未来面「経営者と話そう。」経営者編第7回(2015年2月2日)

課題

日本の人口を増やすには

永瀬昭幸・ナガセ社長 東進ハイスクール・東進衛星予備校理事長

※肩書き等は掲載当時のものです。原稿のため、掲載時とは差異があります

<永瀬さんの主張>

●縮んでゆく国で明るい未来は描けない 「第3子に1000万円支給」が私の打開策

●日本の高校生、米中韓より悲観的

●長い目で見ると国庫にも貢献

 日本青少年研究所の調査によると、「自国の経済は持続的に発展するだろう」と考える高校生は、表の通り日本は29%。米国60%、中国87%、韓国70%と比べ、日本の未来を担う高校生は極めて悲観的です。私はこの原因は人口減少にあると考えています。

 現在1億2700万人の日本の人口が、100年後には4200万人まで減少するとの推計があります。このペースで人口減少が進めば200年後は1400万人、300年後は480万人と限りなくゼロに向かって突き進みます。今思い切った手を打たねば子孫に対して負の遺産を残すどころか、国家消滅の危機です。

 人口が減る国は国際的な存在感も薄れます。「1人当たりの生産性を高め経済の質を高めることが現実的」との意見もありますが、経済の大きさが外交の武器にもなります。例えばTPP(環太平洋経済連携協定)のような交渉でも一定の経済規模があって初めてルール作りで発言力を持つのです。

 どうすれば人口増加社会を実現できるのでしょうか。私の提言は、育児資金前渡し金です。厳しい財政状況の中なので第3子以降の出生に限定してですが、1000万円を公費で支給します。これにより年間100万人程度の出生増が見込めるはずです。2013年の年間出生数は103万人でしたが、この制度開始数年後からは毎年約2倍の200万人となる。その年代が出産を迎える30年後まで施策を続ければ50年後に人口2億人も期待できます。かつて1920年(大正9年)に初めて出生数が200万人を突破してから、49年(昭和24年)の269万人をピークに、第2次ベビーブームまで50年以上にわたり200万人前後の出生が続いた水準に戻るのです。

 必要な予算は毎年最大10兆円。「日本再興国債」発行などの財源確保をする価値は十分あります。子供が成長すれば、平均寿命の延びもあり、生涯で約4億円の国内総生産(GDP)増に貢献します。国民負担率を50%とすると国家財政への貢献は約2億円。1000万円の支出が2億円を生むのですから投資効果は絶大です。

 移民受け入れの意見もありますが、これを議論しだすと異なる意見が多く受け入れの是非に終始して人口増議論に進みません。私の提言は出生数の増加に限った人口増加策に絞りました。私は教育産業に携わる以上、次世代に夢を持ってほしい。ただコミュニティーが小さくなる中で夢を語るのは難しい。人口増は将来を約束します。

 皆さんに問います。もしあなたが日本の指導的立場(たとえば総理大臣)にあるとすれば、人口増加のため、どのような政策を打ち出しますか。財源確保など課題は山積しています。ぜひ建設的な提言をお聞かせください。

アイデア

「貢献パス」で優遇

桑嶋 正典(会社員、52歳)

 国民全員が3人以上を育てている家族を応援する価値観を持てる政策を提案したい。国民挙げて人口増への貢献をたたえて「貢献パス」を発行する。パスを提示すると何らかの優遇が受けらるように法整備してはどうか。保育園への優先的入園、買い物時のポイント還元率を増やす、公共交通の割引、公立学校学費の80%オフなど、子育て費用の低減が日々の生活を支援するのだ。子育てがしやすくなり、結果として人口も消費も拡大するだろう。

国民皆「未来保険」

中村 名志(海陽中等教育学校 高校1年、16歳)

 永瀬昭幸社長の案におおむね賛成だが、養育資金を公費で出すと、お金のために子供を産み、後に施設に預けるという本来の趣旨からずれた事象が発生する可能性がある。そこで「国民皆未来保険」なる制度を新たに作り、そこから出す方式を提案したい。国民皆未来保険は、国民が皆で未来(子供)のためにためる資金で、費用としては基礎年金の半分ほどで十分なはずだ。自分たちのお金を使っているわけで、無駄遣いしにくいと考える。

企業に保育所を

田下 文菜(中京大学総合政策学部3年、21歳)

 企業内に保育所を設けることを提案する。働く女性は育児休暇が取れるか、保育所に子供を預けられるかなどの悩みがある。会社内に子供がいれば休暇を取らなくても安心して働ける。待機児童になる悩みも解消されよう。企業側も育児休暇等で女性社員に抜けられる心配はない。国は保育所を設置する企業の法人税を優遇するなどでサポートする。国と企業が一緒に取り組んで働く女性の出産への悩みを解消できれば人口は増えると考える。

以上が紙面掲載のアイデア

フルタイムで働く女性に週休3日制の導入を

池上 裕子(会社経営、60歳)

 フルタイムで働く女性に週休3日制の導入を提案する。私は一級建築士事務所の経営者として週休3日制を長年実践し、その3日で子供の育児・教育、自己研さん、心身の休息のために使ってきた。家庭と仕事の両立を目指す女性には公的機関や病院への用事など母としての仕事をする土日以外の1日が必要だ。そうした女性の働く環境を整えれば労働人口の確保と少子化抑制を同時に果たす効果があると考える。

不妊治療を快適に

小坂 雄一(会社員、50歳)

 不妊治療を受けている人たちは積極的に声を上げることが少ない。しかし、この治療は待ち時間が4時間かかるようなありさまで、仕事を持つ女性には継続が困難だ。不妊治療をするからといって仕事を休むことも切り出しにくい。これを快適化することで、本当に子供を望むハイキャリアの女性に道を開くべきと考える。具体的には、出勤前・出勤後に診察ができる仕組みを構築することで、多くの働く女性に希望を与えられる。なお、金銭的支援は不要と思う。

人口増加のカギは「早婚化」

柴田俊哉(早稲田大学商学部3年、21歳)

 早くに結婚した国民の所得税や住民税を割り引くことを提案したい。少子化の要因の一つである晩婚化に歯止めをかけるのが狙いだ。具体的には男性は30歳以下、女性は25歳以下で結婚した夫婦に対し、住民税や所得税を最大40%ほど割り引く。税負担が軽減されれば経済的理由で結婚を思いとどまる人を少しでも減らせるのではないか。永瀬社長が提案した「育児資金前渡し金」と併せて導入すれば、人口増がさらに見込めると思う。

所得税制と家族人口

小杉 幸夫(元会社員、69歳)

 現在の日本の所得税制では子供を増やすことにつながらない。フランス政府が編み出した人頭税方式の計算方法を採用し、所得を家族の人口で割って税額を計算するのはどうだろうか。家族の人数が多いほど所得税が軽減されるため、出生率の上昇が期待できる。

チャレンジ保険

太田 峻介(産業能率大学経営学部3年、21歳)

 両親が「産んで良かった」「育てて良かった」と思える環境を作ることに着目した。我が子が活躍する光景を見て、良かったと思わない親はいないだろう。子供に「成功体験をさせる」ことがポイントだ。成功体験によって子供は余裕ができ、向上心も持てる。ただ、挑戦させる環境を作ってあげることは共働きの両親だけでは難しい。そこで「チャレンジ保険」を提案する。勉学・スポーツなど、それぞれに適した金額を必要な施設にサポートする。この保険で子供が活躍しやすい環境を整備し、子育てのメリットを存分に引き出すことができると考える。

家族関係支出の増加を

平澤 泰生(早稲田大学法学部3年、20歳)

 人口減を食い止めるには家族関係社会支出の増加が不可欠と私は考える。フランスやノルウェーなど早くから対策を進めた国は、いずれも同支出の対国内総生産(GDP)比が3%台になり、合計特殊出生率は2程度に好転した。日本の同支出はわずか1%程度にとどまっている。これでは子育て支援を推進しても効果は限定的にならざるをえない。そこで、第2子に対して15歳まで年10万円、第3子には年30万円の手当支給を提案する。基礎教育の終了までは養育費の多くを、この手当で賄えるだろう。「子どもと家族を応援する日本」重点戦略検討会議(2007年)の試算では、同支出を3%まで上げるのに7兆円が必要とある。決して過剰な支出ではない。

ふるさと贈与

芥 康富(会社員、34歳)

「ふるさと納税」について最近よく耳にするが、子供を産めば国から助成金を受け取れ、それを自分たちの親に贈れる「ふるさと贈与」を創設するのはどうか。子供が生まれた時、私たちの親の喜び様は予想以上だった。実家の両親と会う回数が増え、話す時間も格段に多くなった。自分たちを育ててくれた親に子が生まれた喜びを贈る「ふるさと贈与」は、「ふるさと納税」以上に魅力的だと思う。

恋愛促進法

石浦 有紀(中央大学商学部2年、21歳)

 「恋愛促進法」を提案したい。少子化の原因の一つに恋愛経験の不足があげられるのではないかと思う。女性の社会進出や育児支援に対する法律はあるが、恋愛に対する法律はない。そこで企業に対して交流会の義務化や地域恋愛活動支援金などを導入することで「出会い」のチャンスを作り、結婚・出産の機会を増加させたい。

お見恋(みこい)で少子化を解消

林 雅之(会社員、44歳)

 なぜ未婚化・晩婚化が進んだのかといえば、お見合いをしなくなったからだろう。かつてのようにお見合いを始めれば未婚化・晩婚化は解消すると思う。とはいえ、「見ず知らずの相手と最初から結婚を前提として出会う」のは現代の感覚にマッチしない。お見合いのルールを少し変更し、現代に蘇らせるプロジェクトを提案する。

 新しいお見合いのルールは(1)結婚をゴールにせず恋人になることをゴールとする(2)やり方は従来のお見合いと同様だが、紛らわしいので名前を「お見恋(おみこい)」に変え、政府主導で啓蒙する。かつて「クールビズ」の一言で日本の景色はすっかり変わったように、きっと変わると思う。

「イクメン・ボーナス」のススメ

志田 玲子(自営業、52歳)

 企業などで働く男性が育児休暇を取ったら、国が「イクメン・ボーナス」を支給する。例えば子供が3歳になるまでの間に365日分の休暇を取れるようにする。仕事の都合で1年間連続して休むのが難しい場合は仕事の繁閑に応じて分割取得とする。取得日数が増えるほど受け取れるボーナスの金額も増えるようにし、併せて「イクメン・ボーナス」の受給者が多い企業は国が表彰してPRする。少子化の最大の原因は、現状では育児の負担が母親一人の肩に大きくのしかかってくるから。父親が休暇を取れば取るほど得になる制度に変える。財源は現在の児童手当支給分をあてる。

人口減少で発生する空き家を活用

八木 亮太(会社員、36歳)

 今後、都市・地方を問わず空き家が多く発生すると思われる。その発生した空き家を子育て世代などの若者向けや地域住民を活用した保育施設にリノベーション(大規模改修)をして貸し出す。貸し手に対しては固定資産税を減免したり、不動産所得の計算において設備投資資金の経費算入や賃料収入の課税額減免などの優遇策を進めてはどうか。子育てのしやすい良質な住宅を若者に提供するだけでなく、地域保育施設における近隣の高齢者に働く場所を提供することによる活性化や世代間交流の創出を期待する。

働き方の改革で、未来の人財を育成

大舘 茉由(早稲田大学教育学部3年、21歳)

 私も不妊治療を受けた事がある。通常治療では成果が出ず、保険適用外の体外受精も試みたがダメだった。治療費負担が大きく再治療をあきらめていたところ、天の恵みか自然受精で子供を授かった。だが、ある意味で運が良かっただけ。治療費負担に耐えきれず断念した知人夫婦が何組もいる。

 厚労省によると2012年度の不妊治療者数は約47万人。治療を求める夫婦がこれだけいて、人口増加という国策に合致しているのに、いまだに体外受精や顕微授精は保険適用外のまま。子供に恵まれずに悩む多くの夫婦のためにも、早期の対策が必要だ。

不妊治療に保険の大幅適用

匿名希望(会社員、51歳)

 人口を増やすには働き方を見直す必要がある。企業は在宅業務をもっと導入すべきだ。情報機器を使えば会社にいなくても仕事はできる。自宅で仕事をすれば子供と過ごす時間を増やせて、保育料も抑えられる。夫婦で利用すれば支え合って仕事や育児ができ、育児がより楽しくなり、人口も増えるのではないか。女性の社会進出が増え、男性と同等に仕事ができるようになったが、育児環境はまだ整っていない。育児へのサポートが弱いため、働く女性の晩婚化が進み、人口減につながっていると思う。

新幹線・高速道路の無料化

矢部 純(会社員、52歳)

 現在日本が持つ優れたインフラを活用して生活利便性を向上させるアイデアを提案する。これにより、全国の都市を活性化させ、家族と世代間のコミュニティを充実させつつ子育ての負担を軽減させる。具体的には(1)通勤・通学時の新幹線の無料開放(2)通勤・通学のための高速道路の無料開放だ。これを18~45歳までの世代に適用する。新幹線・高速道が無料になれば、ほとんどの勤務地・学校に楽に通える。各地の主要都市から100キロメートル圏内がベッドタウンとなり、地方の活性化にもなる。無料化の費用分担は国・地方・勤務先(企業)とする。

講  評

兄弟は社会の始まり

 今回、寄せられたアイデアで目に付いたのは育児支援への言及です。男女雇用機会均等法など女性の社会進出を促す法整備が進んだ一方で、働く女性が出産、子育てをしにくい社会になってしまった。その結果、少子化が進む。落とし穴でした。

 人口減について考えるとき「家族って何だろう」と思わずにはいられません。戦後、私たちは経済成長を追い求め、都会への人材集中と核家族化が進んだ。日常的な親の手助けなく、育児をしながら働き続けるのは、よほど馬力のある女性でないと難しい。東京が都道府県別の合計特殊出生率で1.09と最も低いのは、その象徴といえます。

 東進ハイスクールの高3生を対象にしたデータをみると「一人っ子より兄弟のいる生徒の方が成績は伸びる」という相関関係を確認できます。「兄弟は他人の始まり」と言いますが、私は「兄弟は社会の始まり」と考えます。いい意味での競争心が身近で育まれるのではないでしょうか。

 一人っ子がよくないわけではありませんが、希望すれば2人、3人と子供を産める環境づくりこそ、これからのジャパニーズドリームと私は位置づけたい。夢を実現するための経済的な裏付けに着目したアイデアも多数ありました。たとえば税制です。所得を家族の人数によって頭割りし、課税額をはじき合算する方式です。家族が多いほど所得税が軽減されやすく、欧米では既に導入している国があります。

 人口増加策は国家百年の計です。少子化は多くの要因が複雑に絡んだ結果です。これを解きほぐし、ジャパニーズドリームを実現するために、皆さんとともに知恵を出し合い、行動していきたいと思っています。

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