未来面「革新力」経営者編第12回(2016年11月7日)

課題

豊かな暮らしのために、いまの住まいをどう変えますか?

瀬戸欣哉・LIXILグループ社長

※肩書き等は掲載当時のものです。原稿のため、掲載時とは差異があります

「リフォーム」は、世の中をよくできるか。

読者の皆さんは「リフォーム」という言葉を聞いて、どのようなイメージを持たれるでしょうか。

夢あるアイデア、技術で可能に

 階段や浴室に手すりを取り付けたり、廊下と部屋のほんの少しの段差をなくしたりするバリアフリー、風雨にさらされた外壁の塗り替え、トイレやお風呂の交換などをリフォームと考える人が多いと思います。そのことに違いはありませんが、私たちが考えるこれからのリフォームはもっと幅広いものになると確信しています。

 そのキーワードは「快適」「健康」「安全」です。今まで何不自由なくできていた雨戸の開け閉めや腰をかがめる掃除などは高齢者になるとつらいものです。病気にならないように室内の空調をコントロールすることも大事でしょう。残念ながら「安全はタダ」という社会環境ではなくなっています。国や自治体の財政事情がますます厳しくなる中で、リフォームによって「快適」「健康」「安全」が実現できる環境を作る、そんな時代が近い将来やって来ると思います。

 そこで読者の皆さんに「今後10年前後を見据えた、暮らしを豊かにするリフォーム」のアイデアを募集したいと思います。

 戸建て、マンションどちらでも構いません。家にどのような機能があれば今までよりも「快適」「健康」「安全」な住空間が生まれるでしょうか。シニアの方々には切実な問題かもしれません。一方、若い皆さんは高齢社会、共働き世帯や単身世帯の増加、エネルギー問題など大きな潮流を捉え、社会的な課題を解決する斬新な提案があればうれしいです。

 例えば1日にトイレを5分間使うとします。1年だと30時間になります。この時間をもっと有効かつ快適に過ごす空間にできないものでしょうか。逆の視点ではトイレとして使われない時間の活用もあり得ますね。

 太陽光など自然エネルギーを取り込んだ「ゼロエネルギー住宅」はもう間近です。まずは読者の皆さんにリフォームを身近なものとして気づいてもらいたいのです。夢のようなアイデアでも既存の技術、近未来に実現可能な技術によって商品化の可能性は高いと考えています。お風呂、キッチン、トイレといった商品のイノベーションでも構いませんし、屋根、壁、床、窓、ドアなどに新たな機能を吹き込むようなアイデアも歓迎します。

アイデア

水を作る「ゼロウオーター住宅」

久保田 禮(海陽学園海陽中等教育学校高校2年、17歳)

 現在、太陽光や自然エネルギーを取り入れた「ゼロエネルギー住宅」が実現しつつあり、電気は使う時代から作る時代に変わってきた。では、水資源はどうか。水質汚濁や気候変動で「水と安全はタダ」といわれた日本ではなくなっている。各家庭にソーラーパネルがあるなら、水を作る機械があってもいい。私の提案する「ゼロウオーター住宅」は雨を集めて浄化し、飲用水として利用する。風呂やトイレの水も繰り返し使えるようにする。使う水が自分の家から出たのなら、不用意に水を汚すことや無駄づかいが減るだろう。今と変わらず水に恵まれた生活を将来も送りたいなら、一人ひとりが水資源をもっとしっかり考えるべきだ。ゼロウオーター住宅は「水はあたりまえ」といった考え方を治す特効薬になる。

ご近所共同で空き家を別荘に

下越 幸二(会社員、50歳)

 日本で増えている空き家を有効活用し、日本を元気にしたい。人口減少や独居率の増加、街のスラム化など住環境が悪くなるなか、10軒程度の家庭で1つの空き家を「近所別荘」として利用する。近くに住むお年寄りが集い、空き家が高齢者の食生活改善や運動による健康管理、孤独化の防止などに役立つ施設となる。必要なのは大型のキッチン設備や、ヨガのような運動をできる広めのリビングルームなどのリフォームだ。広めの土地があれば住居を減築し、菜園を作ったり、ゲストハウスのような宿泊機能を設営したりする。宿泊機能は2020年の東京五輪で宿泊設備としても使える。リフォーム費用と家賃負担をどうするのか、検討は必要だが、昔ながらの「向こう三軒両隣」による緻密な生活環境を空き家のリフォームで築けるだろう。

清掃の手間を究極まで減らす

村田 俊介(慶応大学薬学部4年、22歳)

 清潔で快適な住まいに不可欠でも後手になりがちなメンテナンス(清掃)。時間をどう使うかが課題で、ゆったりしたくつろぎには素材や自動化、省力化がポイントだ。特に負荷がかかりがちな「キッチン」「浴室」「その他の室内と廊下」に絞ると、キッチンは油、浴室は湿度、室内と廊下はほこりが大敵で、これらに徹底的に特化した新素材を使う。素材だけで対応できない部分、例えばキッチンならダクトごとワンタッチで取り外し、高圧で丸洗いできる構造にする。浴室はボタン1つで室内外の温度差を瞬間で解消し、湿度を除く。室内や廊下のほこりは床を塞がない家具、またはスケルトン構造でダスト設備と直結し、一掃する。老後を見据え労力のかからない豊かな暮らしのために「メンテナンスフリー」を追求したい。

以上が紙面掲載のアイデア

玄関にデジタル看板

岩坪 佳子(会社員、35歳)

 玄関のドアに電子看板(デジタルサイネージ)があるといいだろう。早く帰宅した子ども達に「おかえり」を伝えるメッセージを表示したり、ママの帰宅時間を残したり、「翌日学校に持っていくものを忘れないで」など携帯から送った連絡を伝えたり。平日はゆっくりと触れ合えない家族の存在をちゃんと感じ合える玄関になる。デジタルサイネージなら、隙間時間のメモなど送信した内容を手軽に表示できる。働いている親にとって何かに書く手間がかからずに済む。不要なメッセージを消すクリーナーもいらない。メッセージは必要に応じて保存できてもいい。私は小型金属ゴミの日を忘れやすいが、デジタルサイネージで「今日はゴミを出せる日だよ」と教えてもらえたらうれしい。

AI搭載のキッチンは健康のサポート役

松岡 采那(中京大学総合政策学部3年、20歳)

 食事のアドバイスをくれる人工知能(AI)を搭載したIoTキッチンを提案したい。料理の作り方はもちろん、栄養素やカロリーを計算し、食べる人の身体に良いメニューを教えてくれる。育ち盛りの子どもには栄養を取れて、お腹いっぱいに食べられる料理、高齢者なら塩分や糖質を抑えた料理、という具合に冷蔵庫にある食材を瞬時に判断して教えてくれる。食事は生きる上で欠かせないし、楽しみの一つだろう。そんな毎日のメニューを考えるのが大変、という人にはIoTキッチンが一緒に考えてくれるパートナーになる。ひとり暮らしの高齢者には、日々を健康に過ごす食事を考え、ちょっとした話し相手にもなるだろう。そんなキッチンがあったら、きっと使う人の心強い味方になってくれる。

自動車が住まいの一部に

寺本 稔(契約社員、64歳)

 これからの時代、一戸建てに求められる姿は電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)のような、走行中に排ガスがゼロという自動車を家の機能の一部として取り込むことだ。自動車を取り込んで設計した間取りの家があってもいい。同時に、それは自動車の姿も変える。住宅の一部としての機能を考えた意匠になるのだ。例えば災害時には自動車が緊急待避先としての機能を兼ね備える。そして、停電時に電力を発生するという機能も、今までより使い勝手がよくならなければならない。従来、自家用車を持てば、ガレージが必要だった。これからはそういった考え方自体を抜本的に変え、まったく新しい発想が必要だ。

屋内に感知センサー付き自動ドア

竹島 雄弥(会社員、28歳)

 高齢者の家族がいる時に、もっとも困ったのはドアの開け閉めだった。高齢者自身が自分で歩くとき、体幹がしっかりしていないとドアに体重をかける開け方になってしまい、転倒する危険性があった。また車椅子で移動するときには、介助する人が狭い通路を前方に先回りで移動してドアを開けておく手間がかかったし、開き戸が車椅子にぶつからないように注意も必要だった。そこで、人体感知センサーをドアに取り付けて、ドアのレールやちょうつがいが安全な位置とタイミングで動くようにしたらいいのではないか。開閉のときには音楽が鳴り、それぞれ異なる音が流れるようにすれば、家族などが高齢者から目を離していても分かるので、より安全になる。特に玄関ドアの自動化は、介助する人がスイッチリモコンを管理するといった方法により、高齢者の予期せぬ徘徊(はいかい)を防ぐ有効な手段になるだろう。

階段の上り下り、電動の介助装置

川口 英信(自営業、48歳)

 足腰が弱まり、自宅にエレベーターを付ける人がいるが、設置スペースや予算の関係で利用者は限られる。階段を踏み外して転倒し、頭を打つことで急激に認知症が進んだというケースも多いそうだ。自宅の階段の手すりに簡単に設置でき、階段の上り下りを介助してくれる電動の介添え装置があればどうだろうか。階段を上るとき、レバーをつかめばライトで足元を照らしつつ、ほどよい速度で2階まで引っ張ってくれ、下りるときは転倒を防ぐ支えになる。これなら特別なスペースは必要なく、比較的安価で簡易に施工できると思う。

体と心のためのバリアフリー

羽田 桃子(中京大学総合政策学部2年、20歳)

 現在の日本では様々なアイデアが盛り込まれたバリアフリーがたくさんある。しかし、どれを見ても見た目が冷たいように感じる。介護される人は不安な気持ちで生活を日々送っていると思う。もっとバリアフリーの設備に温かみを持たせ、不安な気持ちが少しでも安らぐようにする工夫が必要だ。木を使った設備にしたり、イラストを入れたりすれば介護される人に安心感を与えることができると思う。介護する人や近くを通りかかった人にとっても心温まる空間になる。介護される人の不自由な体を助け、楽にすることはもちろんだが、体だけではなく、心への介護にもつながると思う。体と心の全てのバリアフリーを目指すことが必要だ。

家族と家の健康を両立させるために

有田 裕一(団体職員、53歳)

 私が住まいに期待することは家族と家が長く健康でいられると同時にプライバシーが適切に守られていることだ。あらゆるモノがネットでつながる「IoT」で勝手に接続し、自分たちの健康状況が外部にチェックされたり、見守られたりすることは豊かな暮らしではないと思う。自分の健康状態は自分でチェックしたいし、そのための仕組みを家が持つことは同時に家自体のメンテナンスにも役立てられるのではないだろうか。例えば家のなかで移動する距離や速度を定期的に見ることによって自分の体調変化に気づき、医療機関を受診したり、老化予防のトレーニングを始めたりすることを自分で判断したい。この仕組みで家の外壁や内部の劣化状況もいち早く気づくことが可能だ。早めに適切なリフォームを繰り返すことによって家も長く快適に維持することができるのではないか。自分と家の健康に関する必要最低限の情報を自分で入手して早めに短時間で手が打てることが豊かな暮らしへの一歩だと思う。

快適さや健康促進、気付かずに実現

中 郁彰(会社員、33歳)

 ガラスより軽く、強度もある素材を使った窓で、冬は外気温を感知して太陽光を取り入れるため透明になり、夏は逆に反射性の高い鏡のようになることで電気代の消費を抑え、エコ生活を実現する。戸建ての家のなかが夜まで暑いのは壁や屋根が暖められてしまうからだ。屋根や壁の上に日射を遮断する新たな壁や屋根を取り付けることで睡眠時の快適度はアップする。居住スペースには歩くだけで血行がよくなったり、ダイエット効果があったりするフローリングなどの床材があるとよい。入るだけで耳には聞き取れない周波数の音が流れ、自律神経を整えてくれてリラックス効果のあるお風呂や、湿度を自動で調整して不快指数を下げてくれる玄関や窓があれば健康も促進される。こうしたことを住んでいる人が気が付かないレベルで提供してくれるのが豊かな暮らしを実現する住まいだと考えている。

タテの空間

守本 蒼生(海陽学園海陽中等教育学校高校2年、16歳)

 収納スペースは衣類や物を保管するために、家になくてはならないものだが、場所を取るため邪魔な存在であるとも言える。収納スペースをどう配置するか。これは空間をうまく利用する上で重要なことだ。しかし日本の家は敷地面積が狭く、リフォームをするにしても収納スペースを移動させるのは簡単ではない。そこで私は「タテの空間」に注目した。玄関や廊下、洗面所など使う頻度が少ない場所の天井に50センチメートルほどの空間を作る。そこに収納スペースを格納し、使いたい時はスイッチ一つで天井から降りてくるという仕組みだ。高い所に置いた物が取りにくいという従来の問題も解消される。また、家が広くなるので手すりを設置したり通路を広くしたり、高齢者に優しい家づくりが容易になる。タテの空間をうまく活用することで世代を問わず住みやすい家が造れるのではないか。

リニアモーターハウス

向笠 泉希(明治学院大学経済学部1年、19歳)

 リニアモーターカーは同じ極同士の磁石が反発し合うことで地上から浮いて走る。この原理を日常で生かせばもっと快適な暮らしができる。床と家中の家具の間にリニアモーターカーの原理を利用し、家具がドラえもんのように3ミリメートル浮いていれば、少し引っ張るだけで移動できる。年末の大掃除でしかしないような、家具の裏の掃除も普段からでき、部屋の模様替えはもっと手軽になる。さらに家具を床からただ浮かせるだけでなく、電磁力を利用して自家発電し、リニアモーターの電力以外に冬は床暖房として、夏には冷却装置を利用して家中を冷やす。もちろん、普通の生活の電気として使うこともできる。リニアモーター新幹線の東京・名古屋間の開業は2027年。同じ頃、リニアモーターによる浮上装置が私たちの身近になれば、様々な場面で有効に活用されるだろう。

環境にも良し、生活にも良し

前川 岳也(海陽学園海陽中等教育学校中学2年、14歳)

 環境に良く、人工知能(AI)によりオートメーション化された家にリフォームしたい。ドアは帰ってきた主人の状態をカメラでチェック。主人が凍えていたら部屋を暖かくして、スープを用意するなど、臨機応変に対応する。住む人を認識する仕組みも導入し、泥棒が来たらシャッターを下ろし、侵入できないようにする。玄関では自動的に靴が並べられ、庭に植えてあるラベンダーの花で脱臭する。荷物も自動で持ち上がり上に収納され、スペースを有効活用できる。床は二重構造になっていて、ホコリがたまったら、下の段に落ち、バクテリアが全て分解してくれる。朝起きたい時間をセットしておけばその時間にカーテンが開き、日光で目覚めることができる。主人が暇そうにしている時は、教養を深めるクイズなどが自動で流れて、無駄な時間を作らせない。「環境にも良し、生活にも良し」という家にリフォームしたい。

伝統的建材、無垢材使用のススメ

大槻 忠男(会社役員、79歳)

 今時の家は、あまりにもコストダウンや効率を重視したものになってしまい、見た目だけの家が多いと感じる。ここで「伝統的建材」「自然素材」の良さを取り入れてみては、と提案したい。例えば、トイレのリフォームに無垢(むく)の檜(ひのき)で模様替えし、香りでやすらぎの空間を造り出す。ただ用を足すだけではなく、気分もすっきりリフレッシュできる場所を目指します。お風呂場の脱衣所の模様替えもお勧めだ。青森ひば、木曾檜といった、水に強く、香りの良い無垢材を使う事で、木の香りあふれる癒やしの空間に模様替えすることも良いだろう。今日も1日頑張ったあなたの体をいたわり、明日への新たな出発の活力を与えてくれる場として、気分転換できる心地良い空間に変える事ができる。本物の檜の香りが大嫌い、と言う人は恐らくいないだろう。自然の「木の力」を使ってみませんか?

荷物がお荷物にならない家

沖本 佳代(京都女子大学法学部3年、21歳)

 現在、私は親元を離れて暮らしている。親からの荷物を受け取る際、自宅にいる必要があり時間に縛られている。そこで次のことを考えた。戸建て住宅の玄関をリフォームする際、扉の隣に外壁埋め込み型の宅配ボックスを作るのはどうだろうか。いつでも宅配業者は家の外から荷物を入れ、住人は家の中から受け取ることができる。AIやIoT等のテクノロジーを付加すれば、外出先からの集荷依頼等の連絡やボックスの施錠解錠、温度調節等も可能になる。一家に一台あれば、寒い冬の日に玄関先にでる必要もなく、高齢者が慌てて外に飛び出す必要もない。子どもが留守番している時だって、玄関を開ける必要がないので親は安心だ。宅配業者にとっても二度手間がなくなり、労力・燃料の削減になる。買い忘れもなくなる。好きな時に送ったり受け取ったりできる宅配ボックスがあれば、荷物がお荷物にならない。

講  評

 私の問い掛けに数多くの皆さんが投稿してくださり、本当にありがとうございます。その中には東日本大震災で被災したご自宅を、または介護が必要な親御さんの家をリフォームした時の思いを書かれたものがあり、心に響きました。若い世代からは社会問題を解決する斬新なアイデアも寄せられ関心の高さを実感しました。

 「我が意を得たり」と膝を打ちたくなったのが「ゼロウオーター住宅」です。日本で水は無尽蔵だと思われがちですが、世界を見渡せば水の確保は切実な問題です。弊社は現在ケニアで1回の使用量が0.9リットルで済む超節水型の「マイクロフラッシュトイレシステム」を実証実験中です。グローバルな視点に脱帽しました。

 徐々に上昇している空き家率という今日的な問題を新たなビジネスチャンスと捉えると同時に豊かな生活へと導いてくれそうなのが「近所別荘」です。「くつろぎの空間」はまさに弊社が積極的に取り組んでいる課題で、さらなる技術革新で乗り越えたいと考えています。

 エネルギー・環境問題へのアイデアも多く、生活の基盤となる「家から世の中を変えていくこと」に確信が持てました。

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