未来面「経営者と話そう。」経営者編第12回(2015年7月6日)

課題

尊敬される日本とはどのような国だと思いますか

大塚陸毅・JR東日本相談役

※肩書き等は掲載当時のものです。原稿のため、掲載時とは差異があります

<大塚さんの主張>

●生活の質を磨くことで尊敬される国になれる

●科学技術・貿易・観光の3つの柱を推進しよう

●変えていこうとする志があれば社会が動く

●若い人たちが夢描ける環境つくる

若い人たちが夢描ける環境つくる

 読者の皆さん、特に若い人たちは、この日本をどのような国にしたいと考えていますか。これからの日本を創っていくのは皆さんであり、自分のこととして考えなくてはいけません。一方、人生の先輩たちは、経験を踏まえて、どんな国にすべきだと考えていますか。若者がやりたいことができる、描きたい夢が描けるような環境づくりが大切です。

 目下、日本の将来を明るく展望するものは多くはありません。人口減少・超高齢化、財政問題、地方衰退など多くの難題に直面する課題先進国ともいわれるなかで、経済大国としてのプレゼンスも低下していくでしょう。経済協力開発機構の報告書では「今後50年で世界のパワーバランスが劇的に変わる」と指摘し、新興国の躍進を背景に世界に占める日本の国内総生産(GDP)は2060年には3.2%と、11年に比べ半減すると推計されます。

 一方、海外からは日本のイメージについて質の良さを挙げて評価する人が多いのをご存じでしょうか。米フューチャーブランドが毎年実施する「国別ブランド評価ランキング」(2014~15年度)では、日本が初めて総合1位に輝きました。「日本を一言で言い表すと」という質問ではテクノロジー、文化、食べ物、友好的、アニメ、安全、安心、美しいといった回答が目立ちました。

 数量による経済力で国のプレゼンスを取り戻すのは難しいかもしれませんが、有形無形の質を磨き上げることで今まで以上に注目され、信頼される国になるのは可能だと、私は確信しています。「尊敬される国を目指そう」と言ったほうがいいかもしれません。

海外からの印象は「質の良い国」

 その方策として私の持論は科学技術立国、貿易立国、観光立国の「3つの立国」の推進です。日本人は自然科学の分野でノーベル賞をいくつも受賞しており、科学技術立国の素地は十分にあります。ロボット技術は日本のお家芸で、技術に裏打ちされた日本製品を世界中で利活用してもらうことにもつながります。また観光の持つ潜在力は経済力だけではありません。交流が活発になれば互いの理解も深まり、不毛な争いもなくなるでしょう。そして直面する多くの難題を解決し、質を磨くことで、諸外国のお手本となれるはずです。

 この未来面で私は2010年から観光をキーワードにして読者から多彩なアイデアを寄せてもらいました。5年前といえば訪日外国人ブームはなく、観光を単なる物見遊山と捉える風潮がありました。しかし、今ではどうでしょう。もはや誰もが官民挙げた観光振興の取り組みが日本経済を下支えしていると認識しています。わずか数年で訪日外国人が旅行を楽しむ姿を多く見かけるようになりました。

 やってみよう、変えていこうとする志があれば社会は動いていくと感じました。今回はもっと幅広い分野について皆さんに問いかけたいと思います。すばらしいアイデアを待っています。

アイデア

異文化への寛容さ

野口 裕太(上越教育大学大学院1年、31歳)

 科学技術、貿易、観光の「3つの立国」の質を支えるのは個人である。人としての力強さ、魅力を高める必要がある。その点、留学志望の若者の減少は問題だ。今や一国では存続せず、他国と交流し相互に助け合う時代。異文化の中で自己を研さんする必要がある。日本も門戸を大きく開き、異文化を受容する度量が求められる。そんな社会を支える個人もまた、異文化に寛容であると同時に自己を持つ「和而不同(和して同ぜず)」を体現すべきだ。

災害の国際救助大国

宮崎 恭輔(海陽学園海陽中等教育学校高校1年、15歳)

 日本を「ボランティア大国」にしよう。「地震大国」であり、東日本大震災の記憶もまだ新しいが、そのつらい経験によって災害救助や避難生活、復興支援のノウハウを蓄積したのも事実だ。英テレビ番組「サンダーバード」に登場する「国際救助隊」の創設を提案したい。蓄積したノウハウや優れた装備、高い技術力、きめ細かな対応、強い衛生意識を生かし、他国の被災地でいち早く支援活動ができれば、尊敬される日本が浮かび上がると思う。

自ら尊敬「できる」国

柳沢 実佳(早稲田大学政治経済学部4年、22歳)

 尊敬「される」日本とは国民自らが尊敬「できる」日本だ。訪日客が増え、日本が評価されるのはうれしい。だが、外国人の目に映る「尊敬される日本」に浸ることで、国民が自らのこととして考えねばならない大事なことから目を背けてはいないか。原発や安全保障問題など、自らが尊敬「できる」日本になるため当事者意識を持ち考えるべき事柄は多い。真の意味で日本人自身が尊敬できる日本に向け、この国の未来を真剣に考えるべき時だ。

以上が紙面掲載のアイデア

スペックセンター・日本

永野 琢磨(会社員、54歳)

 各国に認められている日本スペック(仕様)といえば「テクノロジー、文化、食べ物、友好的、アニメ、安全、安心、美しい」などが挙げられる。であれば、日本がスペックセンターとなり、各国の文化や宗教には触れない範囲で、これらの分野でビジネスとしてのコンサルタント的な役割を果たすことで、世界のクオリティーを上げる貢献ができるのではないか。各国の足りない部分を補うアドバイスを行うことで、お互いが尊敬出来る関係が築けると思う。

課題先進国として世界に模範を

青木祐太(東京工業大学大学院理工学研究科、28歳)

 日本は急激な少子高齢化に伴う経済縮小や社会保障負担増大など、様々な課題を抱える課題先進国だ。状況は厳しいが、これらの課題を日本が先駆けて解決することで、同様の課題に続いて直面する先進国各国にとって良きモデルとなるだろう。人口を増やすことでの問題解決は持続可能ではなく、単なる問題の先送りにすぎない。それよりも人口増や経済規模拡大に頼ることなく豊かな社会を築くことができれば、それこそ世界初の偉業だ。そのために必要なのがライフスタイルや社会システムの変革といった、ハード・ソフト両面を含めた画期的なイノベーションだ。今までにない斬新な発想と、その具体化を支える科学技術を活用し、人口増加に頼らない新しいライフスタイル・社会システムの実現を目指すべきだ。

世界をつなぐ日本

山下 拓真(海陽学園海陽中等教育学校中学1年、12歳)

 最近、イスラム教やヒンズー教など、いろいろな宗教を信仰する人々が日本を訪れるようになった。日本人の多くは「八百万の神」という考え方のためか、他の宗教に寛容でそれらを敬う傾向にある。世界の紛争の多くは宗教が関係していると学んだ。宗教が違う隣接国同士が、習慣の違いによって対立し、紛争、あるいは戦争へと発展していくことが多い。日本は特別な立場を利用して宗教間の橋渡しができるようになれば、尊敬される日本が生まれるのではないか。

伝統文化を守る

松江 智帆(明治学院大学法学部1年、18歳)

 日本人が誇れることの一つに「伝統を大事にすること」がある。物理的にも精神的にも歴史あるものを大切にし、何世代もかけて守り続ける。その努力は世界遺産としても残っている。最近は明治日本の産業革命遺産が話題だ。この遺産については私たちの生活を豊かにしたという良い歴史の一方、強制労働や戦争に関わったのではないかという声も聞く。しかし、日本は歴史のマイナス面も含めて後世や海外に伝えていこうとしている。また、無形文化遺産に登録された和食は、味の繊細さや見た目の美しさが海外で高く評価されている。海外の方々には和食を通じて様々な伝統文化を味わってほしい。こうした文化遺産を通じ、日本人の伝統を大切にする気持ちを海外に伝えられたらいい。

キレイな国

小池 美喜(産業能率大学経営学部3年、20歳)

 日本を訪れた外国人は必ず「it's a beautiful town!!」と言う。街にゴミ箱の数が少ないにもかかわらず、ゴミが落ちていない。一体どこへゴミは行方をくらますのだろうかと疑問を抱くほどである。飲食店では当たり前のように出てくる「おしぼり」も、外国人にはとても珍しい。紙ナプキンは海外にあっても、濡れたタオルが出てくることはない。「部屋の汚れは心の汚れ」といった言葉があるように、汚れとは人間の内面的な事もあらわしている。日本人は衛生面に厳しく、キレイ好きな所は世界で類を見ない程ではないだろうか。尊敬される日本人とは、まさにキレイ好きなところだと思う。

変化を恐れない国

田中 桂月(神奈川大学経営学部3年、20歳)

 「日本産=安心」。今や日本産は一つのブランドと言っても過言ではない。日本産と言うだけで安心、安全の付加価値が付いてくる。日本は今までの歴史の中で様々な異文化を受容し、日本式に変化させ、より質の高いものへと発展させてきた。例えば、自動車は欧州で生まれたものだが、今やトヨタ自動車や日産自動車が世界で最も信頼を得ているのではないか。これらの実績が上記の方程式を成立させているのだと考える。安心の根源は自国の文化に固執せず、異文化であっても良いものは良いと認められる文化的な寛容さであり、これが世界から尊敬されるべき点であると私は考える。

一目おかれる国

早川 志保(主婦、42歳)

 過去から現代に至るまで、この国は時折失敗をしながらも、知恵と勇気ある者のリーダーシップと、勤勉な国民性に支えられ、社会秩序を保ってきた。時折襲う自然災害は地球エネルギーによるものであり、その下で私達は活動している。島国ゆえ逃げ場がない中、創意工夫し欲望を抑え、社会秩序を形成する日本人の知恵が、地球全体の共有の価値観となる事をのぞむ。この国がやるべき事は、3つ。自然環境の保全。充実した教育。そして、全世界への日本人の知恵の働きかけだ。自らを律し、他を責めず、謙虚で、創意工夫し、より良き社会実現へ向けて努力する姿勢が、他国から尊敬を受けるのではないでしょうか。

「心技体」で世界を先導

西村 捷敏(無職、75歳)

 尊敬される人物とは「心技体」の3つの面で優れている。国の場合も同じではないか。日本で「心」とは和の心とおもてなしの心、「技」とは科学技術、「体」とは長い歴史で育まれ血となり肉となっている文化。これらが三位一体となって諸外国から信頼と尊敬を得る源になってきたと思う。この「心技体」をさらに深く広く充実できれば、大塚氏の言われる「3つの立国」の推進につながっていく。特に「心」と「体」を踏まえた「技」として科学技術を推進すべきだろう。21世紀の人類が求めている健康、医療、介護の分野で世界を先導するような成果を期待したい。現在の日本はそれに向けた能力・経験・意志を十分備えていると確信する。

おごらずに小さな事を積み重ねる

中原 惇耶(明治学院大学法学部1年、18歳)

 日本が他国から尊敬されるには、日本車や温水洗浄機能付きトイレに象徴される技術、明治日本の産業革命遺産などの世界遺産や寺社仏閣といった観光資源を好きになってもらうことがまず大切だ。日本という独特な文化圏で作られたマンガ・アニメや伝統文化も重要だろう。そして、外国人に日本の技術や文化を分かりやすく伝えられること。困っている人がいたら手をさしのべる慣習や、おごらずに謙虚な姿勢で相手を敬う精神を持つ人や国であることだと考える。このような小さな事を積み重ねていけば、他国から尊敬される国になるのではないか。

官民で発展途上国の衣食住支援

下津 健生(会社員、35歳)

 日本が発展途上国の生活改善に取り組み、欠かせない存在になることを目指す「官民一体の衣食住に関わる後進国支援制度」を提唱したい。人口構成、国内総生産(GDP)の推移を勘案すると発展途上国から尊敬されることが、有益と考える。衣食住を支えることは時代を超えて不変の価値を持つ。支援制度の骨子は、国が政府開発援助(ODA)を転用してファンドを準備。民間は企業の社会的責任(CSR)として、衣食住に直結する事業活動を展開する。プロジェクトの成果物には「From Japan」のロゴをつけてはどうか。将来のビジネスにつながる活動をしつつ、尊敬される日本を作れる制度になるだろう。発展途上国に人脈を持つ民間人の育成という副次的な効果も期待できる。

知情意+体

廣田 稔(会社員、60歳)

 先達が残した良い足跡を素直に見直しトレースすることを提案する。その理想とするところは「知情意」(=知性・感情・意思)の3要素が1つに調和した健康で明るい社会だ。「知」では、武士道精神に裏打ちされた日本の良い点を残しつつ、新技術を吸収してより良いものに改善・産業化した革新性と、着実な生産技術と品質管理などが挙げられる。総じて日本のものづくりは「知行合一」だ。「情」は、例えばビザの発券で多くの貴い人命を救った外交官、杉原千畝の様に、正しい事は正しいと判断して主張、実行する人道主義だ。「意」は強い心と意志、リーダーシップの育成。一例として薩摩の郷中教育が挙げられる。これら「知情意」に、安心安全な食生活が育む「体」を加え、活力ある共助社会を創る。具体的にこれらの事を積み重ねることによって「徳」が生まれ、世界から尊敬される日本国になると考える。

高付加価値化のすすめ

前田 正宏(会社経営、58歳)

 科学技術、貿易、観光立国というとスイスをイメージする。食品、医薬、金融、精密工業等世界的な有名企業が存在する。「高付加価値産業」という共通点がある。人口減少に苦しむ日本も、生産性の低い産業から高い産業にシフトする必要がある。以下の3点を提案する。

(1)生産性が低く、従事者も少ない農業では100ヘクタール規模の農場化を進めるため、今後30年分の補助金をまとめて投入し65歳以上の方々から農地を買い上げることで「逆農地解放」を行う。

(2)国民全員が生涯に1回は特許申請ができるように、知的財産に関する制度を充実させ、専門家養成のためにパテントスクール(特許大学院)をつくる。

(3)観光立国化のため、英語と中国語、さらにもう1つ外国語を選び、日常会話レベル到達を目指す。

知的財産の輸出国

竹島 雄弥(会社員、26歳)

 自由競争の経済社会において、国家の体力を決めるのは「知的財産の保有数とその輸出額」と総括できる。輸出を支えるテクノロジー、高い評価を受ける文化、ともに国家と国民が保有する知財だ。物的資源に乏しい日本は、国民がこぞって技能を伸ばし、知財として完成させて輸出してきたからこそ健全な財務を保っていると思う。この知財を管理・保護し、成長させることが国際社会で日本が尊敬される根源になるだろう。知財を疎かにすれば、貿易不振により債権国の立場を失うかもしれない。これまで以上に知財の保護と成長に向けた戦略を強化することで「日本ならではの尊敬」を得られるはずだ。

平和への戦い

牧野 充希(明治学院大学社会学部1年、19歳)

 私は、唯一の被爆国として世界平和を導いたとき、日本は尊敬されると考える。達成するには、世界中の人々へ核の危険性を理解してもらうことが欠かせない。核戦争が起こりかねない時代、国民が一丸となって平和への取り組みを起こすことが急務である。ヒロシマとナガサキを経験した人たちや、政治家が行えばいいことではない。国民全体がヒロシマ・ナガサキを実体験のように受け継ぎ、一人一人が国際平和と核の恐怖を深く考え、発信する。唯一の被爆国として訴えることは多大な影響をもたらすだろう。被爆体験者の高齢化は深刻だ。核問題を解決するため、今こそ日本国民が世界に対して、「平和への戦い」を起こす時だと思う。

講  評

若者の努力・真面目さ 頼られる国の基盤

 これからの日本をどのような国にしたいか、多くの皆さんが自分のことと捉え、真剣に考えてくださいました。特に若い人からの意見が多く、頼もしく思います。ありがとうございました。私は「尊敬される国とは、世界から頼られる国である」と考えます。高齢化、人口減少など日本が抱える多くの課題は今後、諸外国でも起きるでしょう。解決策を示し、世界に役立てる質の高い国を創っていくことが求められます。

 「異文化への寛容さ」は、私の持論でもある「大いなる交流こそがグローバル社会を築く」ことに通じると見ました。寛容さは、自身がアイデンティティーをしっかり持つことから始まります。未知、未経験に触れることで感性も磨かれるでしょう。

 「災害の国際救助大国」は、今の日本に着実に根付いてきた活動です。国や行政は初動に時間がかかることもありますが、自然発生的に生まれるボランティアの皆さんが、様々な困り事を機動的に解決することはよくあります。社会の課題解決力の一翼を担う存在です。

 「自ら尊敬『できる』国」は、日本の国民性を一人ひとりがしっかりと見つめる大切さを訴えています。福沢諭吉は「一身独立して一国独立す」と語っており、自立し当事者意識を持つことが、国としての独り立ちにつながります。そんな気構えを若い人が持っていることに安心しました。

 アイデアを読み進めると「努力」「真面目さ」などの言葉が多く出てくると気づきました。まさに日本人が根底に持つ行動様式であり、世界に誇れるものです。日本の良さを失わず、より良き社会を創っていきたいですね。

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