未来面「世界を変えよう。」経営者編第9回(2018年2月6日)

課題

「あなたが考える50年後の損害保険は何ですか」

原典之・三井住友海上火災保険社長

 損害保険会社の主力商品は、時代とともに変遷してきました。今から100年前は航海のリスクに備える海上保険が売り上げの8割を占めていました。その後、高度経済成長期になって持ち家が増えると、火災保険が5割を占める中核商品となり、さらにモータリゼーションの進展によって、現在は自動車保険が5割を超えトップです。そして今、自動車保険も転機を迎えています。完全自動運転が普及すれば、保険の商品設計は大きく変わっていくでしょう。

 では次の中核商品は何か。これから先、損保会社の担う大きな役割としてデジタル社会、サイバー社会におけるリスクへの対応があると思います。昨年、身代金を要求するコンピュータウイルスで150カ国20万台以上のPCが被害にあったとされる事件が発生しました。システムや保存データの破壊、情報漏洩などのリスクに対する備えは不可欠です。当社では中堅・中小企業のお客さまを中心に保険だけでなく防御システムの構築も包括した提案をしています。

 高齢化社会を迎え、新しい保険も登場しています。一昨年、列車の運行を妨害した認知症患者の家族に損害賠償を求めた訴訟の判決が出て話題になりました。こうしたリスクに備える保険や、独居老人が孤独死した場合の空室期間の家賃を保証する保険も誕生しています。自動車保険でも、高齢ドライバーが予定のルートを外れたら警告を発したり、事故が起きた場合に自動的にコールセンターにつながる機能を付けたりした商品の提供を始めました。

 また若者の車離れもあり「車は持っていないが、たまに運転する」というニーズに応えるためには、運転する日だけ入れる自動車保険が便利です。自動車保険に限らず、ライフスタイルの変化によって必要な時に必要なリスクを補償するオンデマンド型の保険も増えてくるでしょう。損害保険がもつ可能性は無限です。

 今後デジタル社会はますます広がり、先行きが一段と予測しにくい時代です。そんな時代に当社が必要とする人材は、これから先の社会が大きく変わる中で損保会社がどのような役割を果たすのか、そしてどんな損害保険が必要となるのか、想像力を働かせ、未来像をイメージできる人です。

 そこで若い世代の読者にお願いです。今から50年後、社会はどんな損害保険を必要としているでしょう。私たちが子供のころアニメで見ていた空飛ぶクルマ、宇宙旅行などが実現しているかもしれません。皆さんの柔軟な想像力で、50年後の損害保険会社のビジネスの可能性を切り開いてください。

アイデア

あなただけのリスクに保険

佐藤 慎太朗(会社員、34歳)

 将来、損害保険は物ではなく人単位の契約になると考える。現在は自動車や住宅のように物に対して保険をかけているが、人を取り巻くリスクが複雑化していくほど、保険の対象物も広がっていく。その結果リスクに対して網羅的に保険を掛けることが難しくなることが予想される。未来の損害保険は「究極のオーダーメード保険」だ。その人の所有物や生活スタイルなど蓄積されたデータと、過去の事故やそれに伴う損害情報を突き合わせ、人ごとに必要となる保険が導き出される。保険金額はそれぞれの状況を踏まえたリスクの優先順位によってきめ細やかに設定される。保険内容について人手で修正することも可能だが、よほど特殊でない限りはそのままで十分最適な保険内容となるだろう。これはデータ分析の進展に加え、異なるものに対してリスクを分け合うという新しい損害保険の仕組みを作ることによって達成可能と考える。

クラウド化した脳の記憶に保険

曽田 昌弘(会社員、38歳)

 私が考える50年後の損害保険は「記憶保険」だ。38歳の私は50年後には88歳になる。現在すでに衰えを感じているのが記憶力だ。例えば、人の顔などその他の情報は出て来るのに、名前が出て来ず「えっと、あの人」という風になる事がたまにある。80代ともなればもっとそうなっていると危惧する。一方で、50年後には技術が進歩していることだろう。PC等のデータが個々の端末上よりもクラウド上に保存されることが増えたが、人間の脳の記憶も外部化・クラウド化されるのではないか。その外部化された人間の記憶が盗まれたり壊されたりすることは、文字通り「記憶喪失」である。重大なリスクだ。重大なリスクとなれば損害保険が必要になるはずだ。

移住先の新しい星に保険

堀口 洸(海陽学園海陽中等教育学校1年、13歳)

 僕が考える50年後の損害保険の対象は「星」だ。なぜなら50年後には人類が住めるたくさんの星が発見され、一般の人でもそのような星が買えるようになると考えるからだ。そして損害保険は「もし星が爆発などして消滅した時に保険会社が新しく星を買う費用を負担する」というシステムになると思う。現在は主に車に損害保険がかけられることが多いが、もしこのまま地球の環境汚染が進み、地球以外の星に移住するという事態になると学者たちが地球以外の人類が住める星を探すようになると思う。そして見つけた星を一般の人が買い、もしその星が、消滅などして住めなくなったときに、その星の持ち主が住めなくなって困らないように、新しい星を買うための費用を保険会社が負担するというような保険になると思う。

以上が紙面掲載のアイデア

日本の医療お試し保険

松江 智帆(明治学院大学法学部3年、21歳)

 日本人は海外に行くときに保険に加入する人が多いが、外国人観光客は3割程度しか入っていない。そのため、日本で急病になり治療を受けたときには高額の治療費を請求されてしまう。さらに彼らの中には未払いで帰国し、治療費を踏み倒す人もいるという。そこで、日本を訪れる外国人向けの保険を提案したい。母国からネットで加入でき、空港で顔認証のシステムを使って本人確認する。また、現在では対応言語を大幅に増やして誰もが簡単に手続きできるようにする。この保険加入で訪日外国人観光客を守るだけでなく、日本の高い医療技術を世界に発信することもできると考えている。

電子マネー保険

小島 太一(海陽学園海陽中等教育学校3年、15歳)

 電子マネー保険を考えてみた。恐らく50年後にはありとあらゆる技術がデジタル化するだろう。人工知能(AI)などが進歩すれば自動車や飛行機は自動化し、人為的なミスが原因となる失敗のリスクはなくなっていくように思う。しかし電子マネーは大体において人間を介して利用するため、失敗のリスクがある。つまり、損害保険の対象となる余地が大いにあると思う。例えば電子マネーで支払いするとき、残金はデータとして存在することになる。人為的なミスでデータが消えたり、うまく支払われずその後の生活でカードが使えなくなってしまったりなど、損害が生じかねない。このようにコンピューターのミスなのか人間のミスなのか、しっかり検証し、データとしてしか存在しないお金に対する不安を保険で解消できるのではないか。

アカウント保険

豊田 俊瑞(海陽学園海陽中等教育学校2年、14歳)

 僕が考えた50年後の保険は「アカウント保険」である。この保険はあらかじめ保険に加入しておいたアカウントが他人に乗っ取られた時に保証してもらえるものだ。今でもアカウントを乗っ取られると大変なことになるが、50年後にはさらにIT化が進み、アカウントが乗っ取られると生活が維持できなくなってしまう時代になっていると思われる。VR技術が確立して仮想世界へ行けるようになっていれば、娯楽・仕事・生活が仮想世界で行われることが増えるだろう。そうなるとアカウントとは、自分を表すものではなく、仮想世界での自分自身、つまりそのアカウントを乗っ取られれば自分の財産をほぼ全て取られたのと同じ状態になってしまう恐れがある。このようにIT化が進み、生活が便利になっていくにつれて、アカウントの重要性が増え、アカウントがどんどん自分自身になっていくので、アカウント保険が必要になると考えた。

最適な保険の提案からサービス提供まで

丸山 将興(会社員、40歳)

 自動運転技術やバイオテクノロジーの進化などにより、事故や病気の脅威は格段に少なくなるだろう。これらのリスクにさらされることが少なくなることで、人間が危険を察知・回避する能力は低下することが想定され、小さな事象であっても大きな損害を招く恐れがある。こうした状況下で損害保険会社が蓄積してきた膨大な事故や災害等のデータを活用すれば、リスク管理をすべて任せることができるサービスを提供できるのではないだろうか。例えば、情報端末に「この行程でこの目的地に行く」と話せば、損保会社のデータベースにつながり、行程や気象条件等を加味してリスクを算出、最適な保険を自動的に設定する。付帯サービスとして事故が想定される場所での注意喚起、感染症の発生状況や初期症状・予防方法の情報提供、事故が発生した際の病院・救急車・家族への自動連絡等を提供すれば、安心して仕事や行楽に集中することができる。

イノベーション保険

山村 悠陽(海陽学園海陽中等教育学校高等科1年、16歳)

 社会が発展していく上でイノベーション(技術革新)は大切である。しかし、最近の若者は昔と比べて変化することに対して消極的である。この傾向は将来ますます加速していくかもしれない。イノベーションに対して消極的になるのは、失敗した時のリスクが大きな原因だと思う。何かに挑戦したい、しかし失敗した時のリスクが恐ろしくてできない、このような人が多いのではないだろうか。そこで、もしそのような人が失敗して負債を抱えるなどのような状況に陥ってしまっても、それをカバーしてくれるような保険があれば、失敗のリスクに対する恐怖が軽減され、どんどん挑戦していく人を増やすことができるだろう。コンピューターやAI(人工知能)がますます発達していくと思われる将来において、若者の挑戦が成功して日本を引っ張っていくことができる産業にまで発達させることができたならば、日本や世界にとって大きな利益になるはずである。

「知られすぎる」ことに対しての保険

佐藤 亮(上智大学経済学部経営学科、25歳)

 私の考える50年後に有るべき損害保険とは「知られすぎる」リスクに対する保障だ。50年後の未来では、AI(人工知能)やビッグデータなどの関連技術が高度に発達することで、個々人の寿命などのリスクが正確に推定されてしまうと考える。人によっては遺伝的診断で保険料が高額となってしまうことや、職業が限定されてしまうなどの状態も想定されるが、そうした検査を拒否する権利があったとしても、あえて拒否したという事実は隠し通すのは難しいのかもしれない。「知られすぎるリスク」から身を守るための保険が必要であろう。保険には収支相等の原則があるが、技術の発達にともなって契約者との間で適切な距離を取る方法を模索することは今後、ますます必要になるだろう。

自分で保険開発

鳥羽 裕介(会社員、24歳)

 50年後、社会はめまぐるしく変わっており、それに対応する保険商品はより個人に合ったスピード感のある開発が求められる。最近でも数多くの新しいサービスが生まれる一方で、それに対応する保険商品の開発には時間がかかってしまっているのが現状だ。この問題を解決する為、未来の保険は契約者のビッグデータを基にその場で自分専用の保険を作れるようにすべきだ。希望者はスマホを通じて自身の生活を一定期間記録し、データを保険会社へ提供する。そのうえでスマホアプリから保険の対象物や対象事象・期間を指定してリスクを自動計算し、保険料をスマホから自動で支払う。対象物や保険期間をより細かく設定することで、これまでよりも適正な保険料で保険に加入することが可能になる。未来の保険会社は社会の変化に柔軟に適応し、個人の生活実態に合わせた保険を即時に提供できる体制を整えるべきではないだろうか。

人工知能による失業保険

馬渕 祥羽(クラーク記念国際高等学校2年、17歳)

 私が考える保険は50年後に今より進んでいる人工知能(AI)による失業保険だ。ネットの普及により多くの本屋が潰れた。将来はもっとと多くの店や小売業者がなくなることだろう。AIなど技術の発達はよいところもあれば悪いところもある。例えば駅の改札では以前は駅員が切符を切っていたが、今ではカードをタッチするだけで通ることができる。とても画期的で、駅員はほかの業務に回ることが可能になった。ロボットが働いているホテルもある。50年後にはいろいろな分野でAIや機械、ロボットが発達し、世の中の役に立っているだろう。だがそれによって仕事を失ってしまう人たちの受け皿も必要だ。AIによる失業保険ができれば、たくさんの人たちが救われるのではないか。

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講  評

 今回、50年後の損害保険ビジネスの可能性について、新たな視点で多くのご提案をいただき、ありがとうございました。既存の枠組みにとらわれず、柔軟な発想で未来を思い描く皆さんのアイデアに、これからの社会の発展とそれに伴って生じる新しいリスクについて、多くの気付きをいただきました。

 「究極のオーダーメード保険」にある、一人ひとりのリスクを徹底的に細分化し、その個人に最適の保険を提供するという発想は、必要な時に必要なリスクを補償する究極のオンデマンド型保険と言えるでしょう。これまでの保険の中心である、汎用性の高い商品とは対極に位置する、デジタル化社会ならではの視点だと思います。

 「記憶保険」は、ヒトの記憶がデータ化され、その盗難などに備えるという、全く新しい発想の商品です。現在のデジタル技術や医療技術の進展を考えると、将来的な実現の期待を抱かせてくれるアイデアだと感じました。ヒトの記憶がデータ化されれば、医療をはじめとする様々な分野において、劇的な技術の進展が起きるかもしれません。

 「星に損害保険をかける」は、「将来、誰もが星を買える時代が来る」という、たいへん夢のあるアイデアでした。1961年、人類初の宇宙飛行が行われてから57年がたちます。50年後には、実際に宇宙で暮らす日が訪れ、これまでにない新たなリスクへの対応が必要となっているかもしれません。

 保険という仕組みの根底には「未来に向けた挑戦を支えたい」という思いがあります。今後も、先進的なテクノロジーなどを活用することで、損害保険ビジネスをさらに進化させ、新たな夢に向かって挑戦を続ける人たちを支えていきたいと考えています。

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