未来面「つくりかえよう。」経営者編第9回(2019年2月4日)

課題

「住み続けたい街づくり実現へ必要な保険は?」

原典之・三井住友海上火災保険社長

 当社は今年度から始まった中期経営計画「Vision2021」において、「社会との共通価値の創造(CSV)」を掲げ、社会の持続的な発展とともに、成長することを目指しています。

 その取り組みの道標となるのが2015年に国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)です。SDGsには17のゴールがありますが、その中の1つに「住み続けられるまちづくりを」という目標があります。実際に、当社も住み続けられる街づくりをサポートする取り組みを進めています。

 近年、認知症の方は増加傾向にあり、2016年の踏切事故の裁判は大きな話題になりました。当社は、認知症の方が線路に立ち入って電車が運行不能となり、鉄道会社に損害を与えるようなケースにも対応した保険商品を開発し、ご家族に「安心」を提供しています。

 今年1月には、神戸市が創設した認知症の方にやさしい街を目指すための制度「神戸モデル」に当社も保険を通じて参画しました。その他にも北海道の肉牛農家向けに、牛が骨折して商品として出荷できなくなるリスクに対応する保険も誕生させています。

 これらは、当社が所属するMS&ADグループが開催した「サステナビリティコンテスト」で表彰された取り組みです。保険商品の販売ありきではなく、地域の社会的課題を解決するという視点からアプローチし、実際に地域の課題解決に貢献しようとするものです。

 昨年はあおり運転や高齢ドライバーによる自動車事故の多発が社会問題となりました。そこで1月からドライブレコーダー付き自動車保険を発売し、安心・安全を求めるお客さまから、高い評価をいただいています。このように社会のニーズに合っているものは、必ず社会に広がっていくものと思います。

 また、近年は台風や豪雨による自然災害が多く、特に建物や自動車の水災による被害は深刻です。それらを補償する保険や防災・減災のノウハウを伝えていくことも、保険会社の役割だと考えています。

 世の中は日々変化し、保険はその変化に応えていくことが必要です。サイバー社会での様々なリスクに備える保険は、これからますます重要になるでしょう。

 社会は進化し続け、新たなリスクが生まれます。それに対応する保険を世に送り出し、社会との共通価値を創造するビジネス、それが保険事業だと思います。

 そこで読者の皆さんにお願いです。皆さんの回りには、どんな課題がありますか。それに備え、住み続ける街をつくるために、どんな保険があったらいいですか。海外におられる方も含めて、皆さんのユニークなアイデアをお聞かせ頂ければと思います。

アイデア

人にドラレコ装着

向山 昌吾(会社員、38歳)

 妻にどんな街に住みたいか聞いたら、治安が良くお年寄りと子供が安心して暮らせる街と答えた。

 最新の自動車保険にはドライブレコーダーが付き、事故対応だけがサービスという時代が終わろうとしている。東北大が開発したTMRセンサーは磁界を検知し非接触で様々な物が計測できる。お年寄りや子供がそのセンサーと全地球測位システム(GPS)等を組み合わせたものを持ち歩けば、健康状態や位置等を把握でき、事故や犯罪に巻き込まれる確率が低くなり、親族に安心を届けられるのではないか。

 傷害保険にこのセンサーをセットすれば、人型ドラレコ保険ができる。センサーは建物の老朽化箇所もわかるので、火災保険とセンサーをセットにすれば、保守点検の質を向上させ、建物の安全性が高まって安心して暮らせるのではないか。保険と異業種のアライアンスが住み続けたい街づくり実現につながるのではないかと考える。

AI故障時に対応

西藤 誠(海陽中等教育学校高校2年、17歳)

 科学技術が発達し、人工知能(AI)が普及している。人間より効率的かつ正確に仕事をこなしてくれるありがたい存在だ。将来的にはさらにAIへの依存度が高まるだろう。一方で、AIの故障や使い方を誤り、仕事をこなせなかった場合、多大な損害が発生してしまう。

 そこで、AI保険を提案する。現在はさほどAIが普及しているわけではないのでしばらくは主に法人向けに販売することになるだろうが、AIが一般家庭に普及したときに果たす役割は大きい。特にAIによって自身や他者に危害が及んだ際は、責任問題が複雑になる恐れがあるが、保険で容易に解決できるのではないか。

 AIの普及によって我々の生活はますます便利になるが、リスクを伴うことも考えなければならない。有事の場合に補償をしてくれるAI保険があれば少なからず安心できるだろう。

街全体で安全対策

神村 孝弘(会社員、57歳)

 事故を起こさない人ほど保険料が下がる自動車保険のように、ビルごとや地域全体に安全対策、災害対策を施して災害保険などの保険料が下がる仕組みをつくれないか。

 例えばビルを安全にする耐震設備や、被災の度合いを解析するシステムを設ける。法令で定められた消防訓練よりも高いレベルで訓練する。あるいは行政や地域と連携する。そうしたことでポイントをもらい、獲得ポイントに応じて保険料率が低くなるものだ。

 経済的なメリットがあれば、地域の安全対策や大規模災害対策はもっと加速する。住民と企業、企業と行政の連携も進み、犯罪が起こりにくくて災害にも強い安心安全なまちづくりが推進され、結果として保険会社による保険金支払いも少なくなる。まちづくりに関わる行政・企業・住民の皆が「三方よし」となる。

以上が紙面掲載のアイデア

安心してAIと共存する

佐伯 俊彦(会社員、28歳)

 人工知能(AI)の発展が目覚ましい。そこで「AIが不備を起こしたときの損害等を補償する保険」を提案する。街中での車の自動運転をはじめ、家の中の掃除ロボットや介護ロボットも対象になる。

 感情的な部分を含め、すべてを安心してAIに任せられるだろうか。「故障した際は大丈夫か」など、一定の不安感は拭えないに違いない。2045年に到来するといわれている、AIが人間の知能を超えるシンギュラリティーが起きれば、その不安感はより一層高まるだろう。

 安心してAIと共に住み続けることができる街づくりのために、例えば介護はこれまで人々が担ってきたが、将来「AIに任せる」という価値観が必要になってくる。そのような新たな価値観を創造する一助となる保険になってほしい。

一人暮らしでも安心! 風邪保険

小原 壮平(九州大学法学部2年、20歳)

 一人暮らしの学生が風邪を引くと、治療費や病院までの交通費の面でとてもつらい目にあう。そのため私は「一人暮らしの学生が風邪をひいたとき、その治療費と病院までの交通費を保険で負担する」という制度を提案したい。

 学生にとっては治療費や病院までのタクシー代は結構な出費。急に必要になるとつらい。死活問題となりうるため、保険で補おうというものだ。

 実際、手持ちのお金がないことや、お金がもったいないことを理由に風邪を引いても病院に行かない友人がいる。このような学生へのサポートとして保険制度を設計することで、学生は風邪を引いてもお金の心配なく治療に専念できるようになる。それによって安心して学生生活を送ることができるだろう。

ロボット保険

森田 陽翔(海陽学園海陽中等教育学校3年、15歳)

 日本は自動車大国であることから分かるように、機械工学の技術において世界の最先端を走っている。AIが発達しつつある今日、その機械工学とAIを融合したロボットが造られ、社会に流通する日も遠くないと思う。そこで、少し未来の話にはなるが、会社や家庭などで一般的にロボットが利用されるようになった社会で必要な保険として、僕が提案するのが「ロボット保険」だ。

 ここでのロボットとは、必ずしも人の形をしているわけではなく、簡単にいうと自律的に動き、何らかの仕事を行う機械だ。このようなロボットが広まれば、人間より効率よく作業ができるロボットに、仕事や家事をこなしてもらうようになるだろう。だが、このロボットが壊れたらどうなるだろうか。こういう場合、保険会社と提携するロボット会社が壊れたロボットを修理し、修理期間中は一時的に別のロボットを貸し出すのがロボット保険だ。仕事や家事が円滑に効率よく進められるだろう。

個人情報保護保険

谷川 欽映(パート、52歳)

 PC、スマホ、タブレット。今や誰もが操作をし、時には1人で複数所有し、ビジネスからプライベートまで実に多くのシーンで使用されているのは、周知の事である。それに伴う個人情報保護も、もちろん重要である。しかし個人情報漏洩は、結局は、ほぼユーザー側の責任で自己防衛するしかない。その脅威を回避するには、かなりのスキルと費用を覚悟しなければならない。個人では限界である。

 情報が漏れ、何らかの損害を被る。もしくは預かっている個人情報が漏れ、被害を与えてしまう。企業や公的機関など大多数の個人データを取り扱っているところは、莫大な補償を考えなければならない。これにも限界がある。そこで個人情報に関するリスクに特化した保険をつくれば、IT環境、暮らしはこれからもっと安心で豊かになるのではないだろうか。

どの街にも「カフェアンドティー」

牛込 耕二(会社員、54歳)

 英国では高齢化や社会不適合などで「孤独に困っている人間」が急増していることが社会問題化し、この問題を解消させるため、孤独問題担当国務大臣を新設した。孤独な人が増えている理由として、人と人が直接触れあう機会が減少していることも一因である。この機会を創出するために、コーヒーショップ、NPO法人等と連携して、地域の人が顔を出す「カフェアンドティー」ネットワークを傷害保険の付帯サービスとして構築する。地域の人は、このネットワークが提供する専用アプリから、趣味、子育て、生活、健康、イベントに関しての情報にアクセスでき、同アプリを通して共感した仲間とお店でコーヒー、お茶、イベント等を楽しむことができる。月一度お茶を飲みにくる高齢者が、お店で開く将棋大会にはまり、常連客となるケースも想定。子供から高齢者まで多様な人が集まるが、契約者は飲み物、アプリ使用料、イベント参加料等は無料にする。

健康セミナー保険

福田 大輔(会社員、36歳)

 今や人生100年ともいわれる時代になった。提案したいのは、年をとっても運動や体を動かすイベントなどに、いつまでも元気に参加できるようにするための保険だ。この保険に加入すれば、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)が使いこなせない高齢者も、お互いに同年齢の人たちとコミュニケーションがすぐにとれる。

 まずは在宅している高齢者の家に、送迎バスや車で迎えに行く。迎えに行った高齢者に対しては、健康診断などを無料で実施する。その結果、体の悪いところが見つかれば、病院につなぐ。元気でいられるだけでなく、日ごろから病院の職員の方々や地域のみなさんの助けを借りることができるような街になれば、高齢者にとっても結果として住み続けたい、いい街づくりになるのではないだろうか。

風評被害保険

大山 雅俊(会社員、55歳)

 もはや生活の一部となったSNSによって、誰しもが、ある日突然、思いがけない被害を受ける可能性がでてきている。大変憂慮すべき事態で、特に規模の小さい店舗にとっては、SNSで受けた風評被害によって、計り知れない損害を被り、その結果として破綻にまで追い詰められることもあるだろう。

 そこで、SNSによる風評被害を補償してくれる保険をつくってみてはどうだろうか。例えば、風評被害を受けたことによって店舗の収入が普段の月に比べて激減してしまった場合、その損害額を保険で補填してくれるというものだ。対象は店舗や法人に限る必要はない。個人に対しても、SNSを通じて受けた風評被害によって職を失ってしまった場合などに適用できるのではないだろうか。

この街に住みたい応援保険

山形 窓子(京都橘大学現代ビジネス学部、19歳)

 私は大学生の間は京都で過ごし、就職は地元の富山でしようと考えている。地元に帰ってくることは、住み続けたい町があるからだと思う。そこで、私が提案する保険は「Uターン応援保険」である。県外進学者向けの、Uターン就活を支援するものだ。

 交通費や宿泊費等でお金が必要ならその都度受け取る。毎月保険料を払う代わりに、必要なときに必要なだけもらえる。就職活動に全力で挑むためには、お金の支援は必要である。この保険に加入したが、結局Uターンをしなかった学生には、卒業祝いとして定額の祝い金を贈る。掛け金の全額が返ってくるわけではない。これならUターンした方がいいという状況になると考える。若者の流出が課題の市町村が多い中で、Uターンの学生は貴重な存在である。だから、この町に住みたいという思いを応援する保険が必要であると考える。

民泊トラブル保険

村田 紗彩(京都橘大学現代ビジネス学部2年、20歳)

 東京オリンピック・パラリンピックに向けて、民泊事業はさらに拡大すると思われる。民泊事業は大きな経済効果が期待でき、空き家、空き部屋の活用により地方創生の起爆剤にもなりうる。しかし、集合住宅の一室が宿泊施設として貸し出される場合、マンションの住民とのトラブルが発生するリスクも想定される。そこで、マンション民泊のトラブルに特化した保険を提案する。これは民泊利用者、または貸し出されているマンションに住む住民が、騒音などのトラブルに遭遇したときに適用される保険である。例えば、マンションに住む住民が何らかのトラブルに遭い、引っ越しを申し出た場合に保険が適用され、引っ越し費用が軽減されたりする。トラブル発生による示談金も保険で賄う仕組みだ。ホスト、ゲスト、近隣住民がそれぞれ良い関係を保っていくためには、このような保険が必要だと考える。

高齢者の一人暮らしを支える

石川 あずさ(京都橘大学現代ビジネス学部2年、20歳)

 近年、日本の高齢化の進行は著しく、高齢者の一人暮らしが増えている。そんな一人で暮らしている高齢者の支えとなる保険が「おひとりさま見守り保険」である。一人だと何かと不便なのが、日々の掃除や料理、洗濯などだ。自分自身が風邪をひいたときや病気になったとき、高齢者の方だと特に日々の家事がしんどくつらいものになるだろう。そこで病院の診断書を提示することで、家事代行を保険で頼めるようにする。病気の重さによって家事代行の自己負担率が増減する仕組みである。病気の重さによって変わるが、重症だと家事代行の金額のおよそ7割が補償される。日々の生活を当たり前に送ることが困難なとき、衣食住を手伝ってもらえることは重要である。できることは自分自身で行い、できないことは助けてもらうことで毎日の生活がさらに楽になるのではないだろうか。

講  評

 今回、「住み続けたい街づくり実現へ必要な保険は?」という問いかけに対し、さまざまなご提案をいただきありがとうございました。皆さんの柔軟な発想から生まれたアイデアから、現代社会が抱える課題や、技術の進歩に伴って生じるリスクについて、多くの気付きをいただきました。

 「人型ドラレコ保険」は、最近注目を集めているドライブレコーダーを、人が身に着けるという斬新な着想から生まれたアイデアでした。ドラレコの機能を直接身に着けることで、自動車の運転時以外でも、日常生活におけるさまざまな危険の回避や、リスクの軽減をサポートできるかもしれません。

 「AI保険」は、近年急速に普及が進んでいる、一般家庭内のAIに関するリスクを補償する、というアイデアでした。個人の生活の中でAIの活用が身近になると同時に、個人では予期していないリスクが顕在化する可能性もあります。今後、安心してAIの利便性を享受するためにも、こうしたリスクへの備えに対するニーズが増してくるでしょう。

 「安心安全まちづくり保険」は、企業や地域の安全対策や災害対策を、保険料に反映させる「仕組み」に関するアイデアでした。ここ数年、国内各地で大規模な自然災害が相次いでいます。組織的な防災・減災の取り組みが広がれば、災害時の対応力が強化されるだけでなく、被害を受けた後の復旧も短期間で可能となります。これは当社が目指す、持続可能な社会の実現にも通じる発想だと思います。

 少子高齢化や気候変動リスク増加などに伴い、新たな社会的課題が生じています。今後も、先進的技術なども積極的に活用し、損害保険ビジネスをさらに進化させ、社会との共通価値の創造(CSV=Creating Shared Value)に取り組んでいきたいと考えています。

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