未来面「世界を変えよう。」経営者編第3回(2017年6月5日)

課題

「海から世界を変えるために何ができますか 」

田中孝雄・三井造船社長

 日本は陸の面積では世界61位ですが、海の面積、つまり資源開発などの権利を有する排他的経済水域(EEZ)などの広さでは、世界6位の海洋大国です。しかも1位の米国と大きな差はありません。海は地球の7割を占めるほど広いですが、その開発はまだまだこれからです。海底に眠るエネルギー資源、希少金属などの鉱物資源、魚などの食料資源、レジャーなどの観光資源と、海はまさに可能性の宝庫です。

 三井造船は2017年11月に、創業100周年を迎えます。ずっと海と共に生きてきた会社です。船を作るだけでなく、海に対する人々の夢や期待を、1つずつかなえてきました。例えば、海底油田開発では世界で指折りの会社ですし、日本の近海に大量に埋蔵されているといわれるメタンハイドレートの開発でも、主導的な役割を担っています。近い将来、メタンハイドレートの採掘が実現すれば、日本は資源輸出国になれるかもしれません。海は日本だけでなく、世界を大きく変える可能性を秘めているのです。

 「チームクロシオ」と呼ばれるプロジェクトでは、海底地図の作製を試みています。陸の開発はかなり進み、宇宙開発も徐々に始まっていますが、海底にもまだ多くの未開のフロンティアがあり、どんな未来が開けるのか考えただけでわくわくします。こうした海への夢や期待を実現する試みには、当社だけでなく、世界中から優れた技術や高い志を持つ仲間が結集し、世界の人々のために日夜、汗を流しています。

 かつて日本には「海洋牧場」という国家的な構想がありました。豊富に炭素などを含む昆布を育て、そこからエネルギーを確保する試みでした。残念ながら頓挫しましたが、海は人々にとって、エネルギーだけでなく、食料の宝庫でもあります。貴重なたんぱく源である魚を海中で捕獲し、陸上に運ぶまでの間に加工する技術が実現すれば、鮮度やコストなど様々な面で、魚の流通システムは大きく変わるでしょう。

 洋上での風力発電に力を入れてきましたが、潮流を活用した発電など新しい電源開発の研究も進んでいます。潮流発電が現実になれば、海底に発電設備を置き、海中で様々なことができます。海中工場も夢ではありません。

 海からの多くの恵みで人は生きてきました。当社は次の100年もまた海と共に生き、海がもたらす恩恵を世界の人々に届ける会社であり続けます。そこで皆さんにお願いです。海から世界を変えるために、私たちは何ができるでしょうか。大胆で独創的なアイデアを教えてください。海は無限の可能性を秘めています。私たちと共に、海から世界を変えていきましょう。

アイデア

洋上発電と海水の淡水化、一体的に

森 孝嘉(会社員、37歳)

 海水を淡水にするプラントを開発し、風力や潮力、沿岸太陽光などを使った洋上発電、沿岸発電を利用する。電力網や配水パイプラインをセットにして、丸ごとパッケージとして規模に応じて全世界の沿岸地域に設置できるようにしたらどうだろう。設置した後のメンテナンスやオペレーションは日本企業と現地企業による合弁会社にすべて委任する体制にする。全世界のどの沿岸地域でも、そしてどんな環境でも設置できる商品にして、メンテナンスとオペレーションは合弁会社が請け負う。これらを通じて現地化を進めれば、各地域の経済の自立を促すことができるようになる。継続的な収入を確実に得られる仕組みにすることが重要だ。メンテナンスなどで必要になる部品の調達も現地で対処できるようにすればコストを抑えられる。同時に現地の雇用創出にもつながるだろう。

国際海洋ステーションで深海調査

村田 晃一郎(海陽学園海陽中等教育学校中学3年、14歳)

 海から人々に恩恵をもたらすためには海をよく知る必要があると思う。宇宙には国際宇宙ステーション(ISS)がある。一方、同じく未知の世界が広がる海にはそのような施設はない。そこで、国際海洋ステーション(IOS)を設立し、海洋調査をすればよいのではないかと考える。世界最深のチャレンジャー海淵など、海には通常の潜水艇では到達できないところがある。宇宙服のように海洋服を開発し、このような場所でIOSの外に出て、潜水艇や地上からだけでなく、人の目によっても調査をするのはどうだろうか。こうした技術は、米航空宇宙局(NASA)、宇宙航空研究開発機構(JAXA)などとの連携で実現しやすくなるだろう。IOSは三井造船が主体となって他の日本の海洋調査にかかわる企業を包含し、オール日本で世界をけん引していくことで、日本経済全体によい循環が生まれ、わが国が持続的に発展できるのではないだろうか。

世界各地に「水中水族館」

木原 聡美(駒沢大学グローバル・メディア・スタディーズ学部2年、20歳)

 レジャー施設の活性化につながると考えている。水族館を海の中に造るとしよう。現在は水中での運営は容易ではない。ただ、潮の流れを生かして電気を生む「潮流発電」が現実になれば、海中や海底で様々な活動が可能になるといわれている。私たちは現在、飼育する魚を地上で見て楽しんでいる。水族館を逆の発想で考えると、私たちがガラスで造られた施設に入り、実際に泳いでいる魚を見ることができるようになるのではないか。映画などで体験するような世界を、現実のものにする方法だと考える。自由に水中で生活している生き物を見る「水中水族館」が実現すれば、今後のレジャー産業を活性化させるに違いない。また、地域によって生息する魚の種類は異なる。世界各地に水中水族館を造れば特徴の違いが生まれ、集客力の向上につながるだろう。

以上が紙面掲載のアイデア

海上の火力発電で離島に送電

岸 奈央樹(中央大学商学部1年、18歳)

 海上に浮かぶ島に火力発電所を作ることで、世界が変わるのではないだろうか。海に浮かぶ様々な島、あるいは列島の中心に発電施設を設置して、電気の通らない離島に電気を供給できるようにする。送電するには、非常に太い送電線を水中に沈めて、途中で切れないようにするのが重要だ。海上の発電なので、仮に大きな事故が起きてしまっても、人への被害は最小限に抑えられる。火力発電に使う燃料は石油や石炭だが、その運搬時には陸上よりも海上で扱う方がコストを抑えられるのではないだろうか。最近では、海底からメタンハイドレートなどの資源が見つかっている。海を生かして燃料の採掘と発電、送電が一気にできるようになるかもしれない。

海中鉄道でつながる世界と日本

中富 加菜(駒沢大学経営学部2年、19歳)

 海中を走る鉄道を提案したい。今、開発が進んでいるリニアモーターカーの技術を利用すれば、時速が500キロメートル以上として、日本と米国を約19時間で結べる。上海や香港などアジアの主要都市となら、もっと短時間で行き来できるようになる。海底を走れば、台風など地上の天候に左右されることも少なくなるだろう。私は実家のある千葉から車で東京に出るには東京湾アクアラインを使うが、海の中を車で走ることにとても感動した。海中トンネルに、水族館の水槽で使われるアクリル樹脂のような素材を利用すれば、海の中を眺めながらゆったり走る「観光列車」となる。飛行機や船と速さを競うのではなく、こうしたコンセプトも面白いだろう。水圧や浸水対策といった課題はあるが、まずは東京湾の周遊鉄道から実用化を探ってみてはどうだろうか。

海に浮かぶ大型商業施設

山木 敬吾(中央大学商学部1年、18歳)

 海上に大型の構造物を建設し、商業施設にするのはどうだろうかと考える。陸上では大型商業施設が開業するたびに、周辺の交通渋滞が社会問題となっているが、海の上の大型商業施設への移動手段は船に限られるため、都市部に大型施設を設けるよりも渋滞は軽減されると思う。船に乗ろうとして港へ向かう車が渋滞を引き起こすことも考慮して、海上ショッピングモール行きの港を複数開港させるといいだろう。このような商業施設と港をセットにして全国各地に建設することができれば、造船会社や船の運航会社など関連産業が活況を取り戻すことができるかもしれない。訪日観光客を呼び込むことができれば、さらなる地域の活性化にもつながるはずだ。我々の生活エリアを陸だけでなく海にまで拡大することで、新たな市場創出による雇用の増大などに大いに貢献できるだろう。

養殖と水耕栽培で食糧難を解決

上田 純奈(駒沢大学経営学部2年、20歳)

 魚の養殖と水耕栽培を組み合わせる新しい農業を海で実用化できたら、世界の食糧問題の解決につながる可能性が開けるだろう。近年、地球温暖化によって海面の上昇が進んでいる。海の体積が増えるなかで、海水をうまく利用できないか考えたとき、このシステムを思い出した。魚の排せつ物を微生物が分解し、それを植物が栄養として吸収する。そして浄化された水が再び魚の水槽へと戻る、という循環型のシステムを海と農業にあてはめて進めたらどうだろう。従来の土を使う農業と比べて大幅に節水でき、水不足で困っている国々でも取り組める。肥料の準備や水を替える手間もいらず、作物の生産性が高いなどメリットは多い。課題は現在、淡水でしか実用化できていない点だ。もし、海水を活用で応用できれば、広い海で大規模に事業を進められる。海の面積で世界第6位、という日本にとって大きな産業になるだろう。

無人自動運転式の帆船を造る

菅野 優(自営業、42歳)

 無人自動運転式の帆船を造る。人工知能を利用し気象情報から風況の良好な海域を選択する機能を持たせる。船体は前後ともへさきとなる対称な形状とし、帆を反転させて電車のスイッチバックのように引き返すことを繰り返せば、船体は姿勢を変えずほぼ同じ海域にとどまれる。風力発電設備等を搭載し、電力を自給するようにすれば、環境負荷はほぼない。台風や雷が近づいたら退避させる。各種センサを搭載し、気象情報や環境情報、海底情報を収集、送信させる。海洋は大気中の二酸化炭素の多くを吸収するため、海洋酸性化の問題が発生している。海草の育成には日光と二酸化炭素、適度な水深と水温、養分が必要だ。帆船上にプールを設け、海草を養殖する。適度な水温という条件も帆船の海域選択条件に加えることで、現地の海水をくみ上げプール内の海水と交換すると、海草が育って海水中の二酸化炭素が低減する。

海底センサーで食料問題解決

 

前田 明里(駒沢大学経営学部3年、22歳)

 魚の回遊ルートの特定や変更を促す海底センサーの開発は、世界の食糧不足問題の解決につながるだろう。魚のみが反応する超音波発生装置を組み込んだ小型センサーを開発し、日本の排他的経済水域内の海底に埋設する。それにより魚を漁獲ルートに誘導する。漁船は魚を誘導した地点で取ればよいため、燃料費などのコストが削減できる。産業全体の効率化も促し、無駄を省くことで魚の販売価格を引き下げることが可能になる。所得水準の低い国や発展途上国へ安価に輸出する道を開き、そうなれば食糧不足問題を解決する一助になるだろう。また、広義の意味での養殖業への応用も期待できる。魚の回遊ルートを特定すれば、集中的にエサをまくことが可能になる。世界的な乱獲で将来の漁獲量減少が懸念されるなか、効率的な魚の育成は重要だ。水産資源の確保の観点で日本の新たな切り札になり得る。

海の上のカジノ

山田 詩衣奈(中央大学商学部1年、18歳)

 日本の離島にカジノを造ることで多くのメリットが得られると考える。新カジノ設立で外国人観光客と国内の消費が増加し、税収もアップする。また、周りが海に囲まれているという状況をホテルやレストランでも最大限活用し、海の幸を使い日本食を振る舞うことで世界に日本をよりアピールすることができる。本島から船で2、3時間ほど離れた未開拓の島にカジノをメインとしたリゾート地を開発すれば、カジノのデメリットとして挙げられている、地元の人がギャンブル依存に陥りやすいという点を回避しやすいだろう。東京や大阪でのカジノ建設は治安を気にする地元住人の反発も大きいだろう。しかし、新しい島を開拓して高級リゾート地と化せば、反対の声も小さくなる。世界の日本への注目も高まるだろう。

漁港を海上ショッピグモールに

砂金 里佳(駒沢大学経営学部2年、19歳)

 日本の主要な漁港に海上マーケットを開き、観光地にする。広々としたきれいな海上で、採れたての魚をさばくのを見て新鮮なうちに食べる。訪日観光客に提供すれば、日本の伝統的な食文化を十分に満喫してもらえるだろう。魚だけでなく地域の食材を使った料理や酒、衣料品、雑貨なども扱う「海上ショッピングモール」にしてはどうだろうか。昨年の夏にタイの水上マーケットを訪れた際、その光景に興奮を覚えて再訪したいと思った。訪日客にも同様の感動を与えることができると考えるきっかけになった。訪日客は2016年に2403万9000人と過去最多になった一方、少子高齢化で日本の水産物消費量は減少傾向にある。その減った分を訪日客に消費してもらえるように工夫すれば、停滞する水産業を活性化する起爆剤になり得る。日本の素晴らしい食文化を世界に広める契機にもなるはずだ。

海洋の再生可能エネルギー「波力発電」

越後谷 淑(会社員、60歳)

 海は毎日の潮の満ち引き、波、潮流と自然エネルギーに満ちているのに、使われていない。唯一使われてきたのが、波力発電だ。海上のブイには波力発電機が使われ夜間の点灯に役立っている。出力は1台で最大500ワットで、豊後水道の水ノ子島灯台の岸壁にはこれが数台据え付けられ、無人灯台の灯を守っている。波の上下動で空気室が上下し、空気流が翼を回して3相交流発電を行う。発電部分は海水と接触しない。この技術を発展させ、国の固定価格買い取り制度に組み入れれば、風力発電を誘致しようとしている港湾でも導入が進むはずだ。また現在研究途上にある地上無線送電が実用化されれば、海上発電所も可能になるだろう。私は太陽光発電所の開発、運営に携わっているが、緑豊かな日本を無用に開発したいとは思わない。波力発電を発展させ、将来の潮流発電をはじめとする海洋再生可能エネルギーの道を切り開いてもらいたい。

CO2を海底に貯蔵

齊藤 晃平(駒沢大学グローバル・メディア・スタディーズ学部3年、20歳)

 世界の二酸化炭素(CO2)排出量は約330億トン。排出量世界第2位の米国がパリ協定を離脱したことは記憶に新しい。ちなみに日本は第5位である。米国が抜けた今だからこそ、日本が負う責任は重くなった。私が提案するのは「CCS」と呼ばれる技術だ。これは、排出したCO2を分離回収し、地表から1000メートル以上深い地層(海底)に貯蔵できる技術である。この技術が実用段階に入っていけば、約1400億トンのCO2が貯蓄可能になる。原子力発電には賛否両論があり、クリーンエネルギーも開発途上なため火力発電に頼っているのが現状だ。膨大な量を貯蔵することができるのは、広い海であるからこそ。実際に国内では北海道の苫小牧、世界ではノルウェー、カナダなどが開発途中である。海底に貯蔵するためには船や重機も必要になる。CCSを活用し、世界のCO2削減を先導する責任が先進国をはじめ、日本にはある。

命を救う海底バネ

高田 裕香(駒沢大学経営学部3年、20歳)

 大地震の発生源となる海底プレートに強力なバネを埋め込み、プレート同士がずれ込むときに発生する振動を吸収して津波を抑える。バネにセンサーを付ければ、プレートのごくわずかな動きを常に観測することもできる。現在は地面から出る電磁放射の周波数の変化で地震を予測しているが、よりリアルな情報を手に入れることが可能になるだろう。バネの中に磁石を入れれば、振動が発生する際の電磁誘導で発電もできる。センサーを駆動する電気となり、プレート情報の発信に役立つだろう。2011年に発生した東日本大震災では、津波が原因で多くの方々が亡くなった。津波の被害が大きかった地域では、6年たった現在でも仮設住宅に住む被災者がいる。プレートが重なる上にある日本では地震は避けられない。海底バネが悲惨な被害を防ぎ、多くの人の命を救う日が来ると思う。

講  評

 まるで海の持つ無限の可能性を映したかのように、今回、想像を超えるたくさんの提案をいただきました。社内の会議ではまず出てこないような、新鮮で夢のある意見が多かったと思います。

 「洋上発電」は実現可能性の高いアイデアです。いわば「動く海の発電所」で、離島や被災地など発電施設の建設が難しい場所でも、あらかじめ組み立てた発電施設をパッケージで運び込み、すぐに稼働できるようになります。カリブ海、地中海、西アフリカ、インドネシアなど島が多い国や地域で、動く発電所のニーズが大いにありそうです。

 「国際海洋ステーション」もワクワクしますね。今でも7000メートルの深海まで有人探査船で行くことができますが、大規模な海底基地を建設できれば、調査能力は飛躍的に高まります。深海は水圧が高く食料も乏しい厳しい環境ですが、それでも育つ生物の実態を解明できれば、陸上で暮らす人類の生活に役立つ新しいデータが見つかるかもしれません。

 「世界各地に『水中水族館』」は、レジャー資源としての海の可能性を感じさせます。スキューバダイビングが趣味という方も多いですが、海中リゾート施設が誕生したら、自力で潜らなくても、回遊する魚や美しいサンゴなどを目にすることができます。小さなお子さんでも海中での滞在が楽しめるので、人気が出そうですね。

 海の中にある施設や基地を運営するには、電力が不可欠ですが、潮流発電がその役割を担うことになるのでしょう。海中で発電した電気を陸上に運ぶのは大変ですが、海中で使うならロスも少なく、しかも環境にやさしいクリーンなエネルギーです。動く洋上発電所を組み合わせれば、かなりの出力を期待できます。海から世界を変えていく新しい試みの大きなサポート役となるでしょう。

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