未来面「世界を変えよう。」経営者編第8回(2018年1月9日)

課題

「建築で世界の街をどう変えますか」

芳井敬一・大和ハウス工業社長

 大和ハウス工業がこれまで手掛けてきたのは衣食住の「住」の部分ですが、時代の変化とともに人々が住まいに求めるものも変わってきました。最初は雨露がしのげればよかったわけですが、次第に個性が重要になり、超高齢社会を迎えた今は「絆」という要素が大切になっています。女性のひとり暮らしも増えており、街づくりの観点からも、安心や安全ということがとても大事になっています。

 もちろんそれだけでは足りません。日本では「四季」の感覚も不可欠です。我々はそうした環境に配慮した住宅を品質と量の両面から安定的に提供する「建築の工業化」を推し進めてきました。東京都世田谷区で開発した高級木造注文住宅プロジェクト「プレミアムグランウッド世田谷・等々力の家」では、屋外だけでなく、家の中にいても四季を感じられるような工夫を施しました。吉野杉など国産材をふんだんに使った住宅というのも大きな特徴です。

 我々が持つ感覚や日本で育まれた建築技術は海外にも十分通用すると思っています。米国や中国、オーストラリアなど海外での事業展開に力を入れており、中国の大連市では延べ床面積が52万平方メートルにも及ぶマンションや商業施設などの複合開発をしています。当社としては2件目の開発ですが、この規模になると、建設というより、街づくりといってよいでしょう。

 街づくりを通して人々の暮らしや経済を豊かにしてきた例は過去にも色々あります。例えば安土・桃山時代の「楽市・楽座」は、税制によって人口を増やし街の活性化に成功した例だといえます。中国にならった飛鳥時代の藤原京は碁盤の目の街に様々な施設を置くことで政治や防災という目的を巧みに実現しました。

 その意味では2020年に開かれる東京五輪も東京の街づくりを促す意味で重要なイベントです。選手村を開発するコンソーシアムに我々も参画していますが、子供たちが将来にわたって使えるレガシーをどう残していくかという視点が重要です。英国は12年のロンドン五輪を通じて街をハイテク都市に変えるなどして、都市ランキングでも順位を上げました。

 では皆さんは建築を通じ日本や世界の街をどう変えていったらよいと思いますか。日本では地方の交通機関の不足や空き家などが大きな社会問題となっています。一方、新興国や途上国では、個性を持った住宅を購入したいという人が増えてくるでしょう。そうした世界の建築ニーズにどう応えていったらいいのか、ぜひ皆さんのアイデアをお聞きできればと思います。たくさんのご応募をお待ちしております。

アイデア

暮らしに合わせて「移動する家」

田口 大貴(東北大学経済学部2年、21歳)

 すべての建物を移動できるようにしたらどうだろう。例えば郊外で病院が近くにない場所に住んでいて、通院が必要になった高齢者の住む家が病院の近くに移動する。子供が生まれ、外で遊べる公園があればいいなと思っている家族の家は、公園の近くに移動する。このように人々のライフスタイルや様々な事情を吸い上げ、人工知能(AI)によって街の形の最適解を導く。街の中での移動は自動運転やナビゲーションのアプリが案内する。建物を移動させる手段や基礎はどうするのか、また法的な課題も多くありそうだが、人々の生活の変化にあわせて街自体が変化すれば住民の満足度が最大化されると思う。

地下に広がる「アリの巣」方式に

辰己 由真(駒沢大学経営学部4年、22歳)

 日本の建築はアリの巣のように発展していくべきだ。地上ではなく地下に建築を広げていくのである。今日では地上に建物があふれすぎていて統一感がなく雑多な印象を受ける。建物をつくるために多くの自然が破壊されてきた。高層ビルやタワーが物珍しかった頃はそれらが街のシンボルとして映えていたが、当たり前となった今ではかえって視界を妨げたり圧迫的な印象を与えたりすることもある。地上に建物が増える一方で、地下へと広がるモノもある。代表例が渋谷駅だ。JR線は地上へ、東急線は地下へと伸びているのが特徴だ。鉄道が地下に入れば地上から線路や踏切が減り、空いた土地に芝生や木や花を植えることができる。このようにアリの巣方式で建築が発展すれば自然の植物があふれる豊かな地上が実現できるかもしれない。

何でも分解・再構築できる建築

萩原 慶一(公務員、45歳)

 人生100年時代といわれ、我々は大きく不確実に変わる社会や技術、地球環境に対していま以上に的確な対応が必要となる。変化を受け入れて挑戦する者こそ適応できるが、取り残される者が出てしまうことは避けられない。世阿弥は「珍しきが花(新しいことが大切)」「人生時どきの初心を忘れてはいけない」と記した。革新は基本のもとにある。個性的な建築も悪くはないが、地球環境や生命、健康を守ることこそが建築の最大の役割であり基本だ。目指すべきは「オーバーホール&ビルド」、何度でも変化に合わせ分解し再構築できる建築だ。耐震や断熱、長期にわたる寿命といった最低限の性能をプレハブ部材で簡単に供給することで、世界の建築や街の水準を高める。個性はその上での表現だ。日本人は鼻と花の言葉に見るように、人と植物を区別なく生命として捉えてきたという。四季の変化に植物は自然に再生する。自然なプレハブが幸せを導く風景が描けたらよい。

以上が紙面掲載のアイデア

丸い街づくり

小原 亮太(海陽学園海陽中等教育学校1年、13歳)

 都市は住民の利便性だけでなく、行政機関どうしやその他の機関と連携しやすい環境が必要だ。それを踏まえて、僕は「丸い街づくり」を提案したい。街の中心部に住宅街を置き、主要な道路をクモの巣のようなイメージで放射状につくる。そして、東側には役所や郵便局、警察署、大きな病院などを設置し、西側には商店街やレストランなど買い物に関係する施設を集める。このように関わりのある建物をそれぞれブロックごとにまとめるのだ。住宅街を中心に、各施設へのアクセスは、どこでも大体均一になる。そのブロックまで簡単にたどりつけるので、迷う心配はない。昨今「コンパクトシティー」が叫ばれるようになり、より効率的で機能的な街が求められている。シンプルで機能的な街がこれからの中心となっていくだろう。

世界の街を共有の場へ

中村 亮太(駒沢大学経営学部4年、22歳)

 建築で世界の街を「共有の場」にしたい。今日の世界ではモノに対する意識が「所有から共有」にシフトしているのを感じる。例えば、米民泊大手のAirbnb(エアビーアンドビー)やライドシェア大手の米ウーバーテクノロジーズ、中国の滴滴出行といったサービスがある。自宅を宿泊先として提供するとき、宿泊者は初対面ということもあり、貴重品や金品が心配になるだろう。そこで、セキュリティー対策が整った設備を提供し、双方が安心して過ごせる環境をつくる。例えば、家族だけが入室できる扉やシェアコンセプトのある家だということを外部に知らせるトレードマークを設置する。また一般の邸宅とは違う、と人々が分かるように斬新なデザインを施す。セキュリティー対策がなされた民泊、と分かるようにすれば空き巣による被害は減るだろう。人々に選ばれる民泊になるには、外では学ぶ機会に乏しい折り紙やけん玉、カード遊びなど日本の文化を体験できるような付加価値サービスを提供できるかどうか、が重要になると考えている。

ひとりにならない街づくり

三上 和真(駒沢大学経営学部4年、23歳)

 アパートより寮に近い集合住宅を増やすことが街を変えることにつながると考える。晩婚化や不安定な経済状況による少子高齢化が進んでいる現在、住居にコストパフォーマンスを求める若者が多いはずだ。私自身、地元の北海道から上京してきて4年間大学生活を送ることは経済的に大変だった。そのときにいつも支えになってくれたのは同じアパートに住む仲間の存在だった。大学生や料理・美容などの専門職を目指す20代が多く、中には女性も暮らしている。最初は挨拶から始まり、今では皆でお酒を飲むような関係になり、大切な人間関係を築くことができたと思っている。日々の暮らしの安全にはご近所付き合いが大きい。必然的に出会いやコミュニケーションの機会も与えてくれる。一人暮らしに陥りがちな住まいのあり方を見直し、1つのコミュニティーを形成できるような仕組みを盛り込んだ集合住宅を増やしていくことが、これからの社会ニーズに合わせた街に育つのではないだろうか。

風通しがいい街

平本 えりか(日本大学第三高等学校普通学科3年、18歳)

 自然と共同するために1~2階までは柱のみにして3階より上に人間が住む家。昔の高床式を現代版にアレンジをするのである。上から自然が見え、自然が身近に感じられる。畑が家の階段の下にある。また、見た目は木材の家なのに材質は違うような家。地上と家との行き来は空飛ぶ車を利用するような家。さらには、天井や壁などに粘土のようなもので置く場所などを自由に独自で造れる家など、さまざまな新しい家でユニークに街を変えてほしいです。

耐震建築があたりまえの世界

秋場 功邦(慶応義塾大学大学院経営管理研究科1年、23歳)

 我々日本人は残念ながら何度も震災に遭ってきた影響で外国人に比べて地震への免疫がついているように思う。震度3程度で全く動揺しない私を見た外国人の友人に「日本人は異常だ」と言われてしまうほどである。私はこうした日本人の「異常性」が正常になる世界にしたい。つまり、世界中の建築に耐震技術を普及させたいのだ。しかし、海外の耐震基準は日本に比べ大きく低く、コストの高い耐震技術を導入する必要性についての理解がないのが現状だ。そこで、耐震技術をパッケージ販売することによるコスト削減を提案する。現在、耐震技術を海外で導入するには技術を持つ日本のゼネコン主体で現地のサブコンと施工を行わなければならない。そこで、日本のゼネコンが耐震技術導入の専門チームを立ち上げ、海外での施工の際にコンサルティングを行う。専門チームが現地のゼネコンを学習させることで、今後の導入の施工費の削減が期待できるのではないだろうか。

未来の建築

黄 勤(駒沢大学経営学部4年、25歳)

 未来の建築は3Dプリンターで建てる。商業を発展させるためにはITが必要だ。たとえば、アパレルのネット販売だ。建築もITともっとつながると新しい未来の扉が開ける。未来の建築はレゴブロックみたいに3Dプリンターでプリントして組み立てて家を作る。現在、日本では少子高齢化が進み、労働力が減少しつつある。3Dプリンター技術を建築業に取り入れると、労働力不足の問題解消や高騰する建築費用の削減につながる。資源が節約でき環境にも優しい。お金を節約して時間をかけず、手軽に住みたい場所で住みたい家を造れる未来だ。

空中田園都市

稲越 陽一(デザイナー、58歳)

 地球温暖化が世界の異常気象により如実に現れた今日、早急に世界中を緑あふれる田園都市で再構築しなければならない。しかし世界の大都市圏では高層ビルが立ち並び、隙間は自動車や電車が行きかう交通網で埋めつくされている。とてもそれらを撤去して田園都市を再構築するのは不可能だ。しかし空を見上げてみると無限に広がる空中空間がある。空中に新たな第2の大地を作り、徹底的なサステナビリティーをコンセプトにした「空中田園都市」を作り出すのはどうか。地上の高層ビルはすべてソーラーパネルと壁面緑化を施し、エネルギーと酸素を田園都市へ供給する生命の木へと変わる。四季が織り成す自然のシンフォニーの中で暮らすことで人々が現代社会において忘れかけていた人間性を取り戻し、思いやりという情感から沸き起こる真のコミュニティーが生まれるのではないだろうか。

折り畳める家

ハス・ビリゲ(産業能率大学経営学部2年、25歳)

 折り畳める家を誕生させることで、世界の街の風景を変えることができるのではないか。建物を建てるとその場所は占領され他の目的で使えなくなる。建物の老朽化で街の風景にあわなくなることも出てくる。建て替えるのも大変で、建て替えている間はその場所は使えなくなる。折り畳める家があれば、旅行先でもゆっくり過ごせる。短時間で解体もできるようにすればどこにでも持っていくことができて自由度が高まる。私は日本に住むことを通して、地震の怖さを知ることができた。地震で救済措置が遅れても、折りたためる家ならすぐに建てられるため被害の拡大を抑えられる。地震はいつ起きるかわからない。折り畳める家を非常用として備え付けておくことも必要だと思う。

味噌汁みたいな家

金井 明香里(駒沢大学経営学部2年、20歳)

 家に求めるものは安心と心地よさだ。これは全世界共通して言える。安心と心地よさを言い換えると「ほっとする」になる。ほっとすると言えば日本人なら味噌汁だろう。味噌汁を飲んだ時のようなほっとする家が現代で求められている。最近は技術が発達し買い物も1人で自宅でできる。1人で住む老人も増えてきている。昔より近所付き合いも減っているような気がする。不自由ではないだろうが、本来心落ち着く場所であるはずの家がどこか寂しい、冷たい場所になっている。例えば、暖色で統一された家、柔らかい素材でできた家など柔らかさを強調したり、マンションなら隣の部屋と1部屋だけつながっているなど、すぐに人と触れ合える場を設けることで少しでも安心感を持てる家造りができないだろうか。スタイリッシュな建物や使い勝手の良い家も魅力的だが、「ほっとできる」を頭の片隅に入れておいてほしい。

建築から人々を幸せに

小池 美帆(駒沢大学経営学部2年、20歳)

 現在、世界にはその国のイメージに合った建物が多くある。例えば、歴史的建造物が多い京都市だが、それを維持しているのが景観条例だ。条例では看板の大きさや色、建物の高さを規制している。あまりにも規制が細かいため、市民にとって最も厳しい条例であるとも言われた。しかし、この条例によって特に観光客からは好意的な意見が多く寄せられている。景観を守る条例を京都だけではなく、全国で施行するよう提案する。各都道府県が持つ特有の雰囲気や、特産品に合わせて街の建築物のデザインを統一してみたら良いのではないか。このようにすることで、日本人として景観や街づくりに対する意識が高まるのではないかと思う。2020年には東京オリンピックが開催されるため、世界中から観光客が来ると見込まれている。訪れた場所が統一された街並みであったら日本に来て良かったなと思ってもらえると思う。街並みから人々を幸せにすることが出来るのではないか。

講  評

 「建築で未来の街をどう変えるか」という課題に多くのご提案をいただきました。3Dプリンターで作る「未来の建築」や「移動する家」などユニークなものから、持続可能な社会に向けた「何度でも再構築できる家」、「お味噌汁みたいな家」のように共感が持てるものまでアイデアは多岐にわたります

 すでに試みがなされているご提案もありました。例えば「アリの巣」や「地下都市」といった地下空間の活用です。鉄道を地中化して空いた地上空間を緑化し、新たなふれあいの場をつくるプロジェクトが各地で進んでいます。住まいでも地下空間の上手な活用法を真剣に考える必要があると思っています。

 私たちは建設という事業を通じ地域の皆さんと交わることが多いですが、ある日「芳井さんにとって家とは何ですか」と聞かれたことがありました。そこで答えたのが「ほっとできる場所」です。人口減少を受け、コンパクトシティが話題になっていますが、特に高齢者にとってつらいのは異なる住環境を押しつけられることです。人に合わせて建物を移動させるなど、そこで住まう人の気持ちに寄り添い、柔軟に発想することが大切だと思います。

 一方、家の中で様々なデータを収集し、人工知能(AI)で住みやすい環境を提案することも重要になっていきます。最近、AIスピーカーを活用した取り組みを始めましたが、将来的には健康状態や自然環境などの情報を集め、住まいを自在に変化させていけたら素晴らしいのではないでしょうか。

 そして建物に忘れてはならない重要な要素が「絆」です。過去の大震災を通じ、私たちはその重要性を実感しました。高齢者世帯や単身世帯が増えていく今後は、仮想現実(VR)技術などを活かし、家族や地域の人々がバーチャルな空間の中で絆を深められるような仕組みづくりも重要だと思います。

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