未来面「あたらしい時代です。」経営者編第7回(2019年11月5日)

課題

「ヤマトの物流網どう活用、持続可能な社会をつくるには」

長尾裕・ヤマトホールディングス社長

 ヤマトホールディングスは今月、創業100年を迎えます。創業時(大正8年)の日本にはトラックが204台しかなかった中で、4台購入して運輸業を始めました。それまでは鉄道や人力で荷物を運んでいた時代です。今ならいきなりドローンを使ってサービスを始めるような進取の気性を持った会社でした。

 今、最前線で働くヤマトのセールスドライバーは6万人を超え、パトカーなど緊急車両よりも多い4万5000台のトラックが、日本の隅々まで荷物をお届けしています。1日の総走行距離は約200万キロメートルで、地球を50周する距離に匹敵します。

 そこで読者の皆さんにお願いしたいことがあります。私たちのトラックや宅配便ロッカー、人材などのインフラをいかして、これから100年続けられるような持続可能な社会をつくる斬新なアイデアを考えて投稿していただきたいと思います。

 そのためにヤマトをもっと知っていただく必要があるでしょう。私たちのインフラの一部を紹介します。

 ヤマトのトラックはどこにでも荷物を運びます。ドライブレコーダーを装着すれば、道路や周囲の状況を把握できます。4万5000台の車両が目になるわけです。ドライバーの目や感覚からも森羅万象が見えてくることでしょう。トラックはいつも荷物を満載して走っているわけではありません。荷物を届け終えたトラックに何か運べるモノがあれば効率的なネットワークになります。クール宅急便のような温度管理が必要な荷物を運ぶトラックもあります。

 これからは今まで以上にお客様、社会のニーズに合わせられるかが大切です。ヤマトの業務をデジタル化することで、見えなかったことが「見える化」してきています。新たなニーズも生まれることでしょう。

 現在、積極的に展開を進めるオープン型宅配便ロッカーの「PUDO(プドー)ステーション」。好きなときに誰にも会わずに荷物を受けとったり、送ったりできます。駅や大学、商店街、駐車場、公共施設など約5000カ所に置かれ、ヤマトだけでなく、日本郵便や佐川急便の荷物も利用可能です。

 また、より地域の人たちにお役に立ちたいと考えて、東京・多摩と千葉・松戸で買い物や家事の代行などを手掛ける「ネコサポステーション」の取り組みを始めています。暮らしの相談ごと、地域イベントの開催などでお手伝いをして、高齢化社会を快適に過ごせるようにサポートしています。全国に約4000ある当社の営業拠点や約19万ものコンビニや商店などの取扱店というお客様との接点をいかせば、様々な取り組みができます。

 ヤマトのインフラを活用した新しいサービスを皆さんと共に考えて、さらに社会に貢献していきたいと思います。すばらしいアイデアをお待ちしています。

アイデア

地域交流の「基地」になる

高橋 信一(自営業、63歳)

 急速に売り上げを伸ばすインターネット通販や競合する物流会社と違い、ヤマトホ-ルディングスが持つ強みは7000を超えるセンターだ。現時点でその機能は集配受付などに限定されているが、地域にとって必要で便利なコミュニティーの場としての大きな可能性を秘めている。

 例えば、そこに行けば各地から運ばれた朝採れ野菜や漁港から保冷車で運ばれた鮮魚が買えるショッピング機能を持たせられるだろう。ほかにも、家庭の都合で不要になり宅配後に運ばれた家電を必要な人が購入できるリサイクル機能、宅配便で把握したデータに基づいて選んだ人気商品が並ぶセレクトショップ機能、一人暮らし・高齢者・障害者・学生などが集まれる、または働ける機能――。アイデアは尽きない。そうした機能を創り出すことができれば「世の中の不便、不安、不足」を減らせる。それを実現する可能性が、ヤマトにはある。

配達に燃料電池車を

林 俊輔(海陽学園海陽中等教育学校中学3年、15歳)

 持続可能な社会をつくるためにすべきことは、荷物を輸送するときの二酸化炭素(CO2)排出量を減らすことです。ヤマトのトラックの台数は4万5000台と多く、総走行距離は約200万キロメートルととても長い。CO2の排出量もこれに比例して多いはずです。

 この解決策として、ハイブリッドカーだけでなく、水素が動力源の燃料電池車が使えると思います。水素ステーションは現在、全国に約100カ所ありますが、多いとはいえません。ヤマトの拠点に水素ステーションを置くべきだと思います。

 次の解決策は、ミドリムシからつくる燃料で走るバイオディーゼル車の実用化です。ミドリムシは燃やすとCO2を出しますが、そのCO2で光合成してミドリムシが生産されるため、CO2を排出するだけの石油に比べ環境破壊への懸念は小さいのです。このような取り組みで、持続可能な社会の実現に一歩近づけるのではないでしょうか。

街の現地情報を発信

地下 航生(東洋大学経済学部3年、21歳)

 まもなく東京臨海部では自動運転の大規模な実験が行われる。運転やモビリティのあり方を変える大きな技術革新だが、クルマ本体の技術だけでは自動運転は成り立たない。街そのものに先端技術を組み込んだスマートシティになって初めて、自動運転がその役割を果たす。そのスマートシティを安全にして、持続可能にするためにヤマトホールディングスの物流網が役立つのではないだろうかと考えた。

 例えば、同社の配達車にセンサーを組み込むことによって、その街の道路の異常を感知したり、街の現地情報を即座にシェアしたりできるだろう。配達車の外側にディスプレーを搭載すれば、外にいる人たちへの情報発信も可能になる。まさに街のセーフティードライバーだ。多くの街を走り、その地域に寄り添ったサービスを提供しているヤマトだからこそつくれる、持続可能な社会の実現を強く期待する。

以上が紙面掲載のアイデア

インフラを活かした地方創生

細見 勝(会社員、47歳)

 自動運転の導入で深刻なドライバー不足が解消された近未来を想定し、豊富な人材など全国に広がる様々なインフラを新たな視点で活用したい。宅配便は利用客から依頼を受けた品物を預かって送り届けるビジネスモデルで、顧客との接点が多い。そのつながりを活かし、利用客同士の新たなマッチングの場所を提供できないか。

 店舗網は全国津々浦々に広がり、現地の方々がたくさん働いている。そんな皆さんが、全国にアピールしたいご当地の名産品や特産品の情報を収集し、口コミやおすすめ情報を発信する。作り手と買い手を安心感でつなぐ太い線ができあがり、一般的な通販サイトとは一線を画した新たな発見の提供につながるのではないか。

 そんなプラットフォーム構築の先に、遊休農地を活用したご当地食材(野菜や果物)の自家栽培にまで事業を発展させることで、地方の雇用創出、食料自給率拡大への貢献を実現してほしい。

物流網でリサイクル

武山 純治(産業能率大学経営学部2年、20歳)

 私は商品を宅配するだけでなく、不要になった物を引き取るリサイクル回収を新たなビジネスモデルとして提案する。なぜこのようなことを思ったかというと、私が普段、引越しや片付けするときにいらなくなった服やちょっとした家具などの廃棄の仕方がよく分からないことがあるからだ。業者を呼ぶにもどんな業者があるのか分からない。ヤマトホールディングスがそういったサービスを提供できれば、みんなにとって分かりやすくなると思うし、これからの高齢化社会、年配の方も助かるだろう。

トラックが次世代緊急車両に

中村 夏海(中村学園大学教育学部3年、20歳)

 宅配トラックを緊急車両として臨機応変に活用してはどうだろうか。病院や消防機関がインターネットの位置情報を使って、荷物を運び終えたトラックに連絡し、病院まで急病患者を運んでもらう。次世代通信規格「5G」の通信網が実装されると、より鮮明な動画が遅延なく伝送できるようになる。これを活用して患者の様子を映像データで病院に伝送する仕組みを整えれば、患者が病院に到着する前に医師がケガの状態を詳しく把握できる。事前の準備が捗り、患者の命が助かる確率も高まるのではないだろうか。

 最近大きな災害が多発しているが、柔軟に対応できないために人的被害が拡大しているように感じる。予測不可能な事態が起こりかねない時こそ、他職種と連携した臨機応変な対応が必要だ。現代は人同士のつながりが薄くなっている時代。だからこそ、宅配企業にはモノと人をつなぐだけではなく、人と人をつなぐ視点から新サービスの開発に取り組んでほしいと思う。

おばあちゃんの味、届けます

佐藤 あかね(会社員、38歳)

 先日、島根県の離島を旅して、おばあちゃんの手作り郷土料理に舌鼓を打ち、都会にない素朴なおかずにホッとした。一方で、現地の若者から「ヤマトさんが何でも届けてくれるので離島でもたいがいの物は手に入りますよ」と聞いた。

 そこで提案したいのはコンビニと提携し「地方のおばあちゃん食堂」を都会に開くこと。おばあちゃんが作った地産地消のお惣菜や保存食をコンビニで販売することだ。

 ヤマトは買い物難民が増えつつある地方に品物を届ける。その帰りの便に地方の味を載せ、都会へ走り、地方と都会をいっそうつなげる。

 地方では新たな第6次産業創出に、都会の人は「中食」が豊かになり地方の味を知る機会にもなる。季節などによって、食べられる地方の味が変われば旅した気分を味わえる。興味が湧いてくれば、実際に旅行をしたり移住したりしてみるなど、地方活性化につながるだろう。

トラックで地域を見守る

谷村 悠真(海陽学園海陽中等教育学校高校1年、15歳)

 多くの宅配便のトラックが街中の道路を走っている。地域の防犯活動に利用できるのではないか。車載カメラをつけ、危険な運転や犯罪行為などにつながる情報が録画された場合、警察に情報を提供する。また、犯罪行為などにより危険を感じた子供たちを、近くのトラックで一時的に保護したり、警察に通報したりする仕組みをつくることができれば、未成年が犯罪被害に遭うのを防ぐことができる。加えて、多くのトラックが防犯のための見回り活動に協力できるため、警察や地域のボランティアだけでは目の届かないようなところにも監視が行き届く。特に、届ける荷物の多い住宅街などは小学生の通学路があることが多く、効果が期待できるのではないだろうか。

私たちを避難場所に

菊地 恵子(主婦、65歳)

 ヤマトさん、いつもお世話になります。

 先日の台風19号で多摩川が氾濫して、人生で初めて避難民となりました。通常の避難場所だった小中学校も被災の予想地域になったため、さらに遠方の小学校が代替えの避難場所となりました。

 地図に明るいヤマトさんですから、行政と折り合いのつく範囲で緊急のときに限って、弱者となる人たちを避難場所に運んではいただけませんでしょうか。

 ヘリポッドやドローン(小型無人機)の活用も大いに期待します。が、不在票の連絡をする前に電気がついていたのでピンポンしてみました、と笑顔を見せてくださるヤマトさんは荷物以上のものを届けてくださいます。

 これからもドライバーさんの働きやすい環境をつくって差し上げてください、長尾社長!

超穴場スポットを教えて

矢頭 俊也(会社員、33歳)

 観光の超穴場スポットを紹介してほしい。何なら連れて行ってほしいし、そのまま荷物を運んでほしい。いまある訪日観光客への手ぶら旅行サービスをレベルアップすることになるのかもしれない。

 日本の隅々まで荷物を届けているということは、旅行会社でもわからない、普通では知りえない情報をつかんでいるはずだ。そう遠くない未来に、荷物を転送できてしまい、トラックで運ぶことがなくなるかもしれない。その前にこの100年で積み上げてきた、ドライバーの皆さんが実際に見て、感じた素晴らしい場所、人、食べ物を日本人や訪日観光客に紹介することで、新しいチャレンジにつながるように思う。

 「次の連休は、ヤマトさんにどこに連れて行ってもらおう」なんて家族、カップル、一人旅の人が考えるようになったら、本当に面白い。老後も安心して旅行に出かけることができ、さらに長生きの国、日本になるだろう。

買い物難民をゼロに

大村 友莉(中村学園大学栄養科学部3年、20歳)

 ヤマトのトラックを活用した「移動式スーパー」を提案したい。高齢化が進み、買い物難民が問題になっている。私の祖父母もその問題に直面している。インターネット通販で大抵のものを手に入れることができるが、祖父母にはネットは扱いにくく、写真だけを見て買う物を選択するやり方は物足りないようだ。

 気軽に歩いて外出できない高齢者にとって、高齢ドライバーの事故が増えているから運転してはいけないというのは無理があると思う。ただ「移動式スーパー」なら自分で運転しなくても、商品を手に取りながら買い物を楽しめる。自動車メーカーが進める次世代移動サービス「MaaS(マース)」と連携し、トラックを自動運転にすれば、運転手不足も解消できるだろう。

 大きな物流網を持つヤマトだからこそ、食料品や衣料品や医薬品、小型の電化製品など豊富な品ぞろえの移動式スーパーを張り巡らせることができるのではないだろうか。

クロネコトラック市

佐藤 惟織(駒沢大学経済学部4年、21歳)

 私が提案するのが「クロネコトラック市」だ。ヤマトホールディングスの全国ネットワークを生かし、トラック屋台の市場をつくったら面白いと思う。ターゲットとするのは過疎化が進み衰退している地域で、地元の商店や企業とタッグを組み、月1回ペースで開催する。少子高齢化により、地方を中心に人々の「孤独化」がさらに進むだろう。そこでユーザーが求めるのは、「人と人をつなぐコミュニティの場」だと考える。また、地域の民間企業とも連携して地元愛を育んでいきたい。それは食料品だけでなく、地元の伝統工芸品、産業にも言える。見本市も開くことで、身近にどんな産業があるのかを地域住民自らが発見できる。それが将来の夢、セカンドライフにつながれば、地域の伝統を継承していくきっかけにもなる。豊富な物流網・知名度を生かし、地域ごとの特色に富んだ市場をつくることで、持続可能な社会を作る手助けになるのではないだろうか。

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講  評

 読者の皆さんからの多くのアイデアを読んでいると感謝の気持ちでいっぱいになりました。どの投稿も現在直面している社会的な課題をしっかりと認識して、その解決策としてヤマトグループが持つ潜在的な可能性を引き出してくれるアイデアばかりで、勇気づけられました。まるでヤマトへの応援歌のように読めました。

 先端的なイノベーションとリアルでアナログな私たちの働く現場を融合したアイデアは大きな可能性を秘めています。ここまでヤマトのことを真剣に思ってくださっていることに頭が下がります。本当にありがとうございます。

 ヤマトは届けることだけの会社でないことを再認識させてくれたのが「地域交流の『基地』に」です。全国にある宅急便センターを集配拠点として活用するだけでなく、道の駅のように地域の人たちに使っていただく場所としての役割は担えると思います。

 また「配達に燃料電池車を」とも関連しますが、昼間のセンターは多くのトラックが配達業務などで出払っていて、スペースが確保できます。このスペースをヤマトだけに閉じることなく、シェアするかたちで水素ステーションを設置することはできるかもしれません。低炭素社会への取り組みは喫緊の課題です。ヤマト運輸は宅配に特化した小型商用EV(電気自動車)トラックを日本で初めて開発し、2020年1月から首都圏で順次、500台の導入を目指します。

 「街の現地情報を発信」は地域を見守る取り組みとして非常に面白いアイデアだと思います。最近はカメラセンサーも導入しやすくなっていて、世の中の事象を客観的に捉える目になることで安全・安心な社会を築く一助になりたいですね。

 皆さんから頂いたアイデアを持続可能な社会のために生かせるよう努力いたします。ありがとうございました。

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