未来面「革新力」経営者編第11回(2016年10月3日)

課題

チームが変革するためメンバーは何をなすべきですか?

中山譲治・第一三共社長

※肩書き等は掲載当時のものです。原稿のため、掲載時とは差異があります

「製薬」は、世の中をよくできるか。

 第一三共は、がんに強みを持つ先進的でグローバルな創薬企業を目指しています。2025年までにこの目標を達成するために、我々は最先端のサイエンスを応用し、組織を変革し、患者さんのニーズに合った新薬を生み出していく必要があります。新薬を世界の人々に知ってもらい、治療に役立ててもらうには研究開発や生産、営業、管理など多くのスタッフの力と連携が必要です。まさにチーム第一三共としての総合力が問われるのです。

使命実現、問われる総合力

 リオデジャネイロ五輪では日本のチーム力が花開きました。陸上男子400メートルリレーは、バトンパスの技術をメンバー全員が高めることで、走力を補った成果が出ました。体操男子団体は、エースを中心にした団結力がもたらした逆転優勝でした。女子シンクロナイズドスイミングは、強い指導者のもとチームの信頼感が高まったことで、3大会ぶりのメダル獲得につながりました。

 会社という組織がチーム力を発揮するのにも五輪が参考になります。第一三共は優秀な成績を挙げた営業所に対し、リーダーだけでなくメンバー全員を表彰します。メンバー全員がリーダーと同じように責任感を持ち、主体性ある行動をする組織は強いです。

 がんの新薬開発力を高めるために、このほど海外から優れたがん研究開発のリーダーをスカウトしました。彼はがん研究開発チームのエースとしてチームを引っ張ってくれると期待しています。またシンクロのように強い指導者のもとで組織が結束するため我々経営者が頑張らないといけません。チーム第一三共の底力を25年までの10年で高めていくために、我々は変革を恐れてはいけないのです。

 がんの症例はさまざまであり、治療方法も多岐にわたります。新しい治療法を待っている患者さんやご家族がたくさんいらっしゃいます。こうした期待に応えることが製薬会社の使命であり、存続意義であると思います。社会に貢献する公共性のある組織(チーム)の一員であることが、社員(メンバー)全員の誇りなのです。

 そこで読者の皆様のお知恵をお借りしたいのです。チームがより強く変革するために、メンバーである一人ひとりは、何をなすべきでしょうか。チームのためにメンバーの取るべき行動を、できれば具体的な事例に基づいて教えてください。

アイデア

小さな数値目標を励みに

古木 謙人(名古屋大学大学院情報科学研究科修士2年、25歳)

 メンバーの一人ひとりが仕事の目的を腹の底に落とし込むことが重要だ。個人の仕事は細分化されているため最終目標が遠い。そのため仕事の意義を見いだせず、身の入らない仕事になりがちである。そこで提案したいのは「小目標の設定」だ。最終目的である大目標に対し、細分化した小さな目標を設定することで仕事の目的を定められる。その際に考慮したい点は数値だ。大目標は「利益率10%上昇」というように数値化して表されることが多く、目標が明確だ。小目標も何かしらの数値目標を設定することで、達成すればチームに貢献できたという実感と充実感が得られる。このように取り組んだメンバーが後進を育成することで目的意識を持ったメンバーが生まれ、循環的に成長できるチームができると考える。

対等に意見を交わせる関係を

谷口 実那(青山学院大学社会情報学部3年、22歳)

 チームの変革には上下関係のない環境が不可欠だ。私は高校の3年間、ハンドボール部に所属していた。1年生のころは先輩の人数が多く、私たちの練習は後回しだった。ただ当時は、上下関係を意識しすぎたあまり「先輩を優先するのは当たり前だ」と考え、積極的に練習に参加しなかった。しかし、今となってはチームが成長するには1年生も先輩に負けまいと練習に参加し、お互いを高め合うことが重要だったと反省している。年長者の知識や経験が役立つことも多いが、上下関係がチームの成長を妨げることもあるだろう。年長者の意見を受け入れ、先輩を立てることはもちろん大事だが、対等に話し合える仲間であることも重要だ。上下関係のない、対等に話し合えるチームであれば、意見がたくさん出てくるようになり、新しい考え方や技術も取り込みやすくなると思う。

批判する力を身につける

木南 遼介(海陽学園海陽中等教育学校高校2年、16歳)

 チームの変革のために必要な力であり、今の日本に一番足りないものが「批判する力」だ。自分の意見を主張せず、多数派に流されることはチームのために必要なことなのか。意見があるということは現状に不満があるということだ。批判とは決して否定することだけではない。良い点も悪い点も批評することこそが批判だ。否定するだけの力など無意味だ。ここで思考というものが大切な要素となる。ある哲学者が「人間は考える葦(あし)である」と述べた。人間に思考力がなければただの葦であり人間ではなくなるのだ。常に問題意識を持ち、現状を疑い、思考し批判することが大切だ。批判が問題を浮き彫りにし、変革の糧になるだろう。変革のため現状を疑うという思考をし、批判することが大切なのではないか。

以上が紙面掲載のアイデア

自分らしさを満開に

渡辺 明日香(慶応大学薬学部5年、22歳)

 メンバーの一人ひとりが「各自の強み」を最大限発揮できたとき、チームとして最高のパフォーマンスが達成できると感じている。昨年、5人が1つのチームとなり、チームごとの売り上げを競うインターンシップに参加した際、私のチームは5チームのなかで1位を獲得することができた。リーダーシップを発揮する人や膨大なデータを数学的に分析する力に長けた人、先を見据えて戦略を考える人などメンバーの特性を考え、それぞれの強みを生かして役割分担をしながらチームを回せたことが結果につながったと感じている。一人ひとりがチームに対する帰属意識を持つこと、そして周りのメンバーが「自分らしさ」を発揮できる環境を皆でつくり上げることで、チームは強くなると思う。

意識の共有という下地づくり

河原井 将太(上智大学経済学部2年、20歳)

 チーム全体の変革では組織の隅々にまでそれが波及する必要がある。一般的に人々は変革を恐れる傾向にある。一部の保守的な考えを持つメンバーによってチームの生まれ変わりが失敗に終わってしまうケースが往々にしてある。自分が以前所属していた運動部では部の好成績を目指す部員と、競技を楽しみ厳しい練習を好まない部員との間に隔たりがあった。一方で強豪校は部内全体に勝利をもぎ取ろうとする活力があり、練習効率や試合のモチベーションが大変高い。部活動である以上、好成績を目指すことはある種の義務・目的の一つであり、それはあらゆる組織にも当てはまる。チームの雰囲気や向上心を高めることによって、変革のためのきっかけが生まれる数を増やし、浸透する確率を上げられるのではないか。「目的のために最善の努力をする」という根本的意識を共有し、チーム全員が協力して下地を創造していく必要があると考える。

コミットすること

山本 康平(明治学院大学社会学部1年、34歳)

 メンバーはチームに「コミット」しなければならない。現在、私は学生だが、7年ほどシステムエンジニアの経験がある。ある現場でスケジュールが大幅に遅れてしまう事案が発生した。10名にも満たないチームでの話だ。全ての作業を止めて、全員で話し合うと、Aさんがボトルネックになっていることが分かった。Aさんは作業の遅れをひた隠しにしていた。それを許していたのはチーム内のコミュニケーション不足だ。誰かの作業がおかしいと気付いても、誰もリーダーに報告や連絡、相談をしなかった。さらにそれぞれのメンバーは、自分の作業が他のメンバーの作業に影響を与えているという認識も薄かった。これらを改めたチームは、今までとは比較にならないほどのスピードで残りの作業を完了させていき、なんとか遅れを取り戻すことができた。メンバーはチームに「コミット」しなければならない。

メンバーのことどれだけ知っていますか?

坂元 開(琉球大学工学部4年、21歳)

 私は居酒屋でアルバイトをしていた。メンバーは社員が1人で、あとはアルバイトの学生。居酒屋の仕事といえば、やはりお客様に対しての接客がメーンだ。2年続けてわかったことが1つある。それは従業員満足があってこそ、顧客満足につながることだ。たまたま先に勤務を終えたメンバー同士で飲む「ノミニケーション」の場を設けたところ、3つ効果があった。1つはお互いをよく知ることができること。2つ目は他のメンバーからの意見により視野が広くなること。3つ目は年齢関係なく発言できること。飲み会の場は、すぐにフィードバックできる場であるとも考える。ネットがこれほどにも流行し、フェーストゥフェースのコミュニケーションの場が損なわれていると感じる。目を見て対話しようではないか。顧客満足を高めたいのであればまずは近くの仲間を大切にしてみませんか?

「気を配れる」関係性

ウーベルト タケシ(静岡大学大学院総合科学技術研究科2年、23歳)

 チームで活動する中で、重要なのはメンバー同士の関係性のように思う。チームに所属する一人ひとりには、必ず与えられた仕事があるが、他のメンバーの仕事にも積極的に関わることが重要だと考える。私の所属する研究室では、それぞれの学生が違ったテーマの研究をしている。ある日研究が進まず、困っている学生の手助けをした。違う分野で分からないことが多かったが、最終的にはその分野に対して議論できるレベルまで達した。自分の研究に対する新たなアイデアまで浮かんだ。もしメンバー一人ひとりが自分の仕事の合間などに、他のメンバーの仕事の進捗状況を気にし、手助けや助言ができる関係性ならば、議論の場やアイデアを出す際に大いに役に立ってくる。メンバーが相互に「気を配れる」関係性ができるチームは強いと思う。

「弱み」を見せる勇気

竹田 祐太(駒澤大学文学部3年、21歳)

 もしも戦いの場で相手に自分の弱点を知られていたら、それは良いこととはいえない。しかし、もし仲間が自分の弱点を知っていたらどうだろうか。私は野球を通して仲間と一緒に戦ってきた。チーム作りの一つとして、メンバーの強み・弱みを把握することを大切にしてきた。そうすることで、仲間を信用することができて、本当の「助け合い」が生まれると考えてきた。たとえリーダーでも、弱みを見せることは決して恥ずかしいことではない。「弱み」を見せなければ誰もその穴を埋めてくれない。メンバー一人ひとりの「弱み」が、いつしかチームの大きな「強み」へと変わっていくのではないか。

外国人受け入れマインドと英語力の向上

鈴木 悠人(東大大学院工学系研究科修士2年、23歳)

 日本に限った話だが、外国人への偏見をなくし協力するマインドを持つこと、そして英語力を身につけることが必要だろう。この2つによって日本人の消極的な仕事への姿勢が変わり、メンバーが主体的になるため、全体の成果につながる。日本人のチームメンバーに主体性がなく成果が出にくいなら、それは日本の文化や気質によるところが大きいと考えている。協調性が重視されるあまり、チームの問題を指摘し変革できるチームとは言いにくい状況になっているのではないか。そこで、外国人メンバーを受け入れると、その生産性の高さや主体的な働き方に日本人は触発されるだろう。私自身、現在外国人と一緒に働いているが、そのアグレッシブさには毎日いい刺激を受けている。もちろん英語力も外国人とのコミュニケーションのために必要で、自分も今勉強中だ。

一人ひとりの意識を高めよう

佐藤 友香(青山学院大学文学部3年、21歳)

 チームが変革するには、メンバー一人ひとりがチームに必要不可欠な構成員であるという自覚を持ち、行動することが大切だ。私はコピーダンスチームの代表を7月から務めている。新チームになった私たちの運営は要領が悪く、最高学年の私ともう1人の2人が仕事の大部分を担う体制だった。その結果、後輩に私たちの苦労が伝わらず、大会への熱意に差が生じ、予選大会では結果を出せなかった。そこで次の大会では後輩と役割分担するように改めた。私たちにとって、後輩のミスをフォローしなければならないのは二度手間だったが、後輩たちの間ではチームの一員であるという意識が高まった。その結果、後輩は予選に比べ練習に来るようになり、その態度も格段に改善した。一部の幹部が全てをこなすようでは他のメンバーの士気は高まらない。時間はかかるかもしれないが、全員が仕事を分担し「チームに必要とされている」との自覚を持つことが、強いチーム作りには重要だと感じている。

チームの「気づき」をシェア

東 佑樹(海陽学園海陽中等教育学校高校2年、17歳)

 チームのために個人がすべきこと、それは「シェア」だ。チームに所属していると、自然にそのチームの長所や短所が見えてくる。しかし、そのような「気づき」を自分の中だけに留めていては、何も変わらない。気づきを共有することで初めて、チームが新たな視点やツールを得て、力が向上する。そのために、全員がシェアできるような環境づくりが求められる。最も大切なのは、シェアされた一人の「気づき」をチームにすぐに取り入れ、行動に移すことだ。シェアした個人にしてみれば、自分の「気づき」がチームに取り入れられる、という経験をすることになり、自らシェアすることへの抵抗が和らぐだろう。また、そのシェアの結果が業績アップやチームの勝利といった具合に目に見える形になれば、より自信を持てるようになる。個人が常にシェアを意識し、チームとしてシェアしやすい環境をつくることが最も大切だ。

講  評

 チームが変革するためにメンバーは何をなすべきか。この問いに対し、多くのご提案をいただきました。最も多かったのはチーム内の関係性の改善でした。「対等に意見を交わせる関係を」のほか、後輩の声を聞く、メンバーのことをよく知るなどの意見もありました。チーム内の風通しを良くすることが重要なのは言うまでもありません。

 メンバーが仲良くすることは大事ですが、「批判する力」がないチームは緩みます。良好な関係の維持を気にするあまり、言いたいことも言えないのでは、チーム力は上がりません。

 そんなチームが力を発揮するには、「小さな数値目標」が有効です。現実の会社経営でも、大きな経営方針の下に、状況に応じたチームレベルでの具体的目標を掲げます。

 今回採用した3つの提案を併せ持ったチームこそ、強いチームといえるでしょう。今の企業に最も必要な力は、変化への対応力です。かつて企業経営は基本方針8割、変化への対応が2割といわれましたが、この比率は逆転した感があります。良い関係性と批判する力を併せ持つチームに的確な数値目標を与える。それを可能にするリーダーの育成も重要です。

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