未来面「革新力」経営者編第10回(2016年9月5日)

課題

30年後の世界で役に立つ
ヒコーキを教えてください

片野坂真哉・ANAホールディングス社長

※肩書き等は掲載当時のものです。原稿のため、掲載時とは差異があります

「ヒコーキ」は、世の中をよくできるか。

 今年はANAが国際線に就航してからちょうど30年になります。路線網は世界41都市に広がり、旅客数も日本一となりました。2020年には東京五輪を控え、訪日客が急増する見通しです。次の30年後にもお客様に満足していただくためには、我々も新たなチャレンジが必要だと思っています。

機内と空港、楽しんでほしい

 ANAの前身は戦後誕生した日本ヘリコプター輸送という会社です。コード名の「NH」や、レオナルド・ダ・ヴィンチのヘリコプターの絵をあしらった以前のロゴがそれを物語っています。世界の航空会社では後発企業でしたが、1999年に航空会社グループの「スターアライアンス」に加盟したことをきっかけに飛躍のチャンスをつかみました。

 当時は日本人による海外渡航が増えた時期です。空港のラウンジやマイレージのポイントを共有したり、荷物を現地までスムーズに運べたりしたことで、お客様に快適な空の旅を提供できるようになったからです。

 航空会社としては、飛行機という移動手段を提供することが基本ですが、機内や空港で過ごす十何時間という空間を楽しんでもらえるソフトやサービスも非常に重要だと考えています。隣同士の席が互い違いになった「スタッガード」と呼ばれる水平に倒れるシートを他社に先駆けてビジネスクラスに導入したのは、そのためです。

 ICカードを使って簡単に搭乗できるようにした「スキップサービス」を導入したのも我々が最初です。インターネットを使い、座席や食事などのご要望も事前にうかがえるようにしました。

 もちろん飛行機も常に最新機材を投入してきました。米ボーイング社の最新型機「787」や、欧州エアバス社の総2階建て大型機「A380」などがそうです。ビジネス需要を見込み、三菱航空機が製造する国産ジェット旅客機「MRJ」も導入する予定です。

 では、未来の「ヒコーキ」とはいったいどんなものになっているでしょうか。あえてカタカナで表記したのは、ハードウエアとしての進化はもちろん、人工知能(AI)によるクルマの自動運転のように、ユーザー体験が大きく変わることが予想されるからです。

 そこで皆さんにお願いですが、30年後の世界で役に立つヒコーキをぜひ提案してください。たくさんのご応募をお待ちしています。

アイデア

宇宙観光できるよう

今田 浩暢(自営業、47歳)

 30年先には、宇宙に対応した旅客機が誕生している。燃料の燃焼効率を飛躍させたハイパワーでエコなエンジン、大気圏への往来に耐えられる機体、それらの技術革新で一気に宇宙空間へ安全にたどり着く。室内は宇宙空間でも耐えられる特殊ガラスで覆われていて、大気圏を出れば機体の外壁を開け、地上では見ることが出来ない満天の星と宇宙から見た地球を観賞できる「宇宙観光」を実現する。移動する間の快適さやおもてなし、食事などの提供だけではなく、従来にない機内での滞在をメーンとした「降りないで空旅を楽しむ乗り物」のサービスレベルを実現させる。宇宙からは、雷・台風・オーロラなどの気象の変化から世界遺産までが確認でき、老若男女問わず、地球と宇宙を同時に学べることになる。

自動制御、安全で優しく

北浦 由紀(自営業、49歳)

 ソーラーパワーで稼働する安全で優しいヒコーキ。天候や状況にあわせて高度、ルート、操縦など全てコンピューター制御で、ヒコーキが判断し動く。危険時も自動回避するので事故は起こさない。椅子は体にフィットするように変形する。脚、背中以外に、目、顔のマッサージ機能も搭載。3D眼鏡のような機器で、音楽、読書、ゲーム、映画、プラネタリウム、コックピットから見えるリアルな景色まで楽しめる。また、機内の席の離れた知人、日本にいる家族と顔を見ながらの会話も可能。飲み物や食事、免税品はタッチパネルのスクリーンで選べば、ロボットが直ちに運んでくれる。支払いは網膜認証。金額の一部をどこに寄付するか世界中の財団から選べる。自宅でケータリングするように機内でもシェフがオーダーメイドで食事を作ってくれる。30年後そんなヒコーキがあればウレシイ。

空の上の優先座席

佐久間 有紀(武庫川女子大学文学部3年、20歳)

 私には寝たきりの兄がいる。家族で飛行機に乗るたびに「あればいいな」と思うものがある。それは優先座席だ。電車や新幹線のような優先座席ではなく、エコノミークラスでも真横に倒すことができる優先座席だ。寝たきりの人は、支えやベルトがあると座ることが可能だが、長時間その状態だと腰や首が座っていないので、辛いのではないか。ファーストクラスのように個別の座席は真横にできるが、兄のような寝たきりの人は隣に誰か支える人が必要なので厳しい。その便に必ずしも身体の不自由な人が乗っているとは限らないので、その時は空席にするのではなく、一般の人も乗れるように優先座席と分からないような座席にすればよいのではないか。30年後には、身体が不自由な人でも飛行機で快適に過ごすことができていればいいなと思う。

以上が紙面掲載のアイデア

ヒコーキの公共インフラ化

森田 純一郎(会社員、38歳)

 ヒコーキの燃費性能や静寂性は高まったが、環境への負荷をゼロにすることは困難だ。利用者だけではなく社会全体の目線でヒコーキの活用を考えることも必要だと考え、ヒコーキの公共インフラ化を提案したい。例えば、ヒコーキにカメラを取り付け、リアルタイムの画像情報を共有することで、大規模災害発生時の被害状況確認に役立てる。カメラを観測機器に置き換えれば、気候変動観測などの観測に活用できるかもしれない。また、カメラと航法装置を活用することで、飛行ルート上の詳細な気象情報を入手・共有し、より精緻な気象予報に役立てることはできないだろうか。局地的な乱気流情報をヒコーキ間で共有して危険な空域を避けたり、風向き情報をヒコーキ間で共有し追い風を利用することで飛行時間短縮・消費燃料を減らすなど、利用者にとっても大きなメリットが見込まれる。

空飛ぶホテル

池田 光子(主婦、48歳)

 現在の飛行機は近距離は問題ないが、何時間もかかる外国へ行くのはとても窮屈だ。将来は、1人用、2人用、3人用…と仕切られた簡単なブースのようになると随分と安らぐ。幼い子供達もリラックスでき、泣き叫ぶことも少なくなるのではないか。もちろんトイレは車椅子でも利用できるサイズになっているだろう。燃料は、原油由来ではなく藻等からできたもので、太陽光発電やスピードを利用した風力発電を活用しているかもしれない。ますます炭素繊維等を利用し、一つ一つのスーツケースも軽く、機体も更に軽量化され、燃費も向上する。予約はもちろんインターネットで、いつどこへ行くかを入力すれば、どの航空会社のどの便があって、料金はいくらで利用スペースはここという具合に、自分で納得できるプランを立てられる。家族割引などもあるといい。未来のヒコーキ、楽しみにしている。

世界の天候不順を救う

有田 裕一(会社員、53歳)

 30年後のヒコーキは水素ガスで飛んでいる。地上でも吸気補充できるが、飛行中の雲から水素のみを抽出して吸気補充することも可能だ。飛行中に異常気象を示す大型の雲を見つけると、雲を分解し水素エネルギーとして取り込むと同時に雲を小さくして、大型水害や台風から地球を守るのだ。当然ながらその逆も可能だ。水不足に苦しむ地域上空では、貯めた水素ガスを放出して適度な雲を生成し、雨を降らせることもできる。ヒコーキは情報端末として世界の天候情報を情報ステーションに送るとともに自ら雲の大きさを調整することで地球規模の降雨量最適化に役立っているだろう。

ドローンのような飛行機

田中 稔(無職、76歳)

 飛行機を利用するとき一番困るのは、飛行機に乗っている時間の何倍も無用な時間がかかることだ。空港まで行く時間、搭乗手続きに要する時間、着いた飛行場から目的地に行くまでの時間、これらを合計すれば、相当な時間がかかることは少なくない。高度なドローンのような飛行機を開発し、発着地から目的地まで直接行ければとても便利になる。タクシーのような飛行機をぜひ開発してほしい。新幹線、バスなどとの競合にも勝てるのではないだろうか。

大陸間貨物専用の自動運転航空機

北野 善彦(会社員、32歳)

 30年後の世界には超音速旅客機以上のスピードで、無人で、それこそ大陸間弾道ミサイルと同じようなスピードで移動できる機体も有り得るだろう。人は乗せれないが、物を超短時間で、それこそ地球の反対側に、その日の朝に取れた新鮮な魚を数時間で届けることもできる。更には、ICタグ等で着陸後の配送先まで管理する。あらゆるものがIOTが進むであろう未来だからこそ、欲しい物が地球上のどこにあろうとも文字通り即時に手に入るインフラが重要になっているかもしれない。

平和をつなぐタクシーヒコーキ

柳澤 幸宏(海陽学園海陽中等教育学校中学2年、14歳)

 僕が考える30年後に世界で役立つと思うヒコーキは、タクシーのように自分の乗りたいところから降りたいところまで簡単に移動できるものだ。定員が3~4人程度の小型機で、人工知能(AI)が操縦する自動運転の飛行機だ。ビルやマンションの屋上、学校の校庭などから飛び立つことができ、長距離移動はもちろん、短距離の移動にも適しているので、お年寄りや妊娠中の人など多くの人にとって役立つヒコーキだと思う。世界の紛争地域や生活に苦しんでいる人への食糧、日用品の輸送も可能だろう。動力は水素を使用し、環境に配慮したつくりで小型機なのでエンジンは小さく、騒音も少ない。燃料費もあまりかからないので経済的な運航ができる。交通渋滞も起こらないので目的地までスムーズに移動できる。このヒコーキがあれば世界中の様々な人の役に立つだろう。

極上ホリデーとスーパーオフィス

田村 和生(団体役員、60歳)

 4~16時間の閉鎖空間を活かし、ヒコーキは、かつてないほど快適で有効な時間と空間を提供する。乗客は大きく分けて2種類のサービスを利用できる。一つは「極上のホリデー」。快適な空間で酸素によるリフレッシュサービス、そして仮想現実感(VR)を利用した未体験のエンターテインメントといった上質の休養だ。もう一つは「スーパー・オフィス」。集中できる環境で人工知能(AI)による各種コンサルティングサービス、例えば法律、マネジメント、先端技術などに関わる様々な分野に関して機内でのみ提供する専門コンサルサービスが受けられる。目的地に着いたビジネスパーソンは、搭乗前より格段に知識資産で武装したプロとなって活躍できる。こうして地上以上の時間と空間を提供してくれるのが30年後のヒコーキだ。

ヒコーキに乗る×健康相談

岩坪 佳子(会社員、35歳)

 ヒコーキに乗っている間や搭乗前の待ち時間を使って、自分の体の気になることを専門家に相談できると良い。私は子供が2人いるが、自分の体のことになるとあまり注意を払えなくなっている。日々生きているのに忙しすぎて、健康かどうか正直不安を感じる。普段忙しくて、自分の健康についてあまり意識を向けられていない人に向け、ヒコーキに乗ったら自分の体を診てもらえ、今後どうしたらいいかアドバイスを親身に相談してくれる人がいたら嬉しい。

ホスピタルエアポート

飯牟礼 成則(公務員、56歳)

 空港は市街地から離れて隔離した施設がつくりやすい。感染症の対応やドクターヘリ専門の空港など機能を特化した医療関係のハブ空港があると良いのではないだろうか。ドローンや無人航空機で医療品や資材を運ぶシステムも作りやすいと思われる。また入国手続きをしなくても空港内の病院で治療だけして帰国する外国人向けの医療システムも考えられる。医療面で国際救助隊ができたらいいのではないだろうか。

快適性を向上させたヒコーキ

仙田 裕紀(東北大学大学院工学研究科修士1年、23歳)

 30年後には「快適性」を向上させたヒコーキが活用されるだろう。まず機体には新素材「セルロースナノファイバー」から成る透明強化プラスチックが用いられる。透明な機体なので機内空間を広く感じることができる.この強化プラスチックには多機能センサーが内蔵されており、乗客は機体に触れることでデジタルコンテンツを楽しむことができる。機内に設置されたシートは人工知能(AI)により乗客の好みに応じて変形する。空席は折畳まれ、貨物室に収納される。シートはAIにより機内空間を快適に活用できるように配置される。機体には水素エンジンが搭載され、エンジンから排出される水を回収することで機内にシャワールームを設けることができる。翼は飛行状態に応じて、騒音や空力面において最適な形状に変形する「モーフィング翼」となる。空港では機内清掃の間にロボットが手荷物を棚に収納することで搭乗時間を短縮する。

「エコーキ」

松田 寛司(海陽学園海陽中等教育学校高校1年、16歳)

 30年後、地球規模の人口増加により、化石燃料は希少価値が高まっていると考えられる。一方、移動のグローバル化は変わらず、飛行機の需要は増しているに違いない。そこで求められるのはエコな飛行機、その名も「エコーキ」だ。「エコーキ」には微生物由来のバイオ燃料を用いる。今は発展途上の技術であるが、年月を経て大量生産が可能になると考えられる。今まで使用していた化石燃料は加工用に残すことが可能となる。  「エコーキ」の羽や機体上部には太陽光パネルを設置する。耐久性の向上や軽量化により、30年後には飛行機への搭載は可能になるのではないか。飛行機は雲の上を飛ぶので、天候の影響を受けるという太陽光パネルの弱みは強みとなる。「エコーキ」の実用化により化石燃料の枯渇を食い止められ、後の世代にとって大きな成果になり得る。

講  評

 お仕事で飛行機をご利用されているビジネスパーソンやこれからユーザーになっていただける学生など、多くの方から貴重なご提案をいただきました。いずれも示唆に富み、私たち業界人には気付かないアイデアも多数ありました。

 「未来のヒコーキ」については私も普段から想像を巡らせています。例えば、子供のころに夢見た宇宙ステーションなどです。その点では「宇宙観光」のご提案にはワクワクさせられました。今は「空」と「宇宙」は別なものと考えられていますが、その境目が取り払われる日もいずれ来ることでしょう。

 快適な空の旅を願う私たちは、飛行機のハードだけでなく、ソフトの観点も重要だと思っています。ソーラーパワーで飛び、機内の様々な新しいサービスをご提案くださった「優しいヒコーキ」には非常に共感いたしました。

 アイデアを選ぶ際、近未来に実現できそうかという点も着目しました。ただ「空の上の優先座席」のご提案を拝見し、今からできることもあるとハッとさせられました。ぜひ皆さんからのご提案を生かし、これからもANAをご利用いただけるよう努めて参りたいと思います。

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