未来面「経営者と話そう。」経営者編第5回(2014年12月1日)

課題

今、リーダーになるために心がけることは何か

尾堂真一・日本特殊陶業社長

※肩書き等は掲載当時のものです。原稿のため、掲載時とは差異があります

<尾堂さんの主張>

●変化の時代を生き残るためには、理想が高く果断な人材が不可欠

尾堂真一・日本特殊陶業社長(以下尾堂社長):

 学生の皆さんにお話ししたいことは「これからのリーダーとはどうあるべきか」ということです。このような問いかけをするのは変化が激しい中で、企業も日本も生き残るには新しいリーダーが必要だからです。

 日本特殊陶業は自動車エンジンのスパークプラグで世界トップシェアの地位を確立していますが、自動車の技術革新は急速に進んでおり、今の経営環境が続くはずがありません。高品質な製品であれば売れる時代ではなくなります。我々は“真の価値”を持つ製品を世界へ提供する「もの作り企業」となるべく、長期経営計画「日特進化論」を進めています。我々も変わるために強いリーダーが必要だと痛感しています。ダイバーシティー(人材の多様性)も積極的に進め、特に女性リーダーの育成を重要テーマととらえています。

 これからの日本、世界を担う若い学生の皆さんにどこでも通用するリーダーになってもらいたいと思っています。そのための心構えを語ってほしいのです。

日本経済新聞:

 リーダーとは「社長を目指せ」ということですか。今の若い人の価値観は多様化しており、「社長を目指そう」とする人は少数派のはずです。

尾堂社長:

 社長だけにリーダーの素養が必要だなんて思っていません。会社はいろいろな部署や部門の集合体ですから、数人の小さな組織もやはり全体を見渡せるリーダーが必要です。学校も同じ。クラブ、研究室にも必ずリーダーがいます。私が高校時代、所属した野球部には情熱を持ち、チームをまとめ上げる先輩がいました。先輩の話を聞き、行動に移す姿を見るとこちらのモチベーションが上がっていったのを覚えています。

日本経済新聞:

 尾堂さんは、リーダーのあり方について、いつごろから意識されはじめたのですか。

尾堂社長:

 「リーダーになろう」と明確な志があったわけではありません。ただ、通算16年間の海外赴任の経験がリーダー像を作り上げるのに役立っているのは間違いないです。当時、英国の現地法人社長だったJ.ヒューズは「絶対にライバルに勝つんだ。プラグメーカーのリーディングカンパニーになるんだ」と言い続けました。そのパワフルな語り口に人間的な魅力を感じ、実際に英国のトップシェアを勝ち取ったのです。  取引先のトップの方々との交流を通して欧米流のリーダーシップを垣間見たことも貴重な体験です。彼らには、共通点がありました。フェア(公平)である、何事にも逃げない、変えることを恐れない、現状維持に満足しない、高い理想を持ち続ける、そして最後は自分で決めることです。誰もが明るく、話が論理的なのも同じ。コミュニケーション能力にたけた人たちですね。日本の会社と対比できたのが幸いでした。どちらかというと、日本は自分が上に立ち、判断し決断するリスクを負いたがらない人が多い気がします。

日本経済新聞:

 尾堂さんは、いつごろから自身のリーダー像を実践されたのですか。

尾堂社長:

 18年ほど前に豪州法人の社長に就任したころでしょうかね。従業員は30人の所帯でしたが、トップに立つということは全体に目配せをしないと、組織そのものを理解できません。イニシアチブ(主導権)をとり、議論をしていい方向に組織を持っていこうとしました。各人がパフォーマンスを最大に発揮できるようチームをまとめ上げる必要性も学びました。

 これから社会で活躍する若い皆さんにとって、今、リーダーになるための心構えを聞かせてください。

アイデアと講 評

尾堂社長:

 「抽象論過ぎて難しいかな」と思っていた私の問いかけに多くの学生の皆さんが投稿していただき、本当にありがとうございます。自らの経験から導き出したリーダー論は言葉に重みがあり、これからの日本を担う若者として頼もしくさえ感じました。それでは私が選んだ皆さんの意見を紹介していきましょう。

一度経験を積んでみる

小関 貴也さん(中央大学商学部2年、19歳)

 ゼミやサークル、部活動、アルバイトなど、どのような小さな団体活動であっても、まず一度、人をまとめる役割について実際に経験を積むことです。

周りを巻き込む力

鷹崎 健太朗さん(神奈川大学経営学部2年、20歳)

 リーダーに必要なのは周りを巻き込む「影響力」です。リーダーシップは仲間や同じ意識を持つ複数の人が関わっている際にのみ存在する能力だからです。

耳を傾け、信頼を得る

大竹 杏果さん(中京大学総合政策学部1年、19歳)

 リーダーはいろいろな人の相談や悩み事を聞く機会が必然的に多くなり、その話し合いの中で信頼を得ていくことです。

尾堂社長:

 ここに紹介した3つのリーダーのあり方について共通しているのは、リーダーは自分の考えをしっかりと発信することだとみました。自分に置き換えて考えると、組織の仲間に自分の考えを正確にわかってほしいと思うなら、わかってもらうまで何度でも言い続けないと伝わらないことです。そして、進むべき方向性を明確にして、誰もが当事者意識をもつことで組織がまとまり、チーム力が上がっていきます。

 3人の意見だけでなく投稿してくれた皆さんは小さな組織の中でリーダーとして組織がよい方向に変わっていく姿をその目で見たのだと思います。これは大変貴重な経験です。

鷹崎さん:

 その集団が成長し目標達成に向かうような影響力が大切です。リーダーの影響力は綿あめのようにだんだんと大きくなり、多くの人をじわじわと巻き込むものだと思います。活発にコミュニケーションを取り、柔軟な考えを持つことが影響力を左右するでしょう。

小関さん:

リーダーを経験することで組織を先導するということがどのようなものなのか多少なりともわかります。リーダーは先陣を切って、多少強引でも統率しようとする積極性や、集団行動に対する熱意が必要になるのではないでしょうか。統率力やカリスマ性で周囲を巻き込んでいける力をつけるためには、失敗を恐れずに積極的に取り組んでいくことで、同じ志を持つ人がおのずとついてくるものだと思います。

大竹さん:

 リーダーのコミュニケーション能力が高ければ、会社などの組織内で部下から多くの意見や提案が出ることが期待できます。組織全体が盛り上がり、皆が仕事に意欲的に取り組むようになるでしょう。

尾堂社長:

「推されて」でなく「自ら」

 ここでは3人の意見は異なりますが、リーダー論に「これが正解」といった答えはありません。ただ、リーダーは「推されてなる」ものではなく、「自らなろう」とすべきだと考えます。やはり、責任とリスクという重みを自覚し手を挙げてやるのがいいでしょう。  女性のリーダーにお会いすると感じるのは、「聞き上手」なところです。大竹さんの考えにも通じますね。投稿の中には「お節介の能力」という声もありました。いろいろなリーダー論があっていいです。これからは社会的文脈の中で新しいリーダーが誕生することでしょう。

以上が紙面掲載のアイデア

自分を信じ続ける

川村 鴻弥さん(新潟県立新潟高等学校2年、18歳)

 自分を信じ続けることがリーダーには大切だと思います。リーダーが自分の理想を見失っていては、人々はその人物に付いていこうと思わないからです。  リーダーとは組織の進む方向を決め、組織の構成員に実行させる役割を担います。私は演劇部の演出担当や生徒会長として組織を率いたことがあります。何となく組織を指揮しているときは全体の士気が落ちてしまいました。確固とした理想に基づいて指揮しているときは構成員の仕事に打ち込む姿勢が積極的になり、組織全体の成長が感じられました。

空気を読まない

阿部 友厚さん(東京大学経済学部3年、22歳)

これからのリーダーには「空気を読まない」姿勢が求められると考えます。いままでは、先輩の成功体験を自分のものにし、それを後輩に伝えればよかった。しかしこれでは、今後の社会に求められるリーダーは生まれてこないのではないでしょうか。たとえば私がアルバイトの家庭教師をしていて感じるのは、昔なら受験勉強ができさえすればいいという親御さんが多かったが、いまは「偏差値よりも将来生きる力を身につけさせたい」「海外留学させたい」と要望が多岐にわたってきたことです。

 なれ合いを排除し常識を超えた革新的なアイデアをもつライバルに勝つ「競争視点」、既存の組織を壊すことができる「ゼロベース視点」が必要ではないでしょうか。いままで自分を規定してきた社会・組織のありかたを常に否定する。つまり周囲の空気を読まない。これが求められると思います。

圧倒的な当事者意識

間瀬戸 安菜さん(中京大学総合政策学部4年、21歳)

 リーダーの仕事は大きな責任を伴うことが多く、いきなりその立場で仕事することは難しいものです。リーダーになるために必要なことは、何事も当事者意識を持って行動することです。リーダーでなくてもリーダーのように行動することは可能です。ほかの人に任された仕事にも気を配り、プラスアルファとしてできることを進んで見つけ出すなど、自分の責任以外にも当事者意識を持って取り組むことが自分の実力を高めることになります。

 自分自身がリーダーになったとき、その意識が定着していることで広い視野を持って行動することができ、全ての責任を背負うリーダーの仕事をこなす力が身に付くと思います。どんなことでも自分が責任を持ち、やり遂げるという圧倒的な当事者意識こそ、リーダー経験につながる心構えでしょう。

変人になる

齋藤 直人さん(近畿大学文芸学部3年、21歳)

 テスラ・モーターズの最高経営責任者(CEO)、イーロン・マスク氏は学生時代に「人類を火星に移住させなければならない」と語ったそうです。周りは全く相手にしませんでしたが、この理想は現在の彼の原動力になっているそうです。今、リーダーになるためには彼のように常人では思いつかない高い理想を掲げることが必要でしょう。世界規模の理想を掲げる人とそうでない人とでは熱意と行動力に絶対的な差があり、それが結果としてリーダーとしての器の大きさにつながると考えます。周囲からは当然、変人扱いされるでしょうが、「変える人」なら喜んで変人と呼ばれることを好むに違いありません。

妥協せず人を動かす

三浦 菜々さん(白百合女子大学文学部 英語英文学科1年、19歳)

 私の描くリーダー像は「妥協をしない人」です。私自身もクラス委員になった経験があり、その中で学んだことは「どうせ自分の力が何になることもない、私が何をやっても無駄だ」と考える人が少なからずいることです。そのように考える人をも動かせる人物がリーダー像として適任であり、単に頭の回転が速いとか、倫理的思考を持っている人よりも、様々な人の気持ちを理解しながら、自ら行動を起こし、どのようなことにも妥協をしないリーダーシップを持っている人が社会を引っ張っていけるのではないかと考えます。

日本人のリーダーとして心がけること

馬場 泰平さん(海陽学園海陽中等教育学校 中学2年、14歳)

 日本でリーダーになるには欧米流リーダーシップだけでは大きな成功を得られないと思います。日本人には欧米人と異なる価値観があります。欧米流の強いリーダーシップで自らがトップに立ち責任を負うことは大切ですが、同時に日本流の相手を思いやる、相手を立てるなどの文化も重んじるべきでしょう。自らの決定で責任が取れるリーダーでも、部下から信頼されなければ意味がありません。部下の持つ力を引き出すこともリーダーに求められます。

 日本人には自分を目立たせる人は少ないでしょうが、自分の力を出す機会を提供することで大きな力になることがあります。組織はリーダーだけでなく全員で成り立つものです。大きな力を出すため部下の隠れた力を引き出すこともリーダーの重要な力だと思います。

おせっかいの能力

近藤 悠紀さん(中央大学商学部3年、21歳)

 リーダーとは、組織をまとめ進むべき方向を指導していくもので、同時に組織内の人間について一番気を配らなければならない役目でもあります。この気配りは、いわば「おせっかい」のことです。  周囲の人間に仕事以外でも積極的に関わり、その相手を正しく理解すること、能力を把握し最も生かせる場所に配置すること、それこそがリーダーにおいて必要な能力の1つです。リーダーだからといって常に先頭に立ち引っ張っていく必要も、前ばかり見ている必要もありません。組織内の人間をしっかりと見つめ、とらえることで方向を示せば、かじを切り、航路を進めてくれる、そんな仲間が作れるのではないでしょうか。そういった人材の育成こそ、リーダーの役割だと考えます。

リーダーは下から価値を発揮する

井上 知紀さん(一橋大学大学院・商学研究科経営学修士コース1年、23歳)

 リーダーは下から価値を発揮し、人材の結束を下から固める役割を果たすべきです。そうすれば、組織を最適な成果に導くことができるのではないでしょうか。こうしたリーダーになるために、私は謙虚さが重要だと考えます。謙虚さがあれば、状況の変化にも冷静に対処でき、個人の能力を最大限いかすことにつながります。また、謙虚であることで経験不足を補えるでしょう。

 リーダーは個々と謙虚に向き合うべきです。かつてのリーダー像は、最適解を導く高い能力を持ちかつ組織をまとめる力を持つ人物と考えられてきました。だが、多様な解と人材があふれる現代では、そのトップが行き場を見失うケースが散見されます。これからのリーダーには、臨機応変に組織を動かすことのできる人材が適していると私は考えます。

異文化への理解

禰寝 創太さん(東京大学経済学部3年、22歳)

 リーダーに必要とされるのは、異なる文化や価値観を受け入れて理解する能力であると考えます。現在、グローバル化が急速に進行しています。日本企業も例外ではなく、新入社員の採用では留学生を積極的に採用し、仕事においても海外企業とのやり取りが急激に増えています。そういった状況で、従来のように日本の中でのやり方、価値観だけで仕事をするのは難しい。チームで物事を進める際に日本人以外の人々がいることも普通になります。そうした中で従来の日本的価値観を押し通すことは、リーダーとしてふさわしくないでしょう。

 日本では当たり前のことと思っていたことが、海外では当たり前ではないということも日常茶飯事です。リーダーとしてチームをまとめる際には、チームの中での前提の確認や、異なる文化への配慮が今まで以上に必要とされるでしょう。。

組織の壁を壊す

陳林さん(央大学商学部1年、21歳)

  リーダーになるために心がけることは組織の壁を壊すことだと思います。仕事の効率を最大限に高めるには、組織内部の協力が非常に重要です。しかし、自分の部署のことしか考えないと、組織あるいは企業の一体感が生まれません。人間の無限な能力を一つの部門に囲い込まず、一歩外に出て他の部門と力を合わせて仕事をすることは、仕事の効率を上げるだけでなく、企業の成長にもつながるのではないかと思います。

 自分の仕事がやりやすいように、自分のことだけを考える閉鎖性を持ってはいけません。ワーキンググループを作り、いい成果を出すために、組織の壁を乗り越えることが非常に重要で、それを実現することがリーダーになるために心がけるべきことではないでしょうか。

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