未来面「つくりかえよう。」第6回(2018年10月22日 日経未来会議編)

課題

「新しい時代にどのような役割を担いたいですか?」

日経未来会議

 読者の皆さんに質問です。

 「人口に占める割合が25%を突破」ということを聞いて、「何が25%を突破した」と思われるでしょうか。恐らく多くの読者が「65歳以上の人口」と答えるのではないでしょうか。はい。正解です。が、別の答えもあります。それは「平成生まれの人口」もそうなのです。昨年10月時点で平成生まれは3244万7千人にもなり総人口に占める割合は25.6%と初めて25%を突破したのです。

 平成30年の今、高齢社会と見られがちなニッポンですが、周りを見渡せば4人に1人が平成生まれの若い社会とも言えるのです。ニッポンの未来を平成世代や来年から始まる新しい元号の世代に託する時代になってきました。

 ここで私たち未来面を担当している編集委員からの問い掛けです。平成の先にある未来について、読者の皆さんは「どのような役割を担い、どのような『より良き社会の実現』に向けて生きていこう」とするのかを教えていただきたいのです。

 未来面は2010年春に始まり、経営者と読者との双方向のやり取りから未来、将来に向けたアイデアを読者から投稿してもらっています。ある企業は寄せられた多くのアイデアを役員会で議論をしたり、アイデアに賛同して支援に乗り出したりする企業もあります。学校のテストのように正解はなく、答えのないテーマについて読者一人ひとりが真剣に向き合ってこそ成り立つのが、この未来面なのです。

 ニッポンは課題先進国です。少子高齢化による生産年齢人口(15歳以上64歳以下)の減少や地域の過疎化、介護サービスの需要増加などが急速に進んでいます。でも課題が明確であるということはそれに対応する知恵も生み出しやすいのではないでしょうか。

 「必要は発明の母」です。若い読者の柔軟な発想、長く人生を歩んでこられたからそこ見えてくる気づきなど老若男女の集合体こそ、課題先進国に向けて新たな価値を創造できるはずです。読者の皆さんはどこに焦点をあてて社会問題を解決できるアイデアをひねり出してくれるのでしょうか。

 デジタル革命によって運転技術や病理診断など人工知能(AI)が人間より優れている部分がどんどん広がることも指摘されています。すばらしい社会と思える半面、人間としての存在意義が問われる社会とも言えます。強烈な技術進歩と人間らしさとの共生が新しい時代の歩き方になるでしょう。

 改めて、読者の皆さんに問い掛けます。「どのように生きていくべきなのか」「どんな志しを抱き、そのような役割を担おうと考えているのか」。来年に迎える元号の変更、2020年には東京五輪・パラリンピックを控える時代の節目に自らと、社会、世界の未来を編み込んでみて下さい。皆さんからのユニークな投稿をお待ちしています。(編集委員 田中陽)

アイデア

伝統的な技術 後世に伝える

児玉 桃香(クラーク記念国際高校岐阜駅前キャンパス、17歳)

 将来何らかの形で日本の文化や芸術、技術を未来に伝える仕事に就きたい。若いうちから伝えるということではなくても、例えば、退職後に個人で昔ながらの日本食を提供するレストランを開くことや日本の芸術である生け花を体験できる場所や機会を提供したりするのはどうだろう。今の日本はたくさんの新たな技術を生み出しているが、伝統的な技術はどんどん受け継ぐ人がいなくなる一方だ。昔ながらの技術を学ぶことはとても難しく、時間がかかる。そこで、直接技術を学ぶのではなくても過去の人達はこういった技術を生み出していたことを未来に伝えていくことが重要だ。実際に行動に移すのは難しいかもしれないが、文化や芸術や技術を今の時代で絶やすのは惜しいので、私たちより未来を生きる人たちに伝えていきたいと思う。

好きなことに熱中 新たな価値生む

北岡 道和(駒沢大学グローバル・メディア・スタディーズ学部、21歳)

 技術革新は我々の生活を大きく変えた。車、飛行機などの登場によって移動時間が数倍にも短縮され、電話、インターネットによって直接会わなくてもコミュニケーションをとることができるようになった。農業生産効率は飛躍的に向上し、電気があるので時間を気にせず活動できる。近年では人工知能(AI)によって知的活動分野までも技術が代替してくれる時代になった。人間がこれまでやらなくてはならなかった苦労をやる必要がなくなったのだ。人生を自分の好きなことに充てることができる時間が増えた。それぞれが好きなことに熱中することでその道のプロになり、その分野でそれが好きでたまらないプロによって新たな価値が生み出されていく。これが新たな仕事像であると考える。自分らしく、好きなことをして生きることで、社会によりよい価値をもたらすことがこれからの生き方ではないだろうか。

人間だけにしかできないこと

佐々木 駿(海陽学園海陽中等教育学校1年、12歳)

 新しい時代に貢献するためには技術の進歩によって生まれた、感情を持たない“モノ"である人工知能(AI)にはできない、感情を持っている生身の“人間"にしかできないことを見つける必要があると考える。そこで考えたのは、病気などが原因で一人で生活ができない人の看病や介護だ。読者の方の中には、「介護ロボットがあるだろう」という人もいるかもしれないが、それは違うと思う。確かにそのようなロボットは存在するかもしれないけれど、ロボットに世話されている人たちは、果たして満足することができるのだろうか?モノに感情のない無機質な声で話しかけられる。皆さんだったら、それで我慢できるだろうか?僕は耐えられない。やはり、人間の世話は、人間がいいと思う。ほかの分野で、人間はAIに負けてしまうかもしれないけれど、この分野では人間が役割を担っていくべきだと考えている。

以上が紙面掲載のアイデア

テクノロジーで格差を縮める

後藤 勝幸(会社員、56歳)

 世界には格差が存在し、未来を暗くしています。これをテクノジーで無くしていきたい。価値指標を、“お金"から“信用度"へシフト。銀行はお金を集める機関ではなく、信用を集める機関に変えると、「〇〇に信用され、事業・業績・能力を向上させた」などが個人の情報として蓄積され、その信用で新たな構想実現の支援を行い、銀行は信用ある情報の多さで信用を築き、信用が欲しい人に投資できるようになる。これを、あらゆる組織・団体で応用展開する。富める人は「信じる」を分配し、機会が欲しい人は「信じてもらえる」ことに注力して、消費は信用度を費やしながら生活していく。この「信じる度合い」をテクノロジーで確立し流通できるようにすれば、未来の世界は変わると思います。信用ロンダリングなど、予測できる不正があればテクノロジーで防いでいきます。経済の単位が「信用度」に変わるとき、格差が縮まった世界が来るのだと想像しています。

人を育てる

鳥羽 裕介(会社員、25歳)

 私も含めた平成世代の人々は今後、「人を育てる」立場になる。平成生まれの人々は今、在学中の方もいれば、社会人になりたての方もいるだろう。これまでは教わる側であった私たちは、これから教える側になり、今後は若い世代を育てていかなければならない。機械の高度化が進む中でも、機械にはまねできないといわれているのが人間特有の感情だ。ある一つの出来事に対し、人間はその人の背景によって様々な感情を抱き、時に予想外の反応をすることもある。機械にはないこの感情は人との生活によって育まれ、磨かれていくものだ。人と人との関わりの中で様々な感情を育む手助けをすることや、相手の感情を感じ取る学びの場を与えることは、社会経験の少ない平成世代でもできる、未来の世代への貢献といえる。年齢の近い私たちが積極的に下の世代とかかわることで、人間らしさを磨く手助けができたら、こんなすてきなことはないと思う。

新たな時代の教員

村本 圭遥(クラーク記念国際高校3年、17歳)

 私は新しい時代で、人工知能(AI)に取って代わられない教員職に就きたいと思う。AIの発達により、将来的にスーパーのレジ精算や製造現場などの職業が不要になるのでは、と危ぶまれている。技術の発達は喜ばしいことだが、発達しすぎた技術に我々人間が取って代わられようとは、一昔前では想像もつかなかっただろう。中には、就職するにあたって、AIに取って代わられてしまうのではないかと懸念する人や、現在働いていて、職を失ってしまうのではないかと不安を抱いている人も大勢いることだろう。しかし、AIには成し得ない、人を育てたり、人に提案したり、想像から生まれた物語を紡いだりといった職業も存在する。それらの職業はみな、AIを上回ることができる可能性を秘めていると思う。私は想像力を育み、考える事や学ぶことに楽しみを見いだしていける、AIを打破する人を育てられる教員になりたい。

感情を大事に生きる

岩本 元太郎(産業能率大学経営学部2年、19歳)

 私は感情で行動することを大事にして生きていける人でありたいと思う。機械的なことは人工知能(AI)の方が効率よく行えるし、今後どんどんAIに置き換わってしまうだろう。だが人間的な部分である感情は、それに近いものは機械的につくれたとしても、AIが完全に感情を理解することはできない。私は犬を飼っている。もともと保護犬で、3年前に引き取った。最初は怖がっていたが、私や家族が愛情をもってかわいがっていくうちに、心を開いて懐いてくれるようになった。今では飼い始めた頃には想像できなかったくらい仲がいい。こうした感情はAIはまねすることができないし、どれだけAIが進化しても人の代わりにはなれない。機械的にご飯をあげて散歩をしてなでることはできるかもしれないが、そこに感情はなくただ動作を行っているにすぎない。機械では決してまねできないような、人間的な感情を大事にして生きていける人でありたいと思う。

人との信頼関係を大切に

綾世 大樹(駒沢大学グローバル・メディア・スタディーズ学部3年、22歳)

 多くの職業が将来、人工知能(AI)に取って代わられるといわれているが、「信頼関係を築く」ということはAIでは必ずできないと考えている。例えば、普段から診てもらっている医者からの余命宣告とAIによる余命宣告、どちらを信用するだろうか。店員の対応がよいから常連になったのに、次に行くとAIに取って代わられていたらどう感じるだろうか。将来、仕事に就いたら人との信頼関係を一番に考える人になりたいと考えている。組織にとってAIを採用することは人件費の削減につながるかもしれない。しかし、信頼は業績を左右する要素の一つであり、お客様とのつながりを支える重要な要素である。だから、少なくともお客様の前に出る仕事がたとえAIに代替できるものだったとしても、人のままであってほしい。行く先々でAIに対応されたら、とても寂しいと感じる。

AIと共存できる社会をつくる

新口 湧太(大阪大学理学部1年、19歳)

 “ながらスマホ"。これは私が生まれたころにはなかった問題である。この先、さらに便利な世の中になっていく中で、こういった新たな課題は必ずついてまわる。人工知能(AI)によって人との仕事の置き換えが行われていく社会で、私はその時代や社会特有の課題解決にあたれるようになりたい。まずは予想できる問題点の解消、そして発生してしまった問題への早期対応・解決に取り組みたい。AIによって無くなる職業、新たに生まれる職業、また、AIが仕事を代替することで人間に必要になるのはマニュアル実行能力ではなく何なのか。AIと共存できる社会をつくるために、私たちに求められるのは彼らにはない想像・創造する力であり、これは未来を考える現在から必要なものであると私は考える。

講  評

 私たち未来面を担当する編集委員から読者の皆さんに問い掛けた「新しい時代にどのような役割を担いたいですか?」に、数多くの投稿をいただき、本当にありがとうございました。

 戦後の昭和の時代には過去からの延長線上で、ある程度の未来を見通せることができました。いわゆる右肩上がりです。ところが平成になると方向感が乏しくなり、先行きの見通しが難しくなってきました。グローバル化に伴う貧富の差、地球温暖化などの環境問題、少子高齢化など課題が山積しているのに加えて猛烈なスピードで進むデジタル革命によって私たちは揺さぶられているのが残り少なくなった平成の今だと思います。

 「伝統的な技術 後世に伝える」は非常に大切な取り組みだと改めて考えさせられました。伝統が脈々と引き継がれているのは、いつの時代でもその存在価値が認められているからだと思います。伝統を学ぶことから新しいアイデアもうまれ、その伝統にさらに磨きがかかるかもしれませんね。成長分野の一つである観光立国を目指している日本にとって伝統を未来に紡いでいくことは国益にかないます。

 投稿を読むと人工知能(AI)との向き合う姿勢について書かれた内容が散見されました。

 たとえば「好きなことに熱中 新たな価値生む」はAIで代替できる仕事はAIに任せて、AIではできない新たな仕事を創り出すことをうまく表現しています。仕事を想像して創造すると言ったほうがいいかもしれません。それこそ主体性のある生き方をすることになり、覚悟も必要になるでしょうね。

 「人間だけにしかできないこと」は、AIが万能でないことを示してくれています。AIは社会にある問題そのものを見いだすことは難しいですし、何かをしようとする意思を持ちません。人間の本質的な価値観までは理解できないのではないでしょう。無償の貢献や徳を積むことなどは、それこそ私たち人間の出番です。

 この紙面では紹介できませんでしたが日経電子版にもアイデアを掲載しています。新しい年号生まれの人たちへ「教える側」として人材育成に並々ならぬ決意を表明してくれた投稿もありました。

 より良き社会の実現にむけて読者の皆さんの投稿は頼もしく思いました。本当にありがとうございました。

同企業からの課題

同テーマの課題