未来面「世界を変えよう。」経営者編第7回(2017年12月4日)

課題

「あなたが考える理想の小売業の姿は何ですか」

井阪隆一・セブン&アイ・ホールディングス社長

 皆さんはセブン&アイグループのお店に1日何人のお客様がいらっしゃると思われますか。

 答えは約2200万人(人口の約17%)です。これだけたくさん来店し、しかも、そのお客様は日々変化し続けています。かつてのコンビニは「若者のお店」と言われていましたが、現在のセブンイレブンでは50歳以上のお客様の比率が40%を超え、最大の顧客層です。全体の来店客の男女比では女性が47%にもなっています。

 当然、商品も変化し続けています。冷凍食品やフライドチキン、おでんなどの売り上げは10年前より大幅に増えています。お客様の層が広がり、コンビニの利用方法が変化しているのです。セブンイレブンでは今、創業以来約40年間基本としてきた売り場レイアウトの変更に着手するなど、よりお客様にとって必要な商品やサービスを提供するべく努力中です。

 そこで、すべての読者の方に「あなたの考える理想の小売業の姿は何ですか」と問いかけたいと思います。お客様の立場や目線で「理想の流通サービスを実現するには、どんな機能やサービスが必要なのか」「セブン&アイのインフラをこんな風に使えば、もっと便利なサービスを実現できる」といった、未来の流通サービス像を描いていただきたいと思います。

 私たちにはコンビニ、スーパー、百貨店、専門店、金融など多彩な業態があり、グループ全体で2万店を超す国内店舗網、ネット通販サイト「オムニセブン」などのEコマース、全国に構築してきた物流体制や専門工場のネットワーク、そして数多くの自治体との連携などがあります。これらをもっと有機的に結びつけていくことでさまざまな可能性が広がります。

 例えば、11月からセブン&アイ・ホールディングスはアスクルと組み、生鮮食品のネット通販を東京都内の一部で始めました。これは仕事や家事に忙しい女性を主な客層に、イトーヨーカ堂などで取り扱う生鮮食品やプライベートブランド商品を宅配します。交流サイトの普及、IoTの進展なども見逃せません。もはや実店舗とネットは境目なくつながっています。

 流通サービス業を取り巻く大きな変化に対応し続けるため、私たちは常にお客様から学び、新たな挑戦を続けていきます。赤ちゃんからお年寄りまで、よりいっそう便利にご活用いただける新たな流通サービスを生み出していきます。そのためには商品、サービス、店舗や売り場のあり方など、すべてのお客様の「いまのニーズ」や現状へのご不満に、謙虚に耳を傾けてまいります。いろいろな結びつきを視野に入れた革新的なアイデアを期待しています。

アイデア

人々の健康をサポートする存在に

宗友 良諭(慶応義塾大学大学院経営管理研究科1年、36歳)

 小売業は通常、消費者のニーズに応える商売だといわれるが、今後はそれだけでは十分とはいえない。病気のように、人々が望まないことが起きないように対応するのもあるべき姿の一つだろう。例えば、一人ひとりの日ごろの健康状態を把握し、好みに合わせた食事の提供を通じて健康を支援する。このサービスを特に、共働き世帯で個食を強いられている子どもたちに提供できないだろうか。IoTを活用して、来店客の日々の健康や成長の状態をつかみ、体調や好みに応じて量や味付けを工夫した食事を提供する。安心できる食材を使い、栄養バランスにも配慮する。その姿はまるで管理栄養士であり、プライベートシェフのような役割だ。個人のデータは医療機関と連携すれば、きめ細かく健康をサポートできるようになる。その結果、小売業はより多くの人たちの生活を支える「社会インフラ」の役割を果たすだろう。

隙間時間にアプリで買い物

掛川 拓海(駒沢大学グローバル・メディア・スタディーズ学部3年、21歳)

 今日の日本で時間を気にしなくてよい日はあるだろうか? 会社では会議や締め切りの時間、家では夕飯の支度や子供の送り迎え。常に時間との戦いであり、小売店に買い物に行く時間は短い方が良い。そこで私はスマートフォンアプリと店舗の融合を考えた。通勤や休憩といった隙間時間にアプリを使い、店舗で扱っている商品やサービスを選んでカゴに入れる。それと連動し、店舗ではアプリ内でカゴに入れたのと同じものをそろえてレジで待つ。仕事帰りなどに来店したお客様はそのままレジで会計を済ますだけでいいというシステムだ。店舗に並べられている商品をアプリ内で比較、購入でき買い物時間を短縮することができる。カゴに入れた商品を認識し献立を提案する、といった応用もできるのではないか。毎日する買い物時間や料理の時間を10分でも30分でも短くできたら、あなたはその時間を何に使いますか?

外国人訪日客にアプリを提供

大林 裕貴(高千穂大学経営学部3年、20歳)

 海外から日本へやって来る観光客は、年を追うごとに増え続けている。東京五輪開催を控えるなか、小売店の「おもてなし強化」は喫緊の課題だろう。全国で同じ水準に画一化されたサービスを展開するコンビニチェーンでは、その対策が比較的簡単に進むのではないか。例えばスマートフォン(スマホ)のアプリを使って外国人訪日客へのサービスを強化する。商品にスマホのカメラを向ければ、旅行客の使う言語で商品情報を説明するほか、ハラール認証やアレルギー物質の確認にも使えるようにする。店舗内に無料のWi―Fiを設置すれば、アプリの利用率は高まりそうだ。ただし、コンビニ各社で個別のアプリが必要になってしまうと、逐一インストールしなければならなくなる。可能なら小売り各社が協力し、統一化したアプリの提供を期待したい。言語の壁を感じず、スムーズに、そして快適に買い物できるようにスマホを積極的に活用してほしい。

以上が紙面掲載のアイデア

手続き簡単、通販にプリペイドカード

斉藤 美波(一橋大学法学部3年、20歳)

 あらかじめ商品の送付先となる住所を登録したユーザーID付きのプリペイドカードをつくり、ID入力のみで手軽にインターネット通販を利用できる仕組みをつくったらどうか。ネット通販は「欲しいものが欲しいときにすぐ手に入る」という、私が考える小売業の理想にとても近い。しかし、通販の利用に必須となる個人情報の入力作業は少々煩雑だ。安全面への不安もある。このプリペイドカードに登録するのは商品を送る先の住所だけでよく、作成や入金はスーパーやコンビニで簡単にできる。カードの残高は通販サイト内で計算され、残高の額まで買い物できる。また、カード利用額に応じてプライベートブランド(PB)商品の割引をする特典を付ければ、商品の売り上げアップにもつながるだろう。セブン&アイ・ホールディングスなら「nanacoカード」に商品送付先の住所を登録できるようにして「オムニセブン」や「ロハコ」で利用できるようにしたらいいかもしれない。

宅配と見守り

谷村 悠真(海陽学園海陽中等教育学校2年、13歳)

 日本では、少子高齢化や過疎化により「買い物弱者」が増えてしまうだろう。そこで、コンビニやスーパーから注文したものを当日中に配達するようにしてはどうだろうか。1つの拠点から幅広い範囲にサービスを提供できるので、人口の少ない地域にもほかの地域と同じレベルのサービスを提供できるのではないか。買い物弱者には一人暮らしのお年寄りなどが多い。利用者本人やその親族のために、宅配サービスに見守りサービスをプラスできるようにしてはどうだろうか。一人暮らしのお年寄りなどは地域から孤立しやすい。宅配スタッフが利用者の健康を確認したり、利用者とコミュニケーションをとるようにしたりしてはどうだろうか。異常を感じたら病院や親族に連絡をするようにする。また、普段から相談に乗るようにすることで、詐欺の被害などを防ぐこともできる。

情報端末で問診、救急病院の手配も

丸山 将興(会社員、40歳)

 休日や夜間に風邪などで体調が悪化したり、軽い傷を負ったりしたら、指定の病院へ行くことになる。ただし、お年寄りや小さな子どもを抱えた親などは病院に出向くこと自体が難しい場合が多々あるものだ。そこで規制緩和が前提となるが、店舗にある情報端末を改修し、検査機能やテレビ電話を付けて時間外に問診を受けられる態勢を築いてはどうだろうか。ATM網等を支える強力な通信インフラを活用し、血圧や脈拍、外傷の程度といった情報を多く集めて診断に生かし、緊急の場合はすぐに救急病院を手配する。薬が必要なら薬剤師と面談できるようにして、店内に常備する医薬品を即座に渡せるようにする。また、既往歴や処方薬のデータを店舗で利用できる各種カードに蓄積し、飲み合わせの副作用を防ぐ工夫をする。小売業のインフラとサービスを組み合わせれば、地域の医療体制を補完する大きな可能性がある。

走るコンビニ

森田 陽翔(海陽学園海陽中等教育学校2年、14歳)

 コンビニは、少子高齢化や女性の社会進出で高齢者や女性の顧客が増加している。足腰が弱く、自由な外出が困難という高齢者は今後も増えるだろう。仕事と家事を両立させているため、忙しくてコンビニに行く時間ももったいないという顧客もいるだろう。この両者の顧客に対応したシステムとして提案するのが「走るコンビニ」だ。トラックの荷台を側面から開くようにして、荷台の部分に設置したカウンターに、売れ筋の商品を並べ、そこで購入するシステムだ。専用のスマホアプリと連動させ、日時や場所を指定し、顧客の都合の良いときに都合の良い場所で効率良く買い物ができる。このシステムで、高齢客は自宅の近くまでトラックに来てもらうことで体への負担を軽減でき、働く女性は時間を有効活用できる。このシステムが定着すれば、人々により良い暮らしを提供できるだろう。

購入データで「お見合い」

斎藤 智紘(一橋大学法学部3年、22歳)

 消費者の個人データを利用したお見合い事業を展開したらどうだろうか。最も消費者に寄り添ったサービスを提供できるのが小売業という業態だ。消費者とのつながりを最大限に利用することこそ、理想の小売業だと思う。小売業者は個人の食べ物の購入データから、本や音楽CDといった娯楽品の購買記録まで、幅広い情報を持っている。そしてこうした情報は日常生活と密着しているため、嘘をつけない。自主的に申告する情報をもとにしたソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)のマッチングアプリやお見合いサービスと違い、信頼度の高い情報が小売業者には集まっている。そして信頼性の高い個人の食の好みや趣味といった情報は、自分と相性の良い相手を見つけるうえで大きな助けとなるだろう。また、少子化や晩婚化が社会問題となっている今、新たにお見合い事業を展開することは事態の解決に貢献できるかもしれない。

時間外保育で親子が集う場に

森 果穂(愛媛大学法文学部3年、21歳)

 私の両親は共働きで、保育園のお迎えはいつも祖父母。祖父母の助けがあったからこそ、フルタイムで働くことができたのだと思う。しかし、地元を離れて仕事をする人も多く、身近に頼れる人がいるとは限らない。そこで、働く女性の支援策として、時間外保育のサービスを提案する。専門の従業員が、子供たちを保育園に迎えに行き、家の最寄りのセブン&アイホールディングス系列のスーパーやコンビニエンスストアの託児所で、仕事が終わる時間まで預かる。最寄りの、おなじみのスーパーやコンビニに設けられた託児所に子供を預けているため、親は帰宅途中に、寄り道することなく迎えに行くことができる。また、子供のお迎えのついでに晩御飯の食材を買って帰ることもできる。国内に張り巡らされた店舗網を駆使し、女性活躍の社会の変化に対応することで、女性が働きやすい日本になると思う。

健康データから商品やサービスを推奨

野呂 厚史(自営業、58歳)

 私の理想とする小売業は、お店に入ったらその時の身体の状態、肉体的、精神的な健康状態を瞬時に数値化してくれて、スマートフォンに送信。そのデータを基にお勧めの商品を教えてくれたり、病院やジム、マッサージなどの予約を自動で出来たりするものです。リフレッシュが必要な人には旅行のプランなども。会員登録している方には割引特典やより詳しいデータを提供してくれます。また、会員の健康状態のデータは保存されているので、次回の来店時に改善点や悪化具合を比較・認識することができます。これまでは欲しい物を買うためだけに来店していたのが、自分の健康を維持したりするのに必要な物をお店から教えてもらえる事になります。そういったサービスにこそ価値があると思います。

平面コンビニから立体コンビニへ

柴田 寛(NPO理事、64歳)

 大都市近郊のコンビニについて提言したい。同地域のコンビニの多くは平屋で、しかも建屋の面積は敷地の3割程度にすぎない。来客用の駐車場はある程度は必要であるが、現状のような土地の低利用を放置してきた「平面コンビニ」というビジネスモデルは早急に見直すべきだ。これからのコンビニは、従来以上に多機能化、高効率化を図り、モノとサービスを総合化した地域の拠点(よろずや)としての役割が求められている。このためには、これまでの「平面コンビニ」から「立体コンビニ」に大きく変貌することが必要である。具体的には、3~4階のビルを建設し、1階には中核となるコンビニが入居。他の階には地域のニーズが高く、シナジー(相乗効果)が期待される託児所、ランドリー、学習塾、カフェ、宅配受取所等を入居させてはどうか。また、500m前後のコンビニの商圏を考慮すると、四輪用の駐車スペースは減らし、シェアライド用の駐輪スペースを設けるべきだ。

EV普及のキープレイヤー

野口 裕太(教諭、33歳)

 セブン&アイ・ホールディングスの2万店を超す国内店舗網は、新しい技術やサービスを全国に一気に広げる可能性をもったネットワークであると言える。例えば、世界的に自動車の電動化が一気に進んでいるが、EVの普及の壁になっているのが給電施設の不足である。新しく給電設備を設けるには決して少なくないコストがかかるし、給電可能な公共施設は現状ではほとんど皆無である。これではEVの普及が進まないばかりか、国を挙げてEV化を推し進めている欧州や中国に後れを取ってしまう。そこで、自動車メーカーとセブン&アイ・ホールディングスが手を取り合って、2万店を超す国内店舗網にEVの給電拠点を設けてはどうだろうか。全国どこに行っても充電をすることができれば、消費者も安心してEVの購入を決めるのではないだろうか。また、充電完了を待っている間に店舗の中で商品を購入し、しばし寛ぐといった消費者の姿も見られることだろう。

3D投影とAIで自分だけの店舗に

北岡 道和(駒沢大学グローバル・メディア・スタディーズ学部2年、20歳)

 セブン&アイグループの店舗に訪れる顧客は、今後高齢化に従って減っていくことが予想される。日々の買い物に困る人々のことを指す「買い物難民」という言葉も近年多く聞かれるようになってきた。そこで、3Dプロジェクションマッピングを使えば、買い物に行けない人でも家にいながらまるで店舗にいるかのような体験ができるようになるのではないか。商品を3Dで投影することによって実際に店舗で買い物をするように商品を見ることができるようになる。これはネット通販の商品を実物で確認できないという弱みの解消にもつながる。店員の役割はAIスピーカーがこなし、コミュニケーションを取ることもできる。また、閲覧や購入した商品をAIが学習することで個人の好み、ライフスタイルに合わせたパーソナル店舗を形成することができる。技術を活用することで、顧客の変化にうまく対応していくことができそうだ。

行きも帰りも財布だけの小売業

安留 詩織(産業能率大学経営学部2年、20歳)

 店舗型の小売業は商品を手に取りレジに行きお会計をする形だ。だが、私が求める小売業は、重くて持ち帰ることができないお年寄りや身体が不自由な方のためのサービスである。私が考えるサービスは、店内には商品を置かず商品のバーコードが書かれている紙を取り、レジに行くだけいい。商品は店員が倉庫から出してくれるシステムだ。帰りにも商品を持たずに配達をその場で手配してくれる。車で来店し、自分で持って帰ることができる人には割引をするサービスも考えている。

小売業が独自の年金制度を

西藤 誠(海陽学園海陽中等教育学校4年、16歳)

 日本は高齢化が進み、国家予算の内訳を見ると社会保障関係費の割合が年々増加している。さらに、少子化で将来、若者の負担が増えることは目に見えている。そのため、自身の老後を心配して、消費を抑えて貯蓄をするという傾向がある。そうすると国にお金が回らなくなり、不景気となる。このような状況を打破するために「小売業が独自の年金制度をつくる」ことを提案する。毎年、小売業に一定の掛け金を支払い、その見返りに老後はその業者の販売する商品を無料または低額で購入できる制度だ。この制度をつくれば国民の老後が保障されるだろう。業界側にも安定した需要や収入を得られるというメリットがある。集まった掛け金で投資をすることも可能だ。消費が増え、日本の景気が良くなる。小売業による年金制度は国民、業界、そして日本全体に良い影響を及ぼす、まさに一石三鳥の制度ではないか。

講  評

 「あなたが考える理想の小売業の姿は何ですか」との問いに、読者の皆さんから多くのアイデアを投稿いただき、ありがとうございました。身近で親しみやすい小売り業、サービス業を軸にするセブン&アイ・ホールディングスに対し、暮らしやすい社会作りを期待されていると改めて認識できました。また高齢化対策など社会的課題により一層、向き合っていく必要性と使命があると痛感しました。

 今回寄せていただいたアイデアは、今の時代を映すように、AI(人工知能)や、すべてのモノがインターネットでつながるIoT技術を活用したものが多く、関心の高さが表れていると思います。

 まずは「人々の健康をサポートする存在に」です。IoTの時代にあって、健康管理の場として小売業がお役に立てる可能性を示してくれたアイデアで、注目に値します。社会環境と技術革新の変化をうまくとらえていますね。

 「隙間時間にアプリで買い物」は、デジタルと店舗をうまく生かした方法で、利便性のさらなる追求につながる提案です。忙しい日常で時間を節約しながら、日々の買い物ができる仕組みは、働く女性にとっても大きなメリットになるでしょう。献立の提案も時間の節約につながるかもしれません。

 「外国人訪日客にアプリを提供」はぜひとも取り組むべき課題です。セブンイレブンの一部店舗ではスマートフォンで商品を読み取り、その原材料を外国語で表示する実証実験を進めています。今後、ますます訪日外国人が増えることを考えれば、早い段階で実用化したいものです。

 私たちが小売業として取り組むべきことはまだまだたくさんあると感じています。これからもセブン&アイグループの総力を結集して皆さんの期待に応える商品やサービスを提供していきます。

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