩書き等は掲載当時のものです。原稿のため、掲載時とは差異があります

<鈴木さんの主張>

●「便利さとは何か」 答えは時代とともに変わる

●食の外部化を予想、おにぎり販売決断

●消費者が考えもしない商品を生み出す

 「セブンイレブン」の日本1号店を開いて今年で40年。スーパーが大量出店していた当時、店舗面積がわずか100平方メートル強の小さな店が成り立つのかと誰もが否定的でした。しかし、セブンイレブンは時代背景にある「便利さとは何か」を追求し、その時代の変化に合う品ぞろえやサービスを提供し、そうした見方を覆し続けてきました。

 例えば創業後まもなく販売を始めたおにぎり、お弁当。ファミリーレストランなど外食が定着してきた時代背景を見て、取り扱いを決めました。最初は1日に2~3個しか売れませんでしたが、食の外部化が時代の流れだと販売し続け、おにぎりは年間19億個近くを売る主力商材になりました。

 新しく登場する商品がある一方、いつしか消えていく商品も多くあります。電気のヒューズもその一つ。40年前は家庭の電気回路を保護する大切な存在でした。夜にヒューズが飛ぶと家の中は真っ暗になり、電気店の閉店時間後はコンビニで買うしかなかったのです。1年でセブンイレブンに並ぶ商品の7割(約2000品目)が入れ替わるほど世の中の変化は激しく、お客様の要求も変化します。でも、棚から消えた商品を思い出すのは難しいものですね。

 実は、セブンイレブンに並ぶ商品やサービスの多くはお客様の声から生まれたわけではありません。大ヒットした「セブンカフェ」や「金の食パン」もそうです。お客様は「100円でいれたてのおいしいコーヒーを飲みたい」とストレートには言いません。

 ヒット商品を生むには、お客様が考えてもいない商品やサービスに挑戦し続けること以外にありません。今までにない価値を示せるか。お客様にどんな提案をしたら受け入れていただけるか。言うのは簡単ですが、やり続けるのは大変な努力が必要です。

 店舗とネットを融合した「オムニチャネル」に取り組むのも、ネット社会の変化の速さに対応して「店の小さなセブンイレブンで何が可能か」を考えたからです。ファッション、玩具、本、宝飾品など単店では品ぞろえが難しい商品を届けられます。

 数年前、コンビニ業界は飽和状態だと言う人もいましたが、私は一度もそう感じたことはありません。世の中が変化し続ける以上、求められる商品やサービスも変わり、その変化に対応し続ける限りセブンイレブンは成長すると確信しています。全国のセブンイレブンに年間で延べ63億人が来店します。50歳以上のお客様も増え、シニア社会を支える店作りにも取り組んでいます。

 おそらく世の中の変化は今まで以上に急速に進むでしょう。そこで読者の皆さんにお聞きしたい。セブンイレブンは今後どのような姿になると思いますか。社会の機能の一つとなったセブンイレブンに何を期待しますか。皆さんの声をお聞かせください。

アイデア

新時代の玄関口

渡辺 秀樹(会社員、27歳)

 目まぐるしく商品が変わり、何となく雰囲気も新鮮になるコンビニエンスストア。世の流行には、まずネットで触れることが多いが、それが想像の域を出ないのは目の前に実物がないから。

 コンビニに行くたび、新しい何かに出合う。「あ、今これが売れてるんだ。こんな飲み物もあるのか」。早々に消える商品かもしれないが、目の前にあること、それが大事。コンビニは数平方メートルの広さで世界を具現化する、新時代への玄関口のような気がする。

買い物弱者の味方

小板橋 克志(中央大学商学部1年、19歳)

 迎えつつある時代の流れは、今まで見てきたものと大きく異なると思う。若年層の勢いによって変化した時代から、高齢者の人口増加によって変化する時代へ。それでも、その時代に問題を解決できるのは唯一、やはりコンビニエンスストアしかないとも考える。店舗面積が小さいまま、買い物弱者に最も近くいられるのはコンビニしかない。より地域密着型の店に変化していき、地域コミュニティーの拠点となることが必要不可欠のように考える。

全店を行政窓口化

小菅 秀太(公務員、28歳)

 植物の研究はどうか。コケなどで石油やガソリンに近い液体を作る研究が進むが、これに力を注げば日本は石油輸入に頼らずにエネルギーを安定生産しうる。植物の光合成を可能にする組織をアスファルトなどに利用して温暖化を解決する一歩になるかもしれない。もう一例が竹。竹の繊維は軽くて丈夫で、ビニールやプラスチックなどに代わる物質となりうる。身近な植物をもっと研究・利用すれば、より地球に優しくできるのではないか。

以上が紙面掲載のアイデア

コンビニ道案内

小平 早紀(中央大学商学部3年、21歳)

 全国いたるところにあるコンビニが「道案内」の役割を担うことを提案したい。周辺地域の地図や目的地までの行き方、おすすめスポット(レストランやカフェ、雑貨店など)を有料で印刷できたり、無線LAN経由でスマートフォン(スマホ)に飛ばせるようにしたりする。

 これらの情報は自治体や商店街など地域の人々から寄せてもらうほか、来店客のおすすめ情報も盛り込む。常に新しい情報に更新していく。こうすれば日々進化するコンビニの特徴ともマッチする。24時間営業だから、欲しい情報はいつでも入手できる。観光案内所ではこうはいかない。

 訪日外国人も増えており、日本語だけでなく、主な外国語の翻訳機能を設けることも欠かせない。東京オリンピックも控え、日本を訪れる外国人はますます増え、道案内のニーズもより高まる。そうなれば、日本のコンビニは世界中から一層注目されるだろう。

クリーンエネルギーの供給拠点へ

樋口 一郎(43) 会社員

 コンビニエンスストアがエコカーのエネルギー供給拠点となることを望む。燃料電池車の水素ステーションも考えたが、ややハードルが高いかもしれないので、まずは電気自動車(EV)向けで。EVはクリーンでよいのだが、走行距離が短いという欠点がある。高価な大容量電池を積むより、充電したい時にできるように利便性を高めたほうがEVの普及には近道だと思う。コンビニで買い物をしている間に充電できれば、とても便利だろう。

他国の情勢を自分のこととして考える

柴田 亜樹子(南山大学外国語学部1年、18歳)

 私たちがこれからの地球のためにすべきことは多様性の許容である。我々は自国の災害や事件のことには目を向けても他国の情勢を他人事のように見てしまいがちだ。たとえば病気の人に対する差別。アフリカを中心にエボラ出血熱が猛威を振るっているが、現地では感染者のいる病棟が襲撃にあったというニュースを耳にした。いま起こっている問題を「もし自分だったら」と考えることが大切ではないだろうか。たとえすべては理解できなくても、自分とは違う人々の立場をイメージする姿勢をもちたいと思う。

何でも買える便利屋さん

蜂谷 成一(元会社員、69歳)

 コンビニエンスストアの役割は社会を構成する人の変化に適応しなければならない。これからは高齢消費者が増加する。店舗数からみても、今やコンビニは消費者に最も近い小売店だ。高齢者は高齢化とともに買い物が困難になってくる。それをカバーする利便性が求められる。

 便利さとは最寄りで自分の欲しいものが簡単かつすぐに手に入る事なのだ。人間の生活に必要な教養・娯楽・衣・食・住の、日常的に必要なすべての物が対象になる。店内では持ち帰り可能な購入頻度の高い商品に限定されるが、買われる頻度の低い物、高級品、大型品などはネット販売で扱い、宅配すべきだろう。また週ごとの「御用聞き販売」は高齢者に喜ばれよう。小売り以外では、行政の代行や各種料金徴収代行および家電品やインフラ設備の修理取り次ぎなどへと業務を拡大していただければありがたい。要は、消費者(特に高齢者)にとって何でも買える便利屋さんになってほしいのである。

「オモニ」チャネル

松川 大輔(慶応義塾大学大学院経営管理研究科修士1年、32歳)

 私にとってコンビニは生活になくてはならない存在。独身時代には毎食のようにお世話になり、食生活を支えてもらった。ただ、一つだけ気になっていたのが栄養バランスの悪さだ。偏った食品ばかりを選んだ私が悪いのだが、つい食べたいものばかり選んでしまい、いつも同じようなメニューになってしまっていた。無精な私には栄養バランスを考えて買い物をすることはできない。

 そこで客の日々の購買履歴から栄養バランスのよいメニューを薦めてくれるサービスはどうだろうか。個人の好みもわかった上で、栄養バランスを整えるプラスワンのメニュー紹介があればいい。カロリー管理もしてもらえたらなおよい。子供の健康管理を気遣う母親のような存在。つまり「オモニ(韓国語で母)」チャネルとなることがコンビニの次の役割ではないだろうか。

人と人をつなぐ場を作る

江藤 一彰(会社員、38歳)

 シニア社会、独身者の増加を背景に考えてみた。自分の住む地域の近くに相談できる人や場所があったら安心だと考える。ネット環境が発達してコミュニケーションを行う手段は増えてきたが,やはりフェース・トゥ・フェースでのコミュニケーションが安心できる。高齢者であればなおさらだと考える。このため「コンシェルジュサービス」をコンビニエンスストアが提供できないだろうか。

 顧客の要望を聞き、それをかなえるサービスを紹介する。例えば「自宅の冷房の調子が悪いがどうすればよいか?」という要望があったら、コンビニが修理業者を手配するというイメージである。世の中には誰に相談していいか分からないため、困っている人たちは多いと思う。それを解決するきっかけを地域に密着しているコンビニが提供できれば、地域は活性化される。コンビニが人と人をつなぐ場を提供することで、地域に「いい生活」と「いい体験」を提供できるだろう。

次は病院を手軽で便利に

江藤 香織(会社員、38歳)

 高齢化社会を背景に考えると地方の医療問題が頭に浮かぶ。地方における身近な診療所は減っており、診察には自宅から遠く離れた病院に行くことになる。診察の内容は様々であるが、診察結果を後日聞いたり、診察後の状況を報告したりするなど、病院まで行かなくても遠隔医療により対応できると便利だ。電話ボックスのようなブースで、テレビ電話や患者の情報を計測する機器を備えた設備があれば、病院に行かなくても遠隔で医者から問診を受けたり、医者から診察結果を聞いたりすることができる。

 そのようなブースをコンビニエンスストアに設置することができれば、地域の身近な診療所になる。処方箋もブースで発行すれば、近くの薬局で薬も受け取ることができる。nanaco(ナナコ)カードの購入履歴から、食事改善の提案をして病気を予防することも可能だ。地域に広がるコンビニのインフラを活用することが地方における医療問題解決につながるのではないだろうか。

「便利だから入る」を超える

山本 哲朗(会社経営、66歳)

 差し迫った必要品を求めて飛び込むコンビニではなく、そのコミュニティーの生活者にとって、便利さを超えて、地域(さらには全国)のコンシェルジュサービス、コミュニケーションサービスを受けられる「リアルな場」へ。

 昔、駅にあった「伝言板」を進化させ、地域限定だけでなく全国・世界へ発信可能にする。かつての電話帳的な身近な生活全般の情報提供から、求人募集・サービス募集、お困り相談のほか、ビジネス分野では「こんな物を作れる会社、探しています」といった問いかけを用意したタブレット(多機能携帯端末)に必要情報を入力して、地域あるいはセブンネットを生かした全国レベルでマッチングを行い(中国アリババのリアルビジネス版)、地域ビジネスの活性化、埋もれた商品の発掘にも貢献する。

 新たなアライメントを下支えする社会インフラとして、とにかくコンビニに行けば、何かが見つかる、価値がある、ついでにショッピングもする――。こんなコンビニなら、うれしい!

MYコンビニにワクワク

高原 紀子(主婦・アトリエ主宰、45歳))

 昨年、セブンイレブンが「オムニチャネル化」を推進していくという新聞記事を目にした時、これまでのメーカー→コンビニ→消費者という「線」のイメージだった流れが、円を描くような循環型のビジネスモデルになるような予感がした。オムニチャネル化により、私たち消費者の購買履歴データがかつてないほどの量でコンビニに蓄積され、それが店内の商品構成からメーカーの商品開発にまでより速く反映されるようになると思うからだ。そうなると顧客の嗜好に合わせる形で店舗間に個性が出てくるのではないだろうか。

 全国に「ご当地コンビニ」が出てきたら面白い。どこでも同じ商品を24時間、老若男女に提供してきた“平等社会”のためのインフラだったコンビニが、より個性的になり、消費者が行きつけの「MYコンビニ」を持つという未来像を期待している。

利点を生かしてエネルギー販売を

片岡 大輔(会社員、25歳)

 コンビニエンスストアはセブンイレブンだけで全国1万店超。こうした店舗網を持つ強みを生かし、店舗に電気自動車(EV)の充電装置を設置してはどうか。コンビニがエネルギー分野で社会インフラの役割を担うのだ。

 日本の自動車メーカーは電気自動車の開発や普及に積極的だが、一方で全国的に充電装置を備えた社会インフラは不足しており、電気自動車の普及に向けた課題となっている。コンビニに電気自動車の充電装置を設置し、電気を販売し、この課題の解決に率先して取り組むのだ。各店舗の駐車場にセルフ式の充電スタンドを設け、ドライバーが気軽に利用できるようにする。様々な商品を販売しているコンビニだが、まだエネルギーは取り扱っていない。ビジネス的にもエネルギー分野は今後の成長産業であり、需要も多く見込める。

災害時の救援活動の拠点として

小林裕太朗(聖光学院中学校3年、15歳)

 災害が多い日本。発生すると生活用品や食料・飲料などの物資が不足するほか、地方の農山村部では集落などの孤立も起こりがちで、必要な物資があっても外にいる人に伝わらないことがよくある。そんな時にコンビニエンスストアは救援活動の拠点となりうるのではないか。

 コンビニの店員が避難所へ出向き、物資を渡す。そのときに必要な物資を調べ、店舗から役場や本部へ、また近隣にある他のコンビニにそれを伝える。必要な物資が他の店舗にあった場合はそれを融通してもらい、避難所へ運ぶ。情報が錯綜(さくそう)しがちな災害直後の中で、こうした活動は救援の質を高めるだろう。避難者や行方不明者の情報を店舗間または役場との間で共有することも可能だ。地方にも比較的店舗が多く、物資が大量にあり、強い連絡網を持っているコンビニの強みを生かすことができる。

届けるサービスを充実させる

小林紘子(中央大学商学部3年、20歳)

 高齢化率がますます上昇する今後、コンビニエンスストアは店舗数を減らして、電子商取引(EC)に特化した形態にすればよいのではないか。全国各地にお年寄りが増加してフットワークも重くなる中、店を構えて客を得ることは困難になるかもしれない。

 そこで「届けに行く」という姿勢が重要になる。小口取引であってもコンビニが個々の家に届けに行く。また、トラック販売なども面白いかもしれない。おのおのの地域へ商品や商品カタログを積んだトラックが出向き、周辺住民を顧客として獲得する。顧客にとっても家の近くに何でも手に入る環境があるのはとても便利だと思う。

 取扱商品も現在の食品中心から衣服・家電・医療品まで多岐にわたる商品を取りそろえる。「便利=そこに行けばすべての用事が済んでしまう」ような店が実現することを期待している。

講  評

構造変化への強いメッセージ

 コンビニエンスストアの売り場面積は平均100平方メートル強。とても小さいのに、その潜在力に寄せる皆様の期待は大きく、改めて身の引き締まる思いです。皆さんが日本の未来に危機感を抱いていることも伝わってきました。もはや過去からの延長線上でビジネスを組み立てても、新たな社会的問題に対応することは不可能です。「セブンイレブンも思い切った構造変化をしろ!」との強いメッセージと受け取りました。

 その構造変化を指摘した「新時代の玄関口」。これはまさにセブン&アイ・ホールディングスが真剣に取り組むネットと店舗を融合したオムニチャネルの考えの一つだと思います。セブンイレブンの店舗を百貨店(そごう・西武)、専門店(赤ちゃん本舗、ロフトなど)などへの玄関口と捉え、ネットで注文してセブンイレブンの店舗で受け取る仕組みは、仕事のやり方を抜本的に変えないと実現できません。

 投稿で最も多かったのが高齢者を意識したサービスへの期待でした。約40年前の創業時、独身や若い一人暮らし男性が主なお客様だった時代から、「買い物弱者の味方」はまさに時代の要請です。約1万7000店あるセブンイレブンは生活者に最も近い存在です。売るだけではなく届けることも事業領域になっていくでしょう。

 「全店を行政窓口化」などのように行政サービスへの要望も目立ちました。行政機能の一部を担うのは、それだけ責任が重くなります。IT(情報技術)を活用して正確で迅速な処理を実現し、店舗の作業性を高め、お待たせすることなくご利用いただく。これがイノベーションです。期待に応えるべく、改めて皆さんが思いもしない商品やサービスを提供したいと思います。

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